時系列データ
「人間が書く文章は、一続きの、向きのある1次元データと見ることもできます。気温の変化などと同じですね」
文 : ["吾輩", "は", "猫", "で", "ある"]
気温 : [19.2, 20.3, 20.4, 20.6, 19.5]
「まあ、そう見ることもできるわね」
「だとすると、株価なんかも『生成AI』で予測できるのか」
「ある程度は予測できるでしょう。例えば月初に発表される雇用統計や原油先物価格など、いろいろな要素をいれてやれば、ある程度は」
「それ、儲かっているのか」
「さて、どうでしょう。株価には他にも不特定多数の人間の心理が働きます。儲けたいという欲求や、損をしたくないという恐怖です。なので、予測できるとしても、ある程度までは、ということです。私だったらやらないですね」
「そうか」マルコが黙る。
「例えば、先ほどの気温のデータは、毎日の最高気温のデータと見ることもできます。そうしたときに、これを時系列データと呼びます」
「気温の変化ならば、季節ごとになだらかに変わっていきそうね」
「そうです。で、それを何らかの指標で示して変化を表現しようという学問が昔からありました。たとえば、毎日の気温の変化から、温暖化しているのか、寒冷化しているのか、などを考えようということです」
「なるほどね、何かの指標を考えて、ずっとプラスだったら温暖化、というわけね」
「はい、『生成AI』出現以前から、『時系列分析』という方法が研究されていました。その分野のモデルの一つですが、式で書くとこんなものです」
気温(翌日)=気温(本日)+X(本日)
「毎日のX(本日)が長期的に、例えば2,3週間のあいだプラス傾向だったら温暖化傾向、すなわち冬から春、夏に向かっています」
「それが年単位に見てもプラス傾向だったら、地球自体が温暖化しているということね」
「そうです。これを数式にしてみましょう」
Y(t+1) = Y(t) + x(t) --- (1)
ですから、このように展開していくこともできます」
Y(t+1) = Y(t) + x(t)
= (Y(t-1) + x(t-1) ) + x(t)
= ((Y(t-2) + x(t-2)) + x(t-1)) + x(t)
「このようにしてみれば、x が t の関数であると見ることも出来ます。もし春分の日を原点にした、日々の最高気温のデータが Y(t) = sin(t) に近似されるならば、x(t) = cos(t) に近似されるでしょう」
「つまり、時間刻みが充分に小さければ、x(t) は Y(t) の微分になるということか」
「そうです。式を変形すれば
Y(t+1) - Y(t) = x(t)
です。左辺は差分になっていますから」
「たしかにそうね」
「(1)式を、いまはこのように置いておきましょう「
Y(t+1) = F(Y(t), x(t))
です 。F() は何らかの関数という意味です」
「そして同様に自然文に適用してみましょう。ここでは、各単語の間にある関係を表すものとして、便宜上x(1), x(2), ・・・という記号を置いてみます」
"ある" = "で"+x(4)
=("猫"+x(3))+x(4)
=(("は"+x(2))+x(3))+x(4)
=((("吾輩"+x(1))+x(2))+x(3))+x(4)
です」
「たしかに、そう置くことはできるだろうが、x がどのような関数になるのか、見当もつかないな」
「そうでしょうね。x() の部分は、現代では数百兆ものパラメーターをもった化け物のような関数ですから」
(筆者注:2026年時点での GPT-4 のパラメータ数は公開されていません。しかし1.8兆個程度ではないかと、AIの研究者達が推定しているそうです。GPT-5については推定値もわかっていません。2060年時点での数百兆のパラメーターというのは筆者の設定です)




