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東京ダンジョン  作者: ルーデル
1章
22/46

清い月


数時間の後見張り交代の時間になり昴と豹悟は眠りについた。

敵意が滲み険しい昴も、責任感からどこか張り詰めていた豹悟も、まるで憑き物が落ちたかのように眠りに落ちた。

それを見た顕人と楓も眠たい目をこすりながら微笑むのだった。



1日を通してダンジョン内で落ち着いた時間というものがなかったのでどことなく2人はソワソワしていたがやがて、お互いがどちらからともなく話し始めた。


ここへ来る前に楓が通っていた大学のこと。

顕人の大学へ通いつつも将来の目標など何もなかったこと。

楓は親友の死がきっかけでダンジョンに来たこと。

顕人はそういうのではなく、ただ何か本気で成せるものが欲しかったこと。



顕人は楓と比べて自分の動機を不純に感じ、何事にも懸命になれる楓が羨ましかった。


「永崎はすごいな。

俺は割と何事も卒なくこなせるタイプだと思うけど、結局将来的に永崎みたいに何にでも懸命になれる人には敵わなくなるんだよな。」



「ボクは山縣君みたいに器用で何でもこなせる人がとても羨ましいけど、悩みって人それぞれなんだね。

痩せてる人が羨ましい太ってる人がいる一方で太ってる人を羨ましく思う痩せてる人だっているんだもんね。」

はは、とにこやかに笑いながら楓は返した。

「でもやっぱりあれだけ魔法をポンポン使えるのは羨ましい!」



「こうか?」

顕人がニヤリと笑いながら極小の衝撃波を二つ遠くに飛ばした。



「山縣君ひどいよ!」



「はは、ごめんごめん、けど永崎には剣があるじゃん。

あんなレベルで扱えるのは永崎だけだし俺にもちょっとくらい勝ってるところがあってもいいだろう?」



「それはそうだけどー…、ボクだってファンタジーみたいに魔法を使いたいよ。」

楓は少しいじけたように顕人に訴えた。



「俺が思うに永崎の魔法はきっと特別なものなんだよ。

よくあるだろ?漫画とかゲームとかですんでのところで眠っていた才能が発揮されるみたいな。

きっと永崎の魔法が今発動してないのには何か永崎の技量以外の理由があるんだと思うな。」



「…山縣君は中々人をノせるのが上手いなぁ。」

楓は内心とても嬉しかった。

楓の性格上、いくら剣で貢献しているといっても魔法を使えない劣等感と、不十分な協力しかできないことを苦々しく思っていたからだ。


楓は夜の高揚感と、顕人の優しい言葉につい自分の秘密を打ち明けてしまいそうになったが、すんでのところで思い留まり弱い自分を恥じた。



ダンジョンの外は月が崩壊した街を優しく照らしていた。



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