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異世界チキンな人造人間(サイボーグ)  作者: 筈佳 椎名
第一章 始まりの歯車
3/10

第三機 白銀の機械少女

連続投稿どすどすー。

 体が、熱い。


 動かない体、薬品と血の混じる臭い。

 いまだに視界はぼやけ、脳も正確に働かない。

 微かに分かるのは、ここがどこかの工場のようなところだと言うこと。至るところから金属や薬品の臭いが漂って来る。今自分は仰向けに倒れており、天井をぶち破って落ちてきたらしい。自分のせいで他人に迷惑がかかるのが心に痛い。



 俺はジュピターの誘いに乗り、ドアの奥へと飛び出して行った。そして待っていたのは、地に足着かない遥か上空。人間が落ちれば即死という高さから俺は落ちた。


 俺は、死んだのか…………?


 一瞬そんなことも考えた。だが顔をしかめる程の異臭や尋常じゃないくらいの痛みの前に、そんな考えはどこかに吹っ飛んでしまった。だがいずれ死ぬ。このままだと確実に俺は死ぬだろう。だが……


「こ、このまま………死ん、で……たまるか……!」


 俺は今までの生活や家族、そして自分を捨ててこの「世界」にやって来た。自分に正直に生きたかった。

 だからこそ、

 ここでくたばるわけにはいかない!


 「ぅ…うおぉぉ……ぅらぁぁ……!」


 精一杯の力で体を動かそうとする。

 脚を使ってうつ伏せになり、体を使って床を這う。前方に扉らしき物が辛うじて見えるので、とりあえずそこに向かおう。


 その時。視界の隅、右前方50センチの所に光るものを見つけた。独特な形から、ジュピターにもらったボルトとナットだということがわかる。今後も役に立つ重要な物なので、回収し…………ようとしたのだが、肩から先が動かない。代わりに体を激痛が走った。


 左腕は辛うじて動くのに、右腕は動かない。俺は違和感を感じ、なんとか右腕の方に頭を向け

ーーーーーーー絶句した。



 見ると、肘からは骨のような棒状の物が飛び出し、指はあり得ない方向に曲がっている。薬指なんか跡形もなかった。きっと変な落ち方をしたせいで、右腕を下敷きにしてしまったようだ。そのせいで神経がやられ、脳の命令が腕まで伝わらなかったらしい。間近で嫌な物を見てしまい、激しい嘔吐感に襲われる。最早何もできなかった。


「畜生………50センチ、先の物…すら……掴めないなんて……!」


     その時ーー



「お嬢様、誰かがラボへ!うっ…酷い怪我ですわ!」


 誰かが前方の扉から凄い勢いで入ってきた。服装から、この家のメイドか何からしい。


(た、助かった…………)


 その安心感からか、体から力が抜け、俺はそのまま意識を失った。



○●○●○●○●○●○●○●○







「ぅ、んん…………………」


 ………今度こそ見知らぬ天井がそこにあった。

 ピコンピコンと一定のリズムを刻む心電図の音。そして独特の臭い。

 どうやら俺は今、治療室か何かに横に寝かされているようだった。口には酸素マスクを当てられ、左手からは輸血が行われている。輸血用の血を見て、先程までの悲惨な光景を改めて思い出す。大量の血液、無惨な右腕………そうだ、右腕は………!



「あっ!やっと起きたかー!」



 突然の異音に、思わず体が硬直する。右奥の何もないところから、シュィンと聞きなれない音がしたかと思うと、元気なソプラノの声がした。

 俺は声のした方向を向くために、体を起こす。幸い体は回復しており、体を起こすのは苦ではなかった。


 声の主は、俺と同じくらいの女の子。その子は絹糸を思わせる長くて艶やかな銀髪を、後ろで華やかなシュシュを使ってポニーテールにしていた。背は俺と同じか、少し小さい位。俺が男子の平均より少し高い位だから、彼女は女子の中では高い方に入るのだろう。出るところは出ていて、締まるところはしっかり引き締まっている、グラビアアイドルのようなスタイルだ。ぱっちりとした碧眼と整った鼻筋、潤った唇。今ここに、美少女という名の女神が降臨していた。


 彼女は近くまでくると、その自慢の碧眼で俺のことを見つめてきた。瞳の奥はキラキラと輝いており、好奇心旺盛な犬の様だった。


 だが不自然な点が1つ。それは、彼女が白衣(・・)を着ていることだ。

 お嬢様のような容姿なのに、それを隠すように着ている白衣のせいで、美しさが半減している気がする。


 彼女は俺のことをまじまじと見つめる。その彼女の第一声は、衝撃的な発言だった。


「うん………やっぱり。お前、カッコいいな!気に入ったぞ!」

「……はぁぁあ!?」


 何を言ってるんだこの人は!?


「えーと……それはどういう意味で?」

「まだわからないの?右腕を見てみなよ」

「?」


 俺は彼女に言われた通り、右腕を持ち上げてみた。案外すんなりと持ち上がっtーーーーーー


ウィーーン…


 持ち上げた時、そんな音がした。

 これってもしかして………と思い、思いきって腕を見る。予想は的中した。


 俺の右腕は、肩の辺りから全部が「機械」で出来ていた。手の甲には何やら意味深な幾何学模様が張り巡らされている。中心が円形で、そこから全体に線が飛んでいる感じ。色は漆黒で、金属のはずなのに何故か表面は光らず、鈍かった。指の関節から何やら全てが機械。試しに手を握りしめたら、先程と同じ稼動音がした。


「ぉ、おぉぉぉぉ………!!」

「どう、違和感はない?ちなみに素材は金属ではなく焔子硬化性神強化樹脂(えんしこうかせいしんきょうかじゅし)を使っているから金属より全然軽くて、金属の比にならない程の強度を持つ!」


 エヘンと胸を反らす彼女。鼻高々といった感じだ。


「焔子きょぅ?……よくわからんけどすげぇな!」

「すげぇなんて物じゃないぞ!その義手(ぎしゅ)、『全知なる神の手(マテリアル・グローブ)』は私が作り、今世紀最大の大発明なのだ!」

「え…………お、お前が作ったのか!?」


 また彼女からの衝撃発言。俺は上空から落ちてきた時のことから、ここにいるまでの流れを彼女に問いただした。 




こんなもので皆さんが楽しめたのなら幸いです。

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