第十五話 招き猫
俺はスキル選択画面を見つめながら、しばらく悩んだ。
三つの選択肢。
一:猫体強化。
召喚した猫の身体能力が上昇し、戦闘に参加できる。
二:猫咪ナース。
身体が状態異常になったとき、近くに猫がいれば、自動的に解除される。
三:招き猫。
ダンジョンにいるとき、猫が近くにある隠し宝箱を見つけられる。
戦闘?
俺は今、パーティー『earth』に入っている。
ラジたちもいるし、ハクさんもいる。
今のところ、戦力には困っていない。
状態異常の解除?
聞いた感じでは悪くない。
でも、猫カフェで毒を受けることなんてないし、普段から使えるわけでもない。
それに、俺は医者になりたいわけじゃない。
俺の視線が「招き猫」で止まった。
近くにある隠し宝箱を見つけられる。
それはつまり、他の人には見つけられないものを、俺なら見つけられるということだ。
それはつまり、他の人には見つけられない宝物を、俺なら手に入れられるということだ。
俺は今、猫カフェという願いを叶えた。
でも、俺にはもう一つ、叶えたい夢がある。
そのために、俺は迷うことなく「招き猫」を選んだ。
――
翌朝。
俺は三匹の猫を連れて、地下迷宮へ向かった。
キアラも最初は一緒に来たがっていた。
でも、俺は店に残ってもらった。
「ちょっとスキルを試してくるだけだから、すぐ戻ってくるよ」
「……本当に?」
「本当だ」
キアラは三ちゃんを抱きながら、店の前で俺を見送っていた。
その表情は、まるで妻が夫を送り出すようだった。
……ちょっと可愛い。
迷宮管理局の前で、パーティー『earth』の何人かと出会った。
ラジもいる。
「よう、雅人! 今日は店を休むのか?」
「今日は休み。お前たちはこれから行くのか?」
「ああ。二階に行ってレベル上げする予定だ。お前は?」
「俺もダンジョンに行きたいんだけど、一緒に連れて行ってくれないか?」
「もちろんだ。俺たちは仲間だろ!」
ラジは快く俺の頼みを引き受けてくれた。
――
地下迷宮、第一階層。
相変わらずの光景だ。
湿った空気。
青い苔の光。
そして、遠くから聞こえてくる水の音。
パーティー『earth』のメンバーが前を歩き、ラジが先頭を進んでいる。
俺はその真ん中を歩き、足元には三匹の猫がついてきている。
黒猫、白猫、茶トラ。
十分ほど歩いたところで、黒猫が突然立ち止まった。
左側の岩壁へ数歩歩いていき、それから振り返って俺を見る。
「……どうした?」
俺の動きに気づいたラジが、振り返って尋ねた。
「なんでもない。俺の猫が何か見つけたみたいだ」
俺は近づき、しゃがみ込んだ。
黒猫が岩壁を前足で引っ掻いた。
俺が手を伸ばして触れてみる。
――石が一つ、緩んでいる。
押してみる。
岩壁がへこみ、小さな穴が現れた。
その中には、紫色の魔石が一つ入っていた。
「魔石???」
ラジが近づいてきて、目を見開いた。
「こんなところに、どうして魔石が?」
「さあな。ほら」
俺は魔石を取り出し、ラジに渡した。
「冒険で見つけた宝物は、みんなで分けるんだろ?」
ラジは俺から魔石を受け取ると、数秒間黙った。
そして、俺の肩を叩いた。
「雅人、お前の猫……俺が思っていたより、ずっと役に立つな」
――
さらに先へ進む。
白猫が突然、一本の石柱の裏へ走っていき、鳴いた。
俺も後を追う。
石柱の裏の地面に、小さな布袋が落ちていた。
開けてみると――銀貨が三枚。
「またお前の猫が見つけたのか?」
「ああ」
「この猫、一体何者なんだ?」
「ただの猫だよ」
ラジは複雑そうな表情で俺を見る。
「普通の猫が銀貨を見つけるか?」
「運が良かったんだろ」
俺は「招き猫」のことを話すつもりはなかった。
このスキルはあまりにも特殊だ。
多くの人に知られれば、余計なトラブルを引き起こすかもしれない。
――
第一階層と第二階層の境目まで来たところで、俺たちは一匹のスライムに遭遇した。
ラジたちが前に出て、数回攻撃すると、あっという間に倒した。
みんな成長したんだな。
初めてスライムに遭遇してから、しばらく経った。
今では、みんなスライム相手でも、ようやくそれらしく戦えるようになっている。
戦闘が終わると、俺たちはその場で休憩した。
俺は足元にいる黒猫を見る。
黒猫は、俺たちが来た方向をじっと見ていた。
尻尾がまっすぐに立っている。
「ラジ」
「ん?」
「俺、ちょっと戻ってくる。さっき何か落としたみたいだ」
「分かった。早く戻ってこいよ」
俺は黒猫を連れて、来た道を戻っていった。
五分ほど歩いたところで、黒猫が一か所の岩壁の前で立ち止まった。
そこは、さっき銀貨を見つけた場所だった。
そのときは、みんな気づかなかった。
でも俺には見えた。
岩壁に、はっきりとした亀裂がある。
黒猫が亀裂の横にある石を前足で引っ掻いた。
俺は手を伸ばして、その石を拾った。
そして、それを亀裂の中に入れる――。
岩壁の一部が動き始め、隠された空間が現れた。
仕掛けだったのか。
こういう変わったものに遭遇すると、自分が本当に冒険をしているんだと感じる。
現れた空間の中には、木箱が一つ置かれていた。
俺は木箱を取り出し、開けてみる。
中には三つのものが入っていた。
一枚の羊皮紙。
一つの金色の魔石。
そして、一つの指輪。
その中でも、特に目を引いたのは指輪だった。
薄暗いダンジョンの中でも、指輪にはめ込まれた青い宝石が、キラキラと輝いている。
俺は羊皮紙を広げてみた。
残念ながら、そこには複雑な線が描かれていて、何かの地図のようだった。
文字らしき模様もある。
でも、俺には読めない。
猫の翻訳機能が、もっと便利だったらいいのにな。
俺は三つのものをバッグにしまい、木箱を元の場所に戻した。
そして、岩壁を元に戻す。
うん。
じゃあ、戻るか。
――
ニャアアアア!!!!
ラジたちが休んでいる場所にもうすぐ着くというところで――
黒猫が甲高い声で鳴いた。
俺が黒猫を見ると、その毛が全身逆立っている。
どうしたんだ?
猫がこんな姿になるのを見るのは初めてだ。
そして、俺は足音を聞いた。
こちらへ向かって走ってくる足音。
ラジだった。
ひどく慌てた様子だ。
「雅人! 逃げろ! loot!」
loot?
その言葉の意味を理解するより先に、ラジの後ろにいくつかの影が見えた。
そいつらはナイフを持っている。
明らかに、まともな連中ではない。
俺は考える暇もなく、急いで逃げた。
――
しかし、一つの影が俺を追ってきた。
どれだけ必死に走っても、そいつはずっと俺から離れない。
行き止まりだ!
まさか、こんなところで行き止まりに出るとは思わなかった。
振り返ると、すでに逃げ道を塞がれている。
ようやく、その影をしっかり見ることができた。
全身をローブとマスクで隠し、ナイフを持った危険な奴。
少なくとも、なぜラジがこいつらを「loot」と呼んだのかは分かった。
目の前の奴が、ナイフを振り上げる。
そして、俺に向かって振り下ろそうとした。
「ハッ!」
そのとき、黒猫が横から飛び出した。
俺を守ろうとしてくれたのだろう。
この子、本当にいい奴だ。
相手は猫がいることに気づくと、振り下ろそうとしていた手を止めた。
今だ!
俺は自分が怪我をする危険も考えず、相手が怯んだ隙に突っ込んだ。
相手は意外なほど軽かった。
俺はそのまま相手を地面に押し倒した。
もみ合う中で、俺は相手のマスクを引き剥がした。
だが、マスクの下にあった顔を見て、俺は固まった。
「どうして、お前が?」
何度か顔を合わせたことがある程度の日本人の少女。
ノリコが、冷たい目で俺を見つめていた。




