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第六十三話:多方面作戦:残党狩りと商路の再奪還

「主《あるじ》。わらわの兵站部門からの報告です。通商連合の裏切りによる物資の流出、そして残党狩りでの食料の確保失敗により、軍の食料備蓄が危険なラインに達しました。主の御身お守りするわらわの献身が揺らいでおります。まことに申し訳ございません……」


 テラの母性的な不安が、ヒカルの絆の共感者を激しく揺さぶる。




 だが、その不安を払拭する報告が、もう一つの作戦から届いた。


 疾風の遊撃竜姫セフィラと空虚の斥候王ゼファーが通商連合の拠点に帰還した。


「団長《だんちょう》! 私からは、最高の冒険の報告だよ!」


 セフィラは軽やかに玉座の間に舞い降り、リリアを装った近臣たちの前で大声で叫ぶ。


「通商連合の裏切り者たちに、私の自由という名の武力制裁を見舞ってきたよ! 彼らの物資集積所を空から一瞬で強襲、そして威嚇! 二度と裏切らせないよ!! テラ姉さま、もう安心だよ!!」


 ゼファーが冷静に補足する。


「セフィラ様の遊撃部隊は、彼らの最も利益を優先する中枢を狙い、論理的な恐怖を与えました。彼らは利益を損なうことを最も恐れます。カインの誘いに乗ることが非合理的であることを証明したのです」


 通商連合の拠点では、セフィラの遊撃部隊が上空を高速で旋回し、風の魔力で物資輸送ルートを一瞬で遮断または破壊できることを示唆した。


 通商連合の代表は恐怖に顔を歪ませ、降伏を余儀なくされた。






 通商連合が武力制裁に屈した瞬間、物流・貿易次長の放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)が交渉の場に現れた。


「やあ、団長さん。最高の冒険と最高のビジネスをありがとう」


 放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)はセフィラとゼファーの武力を背景に、通商連合との再協定を締結した。


「通商連合が最も恐れるのは、物資の途絶による経済の破綻です。彼らはカインの利益よりも、ヒカル王の軍事的優位から得られる長期的な利益を優先するという、最も合理的な選択をしたのです」


 放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)は、協定成立の証として、盟約軍への食料・薬草の緊急輸送ルートを確保した。


「テラ殿が抱えていた兵站の課題は、これで一時的に解消ですよ、団長さん」


 ヒカルの顔に安堵の色が広がる。


「よくやった、セフィラ、ゼファー、放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)。貴様たちの行動は、この国の生命線を繋いだ」

「MVPは疾風の遊撃竜姫セフィラ、そして、叛乱軍での戦線を影で維持したのはヴァルキリアの部隊あってこそだった。だから、闇の王女ヴァルキリアとのジョイントMVPだ!二人とも王の義務として、私に報酬を要求しろ!」

「やったー!団長《だんちょう》!MVPの報酬は、私の昼間の政務を手伝う独占権!団長の知恵を私の冒険のためにだけ使わせてもらうよ!」


 セフィラは歓喜の声を上げ、ヒカルに無邪気な抱擁を仕掛ける。


 ヴァルキリアはセフィラの独占要求に冷静に対抗する。


「ちょっと、契約者。私はMVPの報酬として、当番とは別に、明晩の夜にも、王の孤独な安息の独占を要求するわ。セフィラの無責任な自由など、王の心身の休息と比べれば非合理極まりない」


 セフィラはヴァルキリアの要求を受け、さらに無邪気な独占を要求した。


「ずるーい! じゃあ、私も! 独占政務が終わった後の、王の寝所への『潜入権』を要求する!自由は誰にも縛られないよ!」


 多方面作戦は全て成功した。盟約軍の士気は最高潮に達したが、ヒカルの心には、別の課題の重みがのしかかっていた。


 ヒカルは、MVPの報酬の独占を許しつつ、王の義務としてヴァルキリアに目を向けた。


「わかった、ヴァルキリア。夜までにルーナとテラの安寧の義務で疲労を回復させる。その後、当番として寝所へ来い。お前の闇の忠誠を、この王が受け入れる」

「ええ、それでいいわ。さすが契約者。判断が的確ね。で、明日はどうするの?」

「そして、明晩の昼はセフィラの自由な政務独占の時間だ。夜はヴァルキリアの孤独な安息の時間とする。二日連続だ。セフィラの夜の潜入権は、王妃の座を巡る愛の競争に、孤高の闇の愛を示せた後に、王が裁定する」


 ヴァルキリアはわずかに頬を赤らめるが、すぐに孤高の仮面を被り直す。


(フ、フン。契約者の評価など不要。私の愛は誰の評価も求めない孤高の愛だ。しかし、二夜の独占を許容された。妹たちよりも私を優先したという事実こそが、この王の私への真の評価。今晩、明晩とも、最高の忠誠を示してやるのよ!)


 ヒカルは、王の義務として、リリアのケアと、嫉妬に狂う妻たちの愛の調律という、次の戦に向かう。特に、レヴィアの嫉妬の炎が静かに燃え始めているのを、ヒカルは肌で感じていた。


(リリア。教団の暗殺者から俺を守ってくれた彼女の傷はまだ癒えていない。そして、リリアの存在は、六龍姫の愛の調律を乱す最大の不協和音だ)


【第64話へ続く】


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