第五十三話 二年生になったけど
新学期。
廊下でさまよう俺は、組分けの紙を持って二年八組に向かう。
これから一年、一緒に過ごしていくメンツが、あまりにも想定していなかった。
◇
泉千里
白井海斗
玉緒雪
最上咲良
◇
この四人の名前が並ぶのは想像もしていなかった。せいぜいこの三人の中で一人くらいとしか当たらないかと思っていた。
「おっはー、泉。また同じクラスになったね」
俺のそばに一人の男が近づく。
「白井……元気か?」
「元気だよ。てか、俺ら最上さんといっしょになったな」
「うん。俺は結構うれしい」
「お二人はいつもラブラブで……チッ、別れたときは気まずいぞー」
そんなこと言うな!! なんか苛立ってきた、心が燃えているみたい。
「あっ、泉さ。萌ちゃんが昼休みに校外で待ってるらしいから、あとで行ってね」
「あっ、おっけ」
萌ちゃんからの情報か? 金沢のことをわかったのか……あとで話してみよう。
教室の中に足を踏み入れる。クラス替えは毎回そうだ、ほぼ同じ構造の教室なのに、不慣れな居心地の悪い空気が漂う。
「ち、さ、とくん!」
「も、最上さん!?」
最上さんの目は、幸せそうに目をじっと俺を見つめ、溺愛が溢れている。
「隣だねー……同じクラスになっちゃったね。ごめん、なんか私が隣で、退屈でしょ?」
「そ、そんなことないです!!」
「ふふ、一年間、よ、ろ、し、く、ね」
※
なんとなく始業式をやって、クラスで自己紹介をして……昼休みになる。
俺はすぐ教室から駆け出し、校門に向かう。
「…………」
大きな松の木の隣の校門あたりには、だれもいない。
「萌ちゃん……ちょっと待とう」
数分、スマホでショート動画を見て時間を潰したが、いつまで経っても人影が見えない。
「萌ちゃんなにしてんだろう……メール送るか」
「泉さん!」
聞き覚えのある男の声が聞こえる。間違いない、この声は――金沢!?
「お、おまえ……萌ちゃんはどこだ!?」
「萌さん? あの子は普通に学校じゃないんですか?」
「は……?」
俺よりも金沢のほうが、なんだか急いでいるような顔で、彼は頬に汗が流れている。
「金沢、萌ちゃんになにもしてねえだろうな」
「なにもしてないです、けど……君のそばに僕よりも遥かに危険な人物がいるのです!」
「はあ?」
金沢は手で汗を拭き、俺の手首を掴んで歩き出す。
「おい、ちょ、なにすんだよ」
「具体的な説明は後でします……少なくとも明かしますが、僕たちは敵でも、恋のライバルでもなんでもありませんから」
なにを言っているのだ? こいつ、最上さんを企んでいた変態探偵じゃなかったのか?
「なにすんだよ! 金沢!」
「咲良さんが――危ないです」




