第1020話 おはよう
二年生編からでも楽しめるように書いていきますが、一応物語は一年生編の続きなので話数、章は一年生編の続きから書いてます。
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チチチ、と鳥の囀りが聞こえる。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
私はそれを目に受けて、意識が覚醒していくのを感じた。目を開けて、ふぁ……と大きなあくびをする。
ゆっくりと起き上がる……いや、起き上がろうとする。けど、身体が重くて持ち上がらない。
隣を見る。すると、小さな女の子が私に抱き着いてすやすやと小さな寝息を立てていた。
「フィルちゃんか……ふぁあ」
やっぱり起きたばっかりと言うのは、眠たい。何度もあくびをしてしまう。
本当ならこのまま二度寝としゃれこみたいところだ。だけど、今日はそういうわけにもいかない。
「んにゃあ……ママぁ」
私のことをママと呼ぶ、きれいな白い髪の女の子。
もちろん私の子供ではない。でも、なんでか出会った時からママと呼ばれているのだ。
本当はこの魔導学園に入れる年齢ではないけど、魔導の資質があるのと行くあてがないのとで学園に、私たちの部屋に入ることになった。
自分のことも、両親のこともなにもわからないこの子は、記憶喪失……とはちょっと違う。実は、人工的に造られた存在だと言うのだ。だから記憶も身内も存在しない。
本人には隠しているし、このことを知っているのはほんのわずかだ。
眠たい身体に力を入れ、抱き着いているフィルちゃんごと起き上がる。きれいな白い髪が、鼻先をくすぐる。
「ぶぇっきし!」
鼻をすすり、ベッドから下りていく。フィルちゃんは私に抱き着いたまま離れないのでそのままだ。
ルームメイトのノマ・エーテンちゃんは、まだ寝ている。きれいなブロンドの髪はベッドに散らばり、規則正しい寝息を吐いている。
布団の上からでも、実に素晴らしい身体をしているのがわかる。
……やっぱ嘘。同室だからいつも薄着で見る機会があるからわかるだけだ。
「ですわ……ですわ……」
「どんな寝言……いや寝言かこれ?」
そんな彼女は、起きている時はもちろん寝ている時も愉快だ。
ともかく、起きよう。まずは身体を起こすのだ。
私はカーテンを開け、朝日をいっぱいに浴びる。身体を目覚めさせるには、太陽の光を浴びるのが一番だよ!
さて、私が今日をこうも楽しみにしているのには、理由がある。
なんてったって私エラン・フィールドは、今日からこの魔導学園の二年生になるのだ。今まで新入生として学んできた学園で、自分たちより一つ下の後輩が入ってくる。
そう、つまりは先輩になるのだ! せ、ん、ぱ、い……! なんて甘美な響き!
「んにゅう……ふぁあ、フィールドさん。おはようございますわ」
「うん、おはようノマちゃん!」
「朝から元気ですわね」
むにゃむにゃと起き上がり、目を擦るノマちゃんの髪はぼさぼさだ。
いつもはドリルのようにきっちりキメている髪型。就寝中はさすがに解かれてしまうとは言え……
あーあー、きれいなブロンドの髪が大変だ。
「ノマお姉ちゃん、頭が爆発してるみたい」
いつの間にか起きて下りてきたフィルちゃんが、ノマちゃんの頭を指差して言う。
その言葉に、ノマちゃんは寝ぼけ目のまま頭を触る。
ぼさぼさの髪を感じ取ったのか、「ですわー」と嘆いてしまっている。鳴き声かな?
学園に入る前は、彼女に仕えてきた男の子に髪をやってもらっていたらしい。しかし、女子寮は男子禁制なので、そこからは私が引き継ぐことになった。
まあ、最近はノマちゃんも自分でできるようにはなってきたんだけど……
「これは、手強いかも……」
今日のぼさぼさ具合は、いつもの比ではない。一人でやるのはさぞ大変だろう。
仕方ない。ここは私が……
「肌を脱ぎますか」
「多分ですが、一肌脱ぐ……ではないでしょうか。なんだか怪奇的ですわよ」
「そうとも言う」
まず起きて、手洗いうがい……着替えも含め身支度を済ませて、朝ご飯のため学食か購買へ向かう。これが朝のルーティン。
朝だからか、人であふれかえる。なので、早めに部屋を出てゆったりしたいのだが……
「たまには、そのままの髪で登校してみてもいいんじゃない?」
「嫌ですわよ! こんな姿、恥ずかしくて他の方には見せられません! 特にコーロラン様には……」
顔を赤くして、両手で隠している。かわいい。
同室の私には今更だが、他の人に見せられる姿でないのは確かだ。それに、恋の相手であるコーロランには絶対見せたくないのもわかる。
髪一つで、そんなになっちゃうなんてね。
コーロランは、このベルザ国の第二王子だった男の子だ。そんな相手に、ノマちゃんは片想い中である。
「理解できない、という顔をしていますわね! いいですわよねフィールドさんたちは。お手入れしなくても、おきれいな髪なんですから!」
「ふふん」
「ふふーん」
胸を張る。ノマちゃんに比べたらないと言われるかもしれないけど、まだ成長期だからいいんだもん。
私は黒い髪を、フィルちゃんは白い髪をそれぞれファサってやった。
……この黒い髪は、この世界ではとても珍しいものらしい。
十年前、エルフであり私の師匠のグレイシア・フィールドが、記憶喪失の私の家族を探してくれたんだけど……手掛かりは、なかった。
黒髪黒目なんて、とっても特徴的な見た目であるにもかかわらず。
世界を旅をしてきたという師匠は、私の身内どころかこんな特徴の人間を見たことがないと言っていた。
『その魔導学園に、通ってみるつもりはないか?』
私を拾ってくれた師匠の勧めで、私は魔導学園に入学した。
魔導学園とは、言葉通り魔導を学ぶ場所だ。
魔導……この世界には魔力が溢れている。それは大気中に、あるいは人の体内に。
自分の魔力を扱うものを『魔法』、大気の魔力を扱うものを『魔術』と言う。
そして、それらを一括りにして『魔導』……魔導を扱う者を、魔導士と呼ぶ。
「ほんじゃ、ちゃちゃっとノマちゃんの髪直して、朝ご飯食べに行きますか」
「おー!」
「お願いしますわ」
……これは、私エラン・フィールドが……師匠であるグレイシア・フィールドを超える最強の魔導士になるため、魔導を学ぶ学び舎で友達と切磋琢磨して成長していく物語である。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
二年生編も盛り上げていきます! 面白い、良かった等感じてくれたらぜひ、★評価や感想をお待ちしております!




