表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京ダンジョン  作者: ルーデル
1章
37/46

行雲流水


「そう…豹悟は死んだのね。」


楓は下げた頭を戻すことができなかった。


「顔をあげてちょうだい。

あなたが謝ることじゃないんだから。

あの子も私も覚悟してたことだし、豹悟が死ななかったら代わりに誰かが死んでいたかもしれない。

あの子が行ったのはそういうところだったんだから。」



気丈に振る舞う豹悟の母を前に楓は豹悟の遺言を伝えた。


豹悟は充実の中死を迎えた事、母に親不孝を謝りたい事、これまで育ててくれて感謝している事。


「付き合いは短かったですが小野くんじゃなく例えボクがあの場で死んだとしても、小野くん達と一緒に戦えてよかったと満足していたと思います。それほど素晴らしい人でした。」


楓の一言一言を噛み締めながら聞いた豹悟の母は僅かに声を震わせなが言った。


「ありがとう、よく伝えてくれたね。

出来ることならあなたもあの子の事を覚えててあげてちょうだい。」


楓はここで泣いてしまいたかったが、自分より遙かに辛いはずの豹悟の母が耐えている中自分が泣くわけにはいかないと唇を噛みながら力一杯頷いたが、それでも涙は素直で重力には逆らわなかった。


「楓ちゃん、あなたも女の子であの場所においてはもしかしたら人一倍苦労することもあるかもしれないけど、あの子の分まで生き抜いておくれ。」



「…お約束…します…」


嗚咽を漏らさないように必死に楓は振り絞った。

そして最後まで生き残る事を固く誓いその場を後にした。







「あのバカ息子…」


楓が帰った後豹悟の母はそう呟き、その脳裏には豹悟が生まれてからこれまでの思い出が鮮明に蘇った。


豹悟の母は強い人間で、この期に及んで母を悲しませまいとする豹悟の遺言を汲み取り悲嘆にくれる事はなかったが一筋だけ涙を流した。


その重さは計り知れない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ