表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/93

第86話:鋼鉄の砦 ―― 鉄血騎士団との決戦

 帝都の夜空が、突如として白夜のごとき輝きに包まれた。

 上空に展開された巨大な魔法陣の中央、純白のドレスを翻すアスカは、冷徹な軍神のような佇まいで帝都を見下ろしていた。その周囲には、リサ、ゼノス、そしてシュシュ。奪われたものを取り戻すため、VOIDの住人たちが帝国の喉元へと突き立てられた刃となって降臨した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【舞台:帝都・第一防衛線『鋼鉄の砦』上空】



「侵入者確認! 上空、高度五百に正体不明の魔導反応! 全魔導砲、対空射撃用意ッ!」


 砦の警告音が鳴り響き、迎撃用の魔導砲が一斉に火を噴く。だが、アスカはその無数の光弾を、指先一つ動かさず、空中で凍結させた。


「……弾道計算、終了。運動エネルギーを熱量に変換、すべて無効化キャンセル


 アスカの瞳は、数式が流れる蒼い回路と化していた。


「アスカ、まずは私が道を作るわよ! あんたは、あの忌々しい『檻』の術式だけを見てなさい!」


 リサが前に出た。彼女の手にする杖が、その容量を超えた魔力を受けてミシミシと鳴る。師匠としての矜持、そして大切なミーナたちを傷つけられた怒りが、彼女の魔力を極限まで高めていた。


「いい? 帝国さん。うちの弟子を本気にさせた代償は、あんたたちの国宝全部使っても足りないわよ! ――《極大破壊:星堕ちの焦土メテオ・ディザスター》!」


 リサが杖を振り下ろすと、夜空を埋め尽くすほどの巨大な紅蓮の魔球が、流星となって砦へと降り注いだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【圧倒的な力:破壊と精密】


 ズドォォォォン!! という衝撃波が帝都を揺らす。 鉄血騎士団が誇る「物理無効障壁」が、リサの超広域魔法によって紙細工のように焼き払われた。


「なっ……馬鹿な! 一人の魔導師が放つ出力ではないぞ!」


  逃げ惑う騎士たちの叫びを、ゼノスの冷徹な声が遮る。


「アスカ、迎撃システムのコアを特定したぞ。北東の第三塔、および中央管制室だ」


「ええ、ゼノス。……シュシュ、あなたの影を私の計算で拡張するわ。影のパスを通って、内部の術式回路を物理的に切断しなさい」


「了解ですニャ、アスカ様! ボクの爪で、帝国の傲慢ごと切り裂いてやりますニャ!」


 アスカが指を弾くと、シュシュの影が巨大な翼のように広がり、リサの炎の隙間を縫って砦の深部へと潜り込んでいく。


「迎撃の余剰魔力、再利用リサイクル。……砦の主電源を、私の演算制御下に置くわ。……三、二、一。――シャットダウン」


 アスカが虚空を握りつぶす動作をすると、難攻不落を誇った『鋼鉄の砦』の全機能が停止し、暗闇に包まれた。唯一輝いているのは、アスカを包む純白の光だけだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【ファビアンの狼狽と、アスカの咆哮】


 砦の中央テラスに、驚愕に目を見開いたファビアンが姿を現した。


「アスカ! 貴様、これほどまでの力を隠していたというのか……! 陛下を、帝国を、ただの古本屋のために滅ぼすつもりか!」


「……言葉の定義が間違っているわ、ファビアン」


 アスカは重力を無視して地上へ舞い降り、ファビアンの目の前で着地した。ドレスの裾が石畳を凍りつかせる。


「私は滅ぼすと言ったのではない。……私の日常という完成された数式から、あなたという『バグ』を取り除くと宣言したのよ。……テオとミーナはどこ? 答えないなら、この砦の構造データを分子レベルで分解するわ」


「ぐっ……おのれ、魔女め!」


 ファビアンが合図を送ると、砦の奥から「賢者のオーブン」を動力源とした、禍々しい魔導アーマーが数体現れた。オーブンから吸い上げられた「絆の魔力」が、皮肉にも攻撃エネルギーへと変換されている。


「……私のオーブンに、そんな色の魔力を吐かせないで」


 アスカが黒髪を払うと、彼女の背後に幾千もの魔導の槍が展開された。それは、リサのような破壊の炎ではなく、敵の術式だけをピンポイントで消滅させる、絶対的な静寂の処刑具だった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【ラストシーン】


一掃クリーンアップ


 アスカの言葉と共に、光の槍が雨のように降り注いだ。 敵の魔導アーマーは、悲鳴を上げる暇もなく、その外装と術式を完璧に分解され、塵となって霧散した。

 崩壊する砦の瓦礫を背に、アスカは立ち止まることなく歩みを進める。 彼女の視線は、既にその先――テオとミーナが囚われている、帝都中枢の隔離研究室を捉えていた。


「ゼノス、リサ、シュシュ。……行くわよ。この茶番の終止符ピリオドは、私の手で打つ」


 夜空を焦がす炎と、アスカの冷徹な白の光。 帝国の誇る『鋼鉄の砦』が陥落し、かつてない絶望の影が、帝都全土へと伸びていく。 「賢者」の逆襲は、まだ始まったばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ