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ピピピピッ、ピピピピッ。音量こそ控えめでも脳に直接伝えてくるアラーム音で目が覚めた。右頬に敷かれた横髪は涙とよだれでパリパリに固まっている。眠気を逃がすために声を上げながらベッドに手を突いて起き上がった。
「あー、んっしょ……」
「ん……おはよう」
後ろを見ると、道也がだるそうに寝返りを打ってこちらを振り返った。顔がむくんでお世辞にもアイドルの顔だとは思えない。
「んっふ……不細工。おはよう」
そんな顔が愛らしくこめかみの髪を耳にかけてやった。
「おおー、今のはどきっとした。今度何かに使えそうやわあ」
くふふ、と道也は柔らかく笑うと上体を起こす。そして、俺の額にキスが落ちた。
「ほな、俺帰るな。昼からスタジオ入りやし……ミチルも昼から仕事入ってんねやろ」
道也は、ゆらり、とベッドから立ち上がって、床に散らした衣服を掻き集め、俺の分は雑に畳んでこちらのベッドに置いてくれた。
「ありがと。うん、仕事。十三時から」
「そうか。ほな間に合うか」
「間に合う」
壁に埋め込まれた時計を見て、確かめてくれた。俺は憂鬱さを漂わせながら小さく笑った。道也はパッパッと着替えてから顔を上げた。その笑顔は曖昧だ。
「気いつけな。じゃあ、俺は行ってくるから」
道也はテーブルに投げ出されたボディバッグから財布を取り出し、空の灰皿の下に何かを置いた。――何か、と言ってもそれが何だかわかっているのだが。
「行ってらっしゃい。……またね」
ドアに向かう道也の背中に言うと、振り返るので右手を挙げて小さく手を振った。
「またな」
道也も片手を挙げて目尻に皺を寄せるとドアを開けて出ていった。
一人になった部屋の中、俺はうろついた。冷蔵庫に備え付けてある飲料水を取り出し、テーブルの上のバッグの中からスマホを取り出してどうせDMしか来ていない通知を眺めた。そして、灰皿の下に敷かれたものを取った。七枚の紙だ。
七万円。あるいは、二万円と五万円。ホテル代と、俺の一日の価値だ。嗚呼、ホテル代と一万五千円で買われる女子高生たちよ。自分を大切にしてくれ。二十七のおっさんが、三十六のおっさんに五万円で買われるのだから。




