5.予想外の誤算
怒ったルイザはとっても怖かった。結論、やっぱり美人は怒らせるものじゃない。今度から気をつけようと私は胸に誓う。
結局、私はあの後、お風呂に無理矢理入れられ、ドレスを着替えさせられた。とにかくその時のルイザはすごかった。
まさに鬼。いや、もう思い出したくもない。とはいえ、もうすんだことだ。
お花も無事育てられることになったし、明日からツヴァイが植物について色々教えてくれると言うし、少なくともやることは見つかった。
まずは出だしとしては順調じゃない?まあ、恋愛についてはなかなか進展していない訳ですけど。それはそれ。
私は目の前に並ぶ料理を見る。そう、待ってました!本日の夕飯の時間です!昼食を食べ損ねて、もうお腹はぺこぺこだ。朝ご飯はちょっと質素な感じだったけど、やっぱり本番はディナーでしょ!私はテーブルにあふれんばかりに並んだ料理を見る。
「すごい!」
どの料理も輝いて見えるよ。そりゃあ、王宮の料理だもんね。まさに高級レストランに並ぶようなそれらを私は目を輝かせて見る。
「いただきます!」
私はそう言って、フォークとナイフをとる。ルイザが厳しい目を向けるが、大丈夫。テーブルマナーはさすがに覚えている。そう、まさに淑女のように美しい動作で料理を切り、一口口に運んだ。そして。
「うぐっ!?」
そう一口。私はそっとナイフとフォークを置く。すぐさま、すぐそばにあったグラスに入った飲み物を一気に飲み干した。ルイザが声を上げたが、無視。私だってそれがマナー違反だってことはわかってる。わかっているが。正直それどころではない。
「嘘でしょう?」
こんなに、こんなに美味しそうな見た目をしているのに。私はテーブルに並んだ料理を見る。いや、まさか。今食べたこれがいけなかったのかもしれない。そう思って、別のものも一口食べてみる。そしてまた飲み物を飲み干す。また、別のものをまた別の物を、散々食べて私はその事実を認めた。はっきり言う、この料理見た目だけだ。見た目こそ美しく、非常に食欲をそそるが、味はこれでもかというほど破綻している。もう、こうなったらはっきりと言う。まずい。すっごくまずい。
「ねえ、ルイザ聞いてもいい?」
「なんでしょうか?」
「私の国の料理って、ここの料理と味付けとか違ったりする?」
「いえ、料理に関してはアルフガルト王国のものとそうかわりはないと思いますが」
「いかがしましたか?」そう問いかけてくるルイザに私は額に手をやり、天をあおいだ。そうか。これが普通なんだ。私は今更ながらとんでもない世界に転生してしまったと痛感する。
そう、この国は、いやひょっとしたらこの世界かもしれないが、はっきり言って食事がまずい!
順調?いや、全然良くない!!
「恋愛よりもまずこっちをどうにかしないと!!」
このままだと恋愛する前に私の身体がもたない!私の心からの叫びにルイザはただ淡々と「食事中に騒がないで下さい」と答えた。
私の前世の話をしよう。前世で私が住んでいた国は非常に豊かで比較的安全な国であった。そしてその国の人種はとにかく食にこだわる人種であったと言える。当然、私もそうだった。仕事の次に食事を重要なものと考えていた。
毎日自炊し、少し値段がはっても安全で新鮮な食材を選んだ。味噌汁一つ作るにもだしからこだわり、何種類もの、だしのもとを用意し、手間暇かけ作っていた。
例えその料理を食べるのが自分1人だけだとしても、どんなに疲れていようと、私は手をぬかなかった。それぐらい、食事への執着が強かったのだ。
そして前世の記憶がよみがえったと同時に私はどうやら前世の食へのこだわりと味覚を引き継いでしまったらしい。
そう、つまり、はっきり言ってこの国の料理が口に合わない!
「いや、なんとなく、朝食を食べた時点で嫌な感じはしてたんだけどね!」
でも、まさかね。ここまでとは思わなかったのよ。朝食はまだ質素な分、物足りないなって思うぐらいですんでいたけど、夕食のそれはまさに味の崩壊だった。
繊細なはずの味付けをどうしたらこうも豪快にできるのか。作った料理人に詰め寄りたくなるほどのでき。夕食にあった飲み物がなんだったかわからないが、少なくともそこに並ぶ料理よりは遙かにましだった。
「まさか、飯まず国に転生するなんて」
これはだめ。はっきり言って、それだけは許せない。どんな風習でも規則でも従う気だったけど、それだけは許せない。
食事は喜び!美味しくないなんて冗談じゃない!
「これは死活問題よ!」
愛があっても食事がまずいのは嫌!
さて、どうしたものか。私はうーんと首をひねって考えた。