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テディベア その19

前回投稿した『その18』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

モカの提案によりテディベアに付ける名前を一斉に言う事となったモモ。


「じゃぁ、『せ~の』で言い合うよ?」

「う、うん。分かったわ。」


嫌な予感を内に秘めるモモであったがモカ主導の下、顔を見合わせたところでふたりはほぼ同じタイミングで思い付いたテディベアに相応しいであろう名前を公表すべく声を揃えた。


「「せ~の、『ディア』!!」」


リビングにふたりの声が木魂した後、刹那の沈黙が続くも程無くして互いに同じ名前を公表していた事に気付くのだった。


「ふにゃあ、一緒だ!」

「本当。あたし達、やっと意見が一致したわね。」


モモと同じ名前を考案していた事に些か嬉しさを覚えるモカ。

片やモモはそれに加えて先に覚えていた嫌な予感について要らぬ心配であった事を悟るのだった。


「それにしてもあたし達、同じ名前を考え付いてたなんて何だか不思議よね?ねぇ、モカ・・・。って、あれ?」


意見が一致した事に安堵したからか話を振るモモであったが何時の間にかモカの姿が無くなっていた事に気付く。


「モカったらまた居なくなってる・・・。」


再び行方を(くら)ましたモカに対し溜息交じりに所感を述べる中、聞き覚えの有る異常に甲高い声がモモの耳へと届く。


「モモ、僕の為にモカと一緒に名前を考えてくれてありがとう。」

「どういたしまして。ところで『ディア』って名前気に入ってくれたかしら?」

「うん、勿論さ。とっても素敵な名前だからすごく気に入っているよ。」

「ふふ。どうもありがとう・・・。って、モカ!」


異常に甲高い声がディアから発せられているものと判断するとそれに関して特に気にした素振りを見せる事無く会話を行うモモ。

だが、その声の正体がモカであると初めから分かっていたらしくテディベアの背後に居ると思われる相棒の名前を呼んだ。


「はは。やっぱりバレてたか・・・。」

「2回目なんだから分かるに決まってるじゃない。」


声色を変えディアとして喋っていた事をあっさりと見破られた事でモモの予測通りぬいぐるみの背後に隠れていたモカはそこからそっと顔を覗かせる。


「で、でもさぁそう言うモモだって案外ノリノリだったんじゃないの?」

「はにゃ?そ、そんな事は・・・。」


苦言を呈された立場ではあるものの顔色を窺いつつ指摘をするモカにモモは図星を付かれたらしく言葉を詰まらせるのだった。


「《ははは。君達って、本当に面白いね。》」


ふたりによるやり取りを客観視し、可笑しさを覚えたのかまたもやモモの耳に何者かによる声が入り込む。


「モカったらもうディアのフリして喋らなくて良いわよ。」

「ふにゃ、何言ってんのモモ?あたし今、ディアのフリなんかしてないよ。」


今までの経緯(けいい)を踏まえ先程聞こえた声がモカのものであると決めた上でモモは少々、迷惑そうにしながら忠告を行う。

だが、当のモカはというと身に覚えのない事を言われた為に顔を(しか)めつつその内容についての否定をするのだった。


「・・・!?で、でも今、確かに声が・・・。」

「それよりモモ、さっきあたしに何か言わなかった?」

「ええ!?」


想定外の返答に困惑するモモだったが目の前に居るモカの装いから嘘を()いていない事を察する。

加えてそんな心境を知る由も無いモカから問い掛けられた事で無意識に吃驚(きっきょう)してしまうも結局その声の正体が誰であるのか分からずにいるのであった。

すると、外から正午を知らせるサイレンが鳴ると同時に昼食用のキャットフードが自動給餌機(きゅうじき)から音を立てて出て来る。


『カラカラカラ・・・。』


「モモ、ご飯の時間みたいだから行こうか。」

「う、うん。そうね・・・。」


音に反応するとモカはモモを誘う様にしてキッチンへの移動を促す。

それを受けモモは今し方耳にした『謎の声』について一旦忘れると共にモカの誘いに乗る形で昼食を取る事に決める。

その傍らで一時的にソファの上に取り残される形となったテディベアは『ディア』という名前の名付け親である三毛とアメリカンショートヘアの子ネコ2匹が自動給餌機から供給されたキャットフードを食べるべくキッチンへと向かう後ろ姿を何処か物思いに耽る様にして見詰めるのだった。


「ふぅ。満腹、満腹。」


昼食を食べ終えた事でふたりはリビングへ戻るべく(から)になった緑と桃色のフードボウルを背にキッチンを後にする。


「そう言えばモカったら今日は一段と食べるスピードが早かったわね?」

「う~ん、もしかしたらディアの名前を考えるのにいっぱい頭を使ったからかな?」


腹を(さす)りながら満足感を覚えた様子を見せるモカ。

それを受けモモは先刻目にした食べっぷりの良さについて触れるとモカは少し悩んだ末、自分なりに導き出したその理由について答えた。


「ふふ。そうかもしれないわね。」

「ふにゃ?モモってばなぁに、それ?何かあたしに言いたいの?」

「んん?別にぃ・・・。」


含み笑いを浮かべつつ述べたモモの言葉に引っ掛かったらしいモカは少しムッとした表情をさせその意図を尋ねる。

そんなモカにモモはすまし顔を交えそれをはぐらかすのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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