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【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる  作者: ざつ
本編 第一部 竜の内戦 編

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第三十話:論理を越えた愛の奇策と、策士の最後の敗北

 盟約軍は屈辱的な撤退を喫し、指揮所には重い空気が漂っていた。ヒカルは、作戦室で理性を失いかけたアクアをそっと抱きしめ、慰めていた。


「王……わたくしの理性が負けたのです。わたくしは、王妃として非合理的な存在になってしまいました…………」


 ヒカルは、アクアの銀色の髪を優しく撫でた。「違う。お前の理性は、愛という最高の資源を浪費しないための最高の防御だ。だが、策士はお前の愛の深さを計算に入れなかった」


 ヒカルは、アクアの理性の仮面の下にある深い愛を感じ取り、彼女の愛に応えるべく、策士の論理を完全に裏切る奇策を立案する。策士の論理は、ユニゾンの竜姫たちの感情的リスクを計算に入れているが、「王妃の愛の暴走を制御する力」までは計算していないだろう。


「シエル、ルーナ、セフィラ。新たな作戦を共有する。今回の鍵は、策士の論理を愛の激情で完全に麻痺させることだ。そして、ユニゾンの感情的な不調和こそを武器にする」




 ◇◆◇◆◇


 翌朝、盟約軍は再び水域へと出撃した。策士は、情報戦で疲弊した盟約軍がさらに混乱することを確信し、ヒカルを「王の正当性なき反乱軍」と侮っていた。


「ふふ。また来たか、愚王よ。貴様は論理という言葉の意味を知らぬと見える。わらわの知略の前に、貴様の愛など無力と知るがいい! わらわの霧の結界が貴様らの動きを封じるぞ!」


 策士の挑発に対し、ヒカルは冷静に愛の指揮棒を振った。


「レヴィア、セフィラ。そしてフレア。炎と風の二龍ユニゾン——高速追尾熱波だ! ただし、愛の調和は50で構わない!」


 ヒカルの指示に、完全竜化したレヴィアとセフィラは驚愕した。


「調和50!? そんな不協和音をユニゾンに使うなんて、非合理的だわ!」


 蒼玉の理性竜姫アクアが、驚愕と混乱の表情を浮かべた。


 ヒカルの意図は、不協和音を策士の計算外のノイズとして利用することだった。炎と風のエネルギーが追尾型の熱波となり、フレアの伴奏が不協和音をノイズに変えて、策士の情報網を一時的に過負荷で麻痺させた。


「馬鹿な…………不協和音を戦略に使うだと!? 貴様の感情は、なぜ調和を保てる!?」


 ヒカルの非常識な対抗策に、策士は激しく動揺した。


 彼は、策士が予測不可能なノイズに気を取られた一瞬の隙を見逃さなかった。これが、真の奇策の発動の瞬間だった。


「レヴィア、ルーナ、アクア、セフィラ。そしてシエル、ゼファー。四龍ユニゾンを発動させる! アクア。お前の理性ではなく、俺への愛という名の情熱に基づき、このユニゾンの不調和の核を制御しろ! お前の中の情熱こそ、最高の戦略だ!」


(注:ユニゾンブレスは、あくまで竜姫の合体技である)


 霧幻の策士(ミスト・マキナ)は、その指示を聞くと、自らも完全竜化を果たした。体長20メートル級の透明な氷の鱗を持つ水の竜。その体から濃い霧を立ち上らせ、幻影と情報錯乱で盟約軍の目を欺いた。


 しかし、ヒカルたちはひるまない。


 ヒカルの言葉に、アクアの瞳に決意の光が宿り、初めて理性ではなく愛という感情を力の源とした。


「王。わたくしの愛をもって、この非合理的な作戦を論理的に成功させてみせます!」


「四龍ユニゾン——四元絶対支配圏クアドラ・ドミニオン!」


 ヒカルの愛の指揮棒に合わせ、四人の姫の愛の調律が完璧に重なった。シエルとゼファーは、伴奏としてユニゾンの軌道と魔力収束の調整を行い、その精密さを極限まで高める。


 ヒカルの愛の指揮棒に合わせ、レヴィアのD音(激情のトランペット)、アクアのF音ファ(理性のクラリネット)、セフィラのG音(シ♭)(自由のヴァイオリン)、そしてルーナのC音(調和のホルン)が重なり、テンションと浮遊感を内包した四の和音セブンスコードが完成した。


 シエルとゼファーは、伴奏としてこの複雑な和声の「音程(軌道)」を極限まで微調整し、和音の「響き(魔力収束)」を担保する。その完璧なハーモニーは、策士の指揮中枢を囲むように、局地的な自然法則を歪曲し、孤立空間に閉じ込めた。



 瞬間、策士の指揮中枢を囲むように、局地的な自然法則の歪曲が発生した。


 光、水、風、炎の四つのエネルギーが壁となり、策士を外部との情報伝達が完全に途絶された孤立空間に閉じ込めた。


 策士は絶叫した。


「四龍ユニゾンを温存したはず! なぜだ!? なぜ愛が、論理を、そして世界の理を歪める!?」




(終わったな、策士よ)


 ヒカルは目を閉じ、ユニゾンが生み出した戦闘能力数値Battle Power Index:BPIを認識した。四龍(レヴィア、アクア、セフィラ、ルーナ)の合計BPIは1250。これにN=4の調和係数2.8が乗算され、ユニゾンブレスの総BPIは3500に達していた。


(策士の単体BPIは300。お前の論理が計算できたのは、せいぜいBPI=1250までの脅威だ。このBPI=3500という愛の非線形な暴力は、お前の理性を完全に打ち砕く!)


 ヒカルの愛の指揮棒は、音として具現化された攻撃を策士ただ一点に精密に叩きつけ、論理を超越した勝利を収めた。


 ヒカルは、炎水ユニゾンによる超高圧ブレスを、孤立空間にいる策士ただ一点に精密攻撃として指示した。策士の理性と論理は、愛の力によって完膚なきまでに打ち砕かれた。


「戦術とは、愛の調和と情報が全てだ。策士よ、お前は愛の力を計算に入れなかった! わらわの敗北は、論理的に計算不可能…………!」


 策士の最期の叫びは、孤立空間の中で虚しく響き渡った。






 ◇◆◇◆◇


「王……わたくしの愛が、論理に打ち勝った…………!」


 アクアは、ヒカルの論理を超えた情熱的な指示によって勝利を収めたことに、理性の仮面を外し、至福の赤面を見せた。


「王よ。この勝利は、理性だけではたどり着けない王への愛がもたらしたものです。この勝利の褒美は…………王妃として戦略的なキスを要求します!」


 アクアは、盟約軍の兵士たちと、激しく嫉妬するレヴィアの目の前で、戦略的な勝利という「知的なデレ」を最大限に発揮した。


「ずるい! 知的なデレなんて卑怯だわ! 王妃のキスは私の特権よ!」


 レヴィアの激情が爆発する。


 ヒカルは、アクアの勇気と、レヴィアの愛の重圧を心から愛おしく思い、冷静に愛の指揮棒を振った。


「アクア、よくやった。これは、お前の知的な愛への最高の褒美だ」


 ヒカルは、レヴィアの嫉妬を正面から受け止めながら、アクアの唇に深く、勝利のキスを与えた。水と炎の王妃の座争奪戦は、古王軍の敗北を背景に、さらに激しく燃え上がったのだった。


【第31話へ続く】

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