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125 海賊退治


 戦闘は東で行われている。

 アリスのセンサーを通して周囲の状況を確認すると、戦車30両が2隻のタナトス級ラウンドクルーザーと対峙している。戦機は6機いるようだが、獣機も3個分隊ほど展開しているようだ。

 夜間戦闘だから、交戦地区は砲煙でかなり明るく見える。


「海賊船の母艦は確認できないかな?」

『この布陣からですと、北に30kmほどの場所に潜んでいるようです。上空から確認してみましょうか?』


 高度100mほどを保って数回海賊船の母艦が潜む場所を探ると、かすかな重力異常を確認することができた。


『大規模なマンガン団塊の埋蔵と似た反応ですが、今までの探索ではこれほどマンガン団塊が集まっていることはありませんでした』

「同じ金属反応だからねぇ。1発撃って様子を見てみるか?」


 亜空間からレールガンを引き出していると、頭上に仮想スクリーンが出現した。スクリーンが黄色に点滅して、俺に注意を促している。


「何かあったのか?」

『騎士団のラウンドクルーザーに命中弾発生。被害は少なくなさそうです』

「なら、早いところ炙りだしてみようか」


 犠牲は少ない方が良いに決まってる。

 直ぐに騎士団側に加わることもできるけど、海賊の母艦を沈めるチャンスがあるなら見逃すことはない。

 

「これだな。距離500mで最大加速を掛けられないか?」

『初弾で、地中5mほどなら貫通出来ます。5発を連続で放てば10mほどの深さなら標準装甲板10cmを貫通出来ますよ』


 着弾時の衝撃波で土砂を吹き飛ばす感じだな。

 船体に穴が開けば、巨獣を釣るための短砲身砲も使えそうだ。


 海賊船の母艦が潜む地点を詳しく調べると、ペンほどの太さの多機能センサーが地中から飛び出している。

 アリスの調査結果では周囲の光学的な監視装置ということだからカメラみたいなものなんだろう。


「500mまで近付けるかな?」

『大きな死角があります。あのタイプのセンサーでは、上位角60度以上は監視できません。直上より攻撃します!』


 対空潜望鏡ではないようだ。円盤機の滞空時間が短いから、航空攻撃は考えていないんだろうな。


 数kmほどの距離から上空に飛び立ち、高度を5千mほどに保ちながら近づいていく。

 母艦位置の直上に来たところで、レールガンを取り出して一気に降下する。

 

『ターゲットをロックしました。高度計とトリガーのリンク完了です!』

 

 500mの高さになれば、自動的にレールガンが発射されるということだな。

 実感が伴わないけれど、確実性が高い方が良いに決まってる。


 1秒に満たない発射の反動が腕にアンサーバックされる。と、同時にアリスは水平飛行に移った。

 数kmほどの距離を取ったところでアリスが振り返る。


「やったのか?」

『発熱反応があるようです。潜砂艦と同様の構造であれば、2mほどの開口が出来たはずなのですが……』


 頭上を再度飛行しないと状況が分からないな。ついでに55mm砲弾をプレゼントしてあげようか。

 武器を変えて、薄く煙が上がっている場所に向かうことにした。

 被害が軽ければ、逃げられてしまいそうだ。できれば爆弾を落としたいところだな。


 55mm砲弾は、元々が巨獣の誘導に使っているものだ。派手に炸裂炎が上がる代物だから役立つかは微妙だったんだけど、どうやら船内火災を誘発したらしい。

 黒煙が盛んに上がっている。


「中の連中はたまったものじゃないな」

『自動消火装置が無いんでしょうか? あれではガスマスクが必要でしょう』


 構造が潜砂艦だから、密閉性能を高めてるのかもしれないな。そんな場所で消化用の炭酸ガスなどを使ったら酸欠になりそうだ。水系も電子機器を考えるとあまり使いたくはないはずだ。

 となると、地上に現れそうだ。再度潜るにしても外壁の修理が必要だから、このままで十分かもしれない。ナルビクの王国軍がやって来るから捕縛は向こうにお願いしよう。


「今度は、こっちかな?」

『少し状況に変化があります。騎士団の交戦区域に円盤機が2機、王国軍方向に4機が移動しています』

「何だって! ……もう1つの海賊ってことか?」

『そうなりますね。ランダムに進路を変えていますから、すぐには母艦の位置が分かりません。戦車を使っているならおおよその方向は分かるんですが』


 円盤機の稼働時間は3時間にも満たない。だが、改造された円盤機の速度は300km/h以上で飛ぶことができる。帰還を考えると1時間以内場所に母艦が存在することになるが、探る広さが広大になってしまう。


「騎士団に向かおう。その途中で円盤機を撃墜したいが、海賊側であることを確定した後になるなぁ」

『相互通信を傍受してみます。武装はレールガンに変更しますよ』

「射程距離を重視しよう。低速でも弾速は2km/mを越えるんだろう?」

「戦車相手ですからね。十分だと思います」


 ビオラ騎士団に入団したころにも戦車は相手にしたからね。あの時も夜だったな。赤外線モードに変更された全周スクリーンの正面にターゲットマークが現れる。このまま目視でターゲットをロックして行こう。

 地上3mほどの高さで交戦地区に向かう。低空だから戦車には視認できないだろうし、砂塵を上げることも無い。

 

 無駄弾を出すことも無く、1台ずつ確実に破壊していく。

 タングステン弾ではなく鉄鋼弾を使っているけど、秒速2kmを越える弾速の前には戦車の装甲板は余り意味が無いのかもしれないな。


「ん? ……戦車が増えてないか?」

『12台増加してます。シートを被って砂の中に潜んでいたようです』


 散開しているけど、狙撃する上での問題はない。

 一所に立ち止まらぬように、移動しながら戦車を破壊する。


『ナルビク王国軍の巡洋艦に爆弾が命中したようです。速度は低下しましたが、以前と同じくこちらに向かっています』

「大型爆弾だったということかな?」

『100kg爆弾と推定します。爆撃後、円盤機は姿を消しました。私達と同じように、地上すれすれを飛んで行ったようです』


 レーダーでの追跡を避けたってことか。もう1隻の海賊船は手強そうだな。

 だが、巡洋艦を潰す目的は……、到着時間を遅らせるためか? いくら海賊船でも、王国軍と正面きっての対決はしないだろう。


「王国軍の到着が遅れそうだね?」

『現状の速度では最速でも6時間後になりそうです。駆逐艦の速度も落ちてますね』


 足止めは成功ってことか。やはり2つの海賊が同盟したんだろう。だけど、もう1隻の海賊船がかなり損傷を受けている。

 この後の海賊の作戦はどうなるのだろうか?


『戦車の破壊を終了しました。円盤機2機は既にこの地を去っています。騎士団側の損害は、1隻が中破。もう1隻にも命中弾があった模様で舷側から煙が上がっています。戦機の損害はゼロ、獣機は7機が大破しています』

「かなりの損害だ。死傷者もかなり出てるんじゃないかな」


 さてと、これで一応終わった感じだな。

 引き上げようとアリスに言おうとした時、アリスが報告してくる。


『騎士団より入電です。「騎士団と騎士の名を知らせ!」と標準コードで繰り返しています。また、東から接近中の王国軍から、「現状報告」を要求しています。どうしますか?』

「そうだな。騎士団には『騎士団であれば当然の事。ヴィオラ騎士団』でいいだろう。問題は、ナルビク王国軍だな。ドミニクに状況を伝えてくれないか? ヴィオラ騎士団はウエリントン王国に所属していることも考えないといけないだろうし」


 問題あるとは思えないけど、案外王国軍同士が反発していたりすると後々の問題にもなりかねない。

 直ぐに、騎士団から返事が返ってきた。『ちゃんと説明してきなさい』ということだけど、さてどうやって説明しようかな。


「とりあえず、海賊船1隻を中破させたことは伝えた方が良いだろうな。戦闘が終わったことも伝えといてくれ」

『了解です。メール文で送信します』


 確かに口頭よりも文面の方が良いかもしれない。

 騎士団からは、帰る前に一度立ち寄ってほしい旨の連絡があったけど、それは遠慮しておこう。


『円盤機、接近中! 到着まで160秒』

「レールガンで狙撃する。進行方向は?」

『北北東からです。地上を這う様に飛んできます!』

「ランダム運動で西に移動する。ここでは騎士団に迷惑が掛かりかねない」


 やはりやってきたか。

 戦機だと思っているようだけど、後悔しないでくれよ。

 

「照準と射撃はアリスの任せる。周囲500kmの動きを見せてくれ!」

『了解です。10分ほど前に科学衛星が上空を飛行しました。その地上映像を表示します』


 ハッキングしたんだろうな。そんな思いが頭に浮かぶ。

 あちこちで発熱反応があるけど、これは破壊された戦車達だろう。問題は……、やはり地表に出てきたようだ。多脚式走行装置の痕跡が残るから、移動を始めたのが分かる。


『円盤機の破壊完了しました』


「ありがとう。この海賊船の位置は王国軍に知らせたかな?」

『知らせました。今度は出頭して報告を指示してますけど……』


 面倒だけど、他国の領域ということになるんだろうか?

 アレクに聞いた話では、各王国ともに、領地の北限は緯度で30度以内だと聞いていたんだが。


「ウエリントン王国にもナルビク王国から輿入れしたお妃様がいるからねぇ。一応報告に向かおうか」

『了解しました。「出頭する」と返信しておきます』


 確かフェダーン王妃だったはずだ。王宮内での立ち位置に変化が出たら恨まれそうだ。

 それに、出頭すればコーヒーぐらいはご馳走してくれるんじゃないか?

 


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