第64話:一時避難と【パンツ詐欺】。
結局のところ、私が子兎姉妹の計画にごちゃごちゃ言う事は出来なかった。
お見合いの日取りは三日後。
なんで杏子さんがうさこの姿で外に出ていたのかといえば、私達が来るの分かってたから見せる為だったそうだ。
本人は完璧な変装のつもりだったらしいが……知っている人が見れば一瞬で気付くだろう。
問題はお見合いが終わるまで杏子さんが偽物だと気付かれないように祈るしかない。
こういう誰かを犠牲にするような方法は気に入らないけれど、本人がそれでいいと言っている以上それを信じるしかない。
この日は一度解散し、杏子さんは三日後のお見合いへ望む。
うさこはそのまま咲耶ちゃんの家に避難しておくのが一番だと思ったのだが、本人がどうしてもあの空気に耐えられそうにないと言い出して……。
「こ、ここがおねーさまの部屋……!」
「お、おい……あんまりきょろきょろするな。こらタンス開けるんじゃねぇ!」
「お、おねーさまの下着!!」
うさこがタンスの中から私のパンツを取り出した。
「もう一度ぶん殴ってその記憶を消し飛ばしてやろうか?」
「もうしませんっ!」
……はぁ、こいつを私の部屋に連れてきたのは間違いだった。
確かにあの部屋は酒と煙草の匂いがなぁ……うさこみたいなのには我慢出来ないだろう。
「とりあえず少しの間だけだからな? おとなしくしてないとすぐに追い出すぞ」
うさこは何度も首を縦に振って床に正座した。
それを確認してから一階に降り、母に食べ物を用意してもらう。
「お友達が来るならちゃんと言っておいてくれないと……」
「ごめん。急に決まっちゃってさ。で、家の問題がいろいろあってあいつ今居場所がないんだよ。数日面倒みるからよろしく」
母は面倒くさがるどころかむしろ少し楽しそうにしていた。
私が友達を連れてきたっていうのが嬉しいらしい。そして、どんな料理を作ってあげようかと悩むのが楽しいのだろう。
とりあえず今日の所は残り物のカレーだった。
私は自分の分とうさこの分のカレーをお盆に乗せて自室に戻り、肘でドアノブを下に向け、肩でドアを押し込むように部屋へ入ると……。
「……」
「……」
私はとりあえずカレーを勉強机の上に置いてからうさこに向き合う。
「何かいいわけがあるなら聞いてやるが」
「我慢できませんでしたの」
「分かったから早くそれ取れ」
「も、もう少しだけ……!」
「分かった。今すぐ放り出されるのとここで人生を終えるのとおとなしくカレーを食うの中から好きなのを選べよ」
うさこは腕組みをして首を傾け、「うーん……」とたっぷり考えてから、
頭にかぶっていたパンツを外した。
そして丁寧に折り畳み、ポケットに……。
「おい、なんでナチュラルに持っていこうとしてるんだお前……」
「あっ、いやその……使用済みにしてしまったので洗って返そうかと」
なるほど。
いや、なるほどじゃない。騙されるな私。
「いいからさっさと出せ。没収だ!」
「あぁ……守り切れなくてごめんなさい……」
そんな事を言いながらも何故かうさこは笑っていた。
「気持ち悪いな……言葉と表情が釣り合ってねぇんだよ。何か企んでやがるな?」
「い、いえそんな事はっ!」
……まさかこいつ私のパンツ履いたりしてないだろうな?
いや、自分で履いたパンツを頭に被る阿呆は居ないか……。
「とりあえずカレー食え。それなりに美味いから安心しろ」
「ありがとうございますの♪」
うさこは興味津々でカレーを一口食べ、何故かボロボロ泣き始めた。
「な、なんだよそんなに辛かったか? 中辛だと思うんだが」
「いえ、その……とても美味しくって」
確かに美味いけれど、ごく一般的に家庭で出てくるカレーとそこまで大きく変わらないと思うんだけどな。
「こんなに美味しいカレー食べたの本当に久しぶりですわ」
「嘘つけ。こんなもんどこの家庭でも……」
そこで気付いてしまった。
私の馬鹿。無神経。なんでもっと早く気付けなかったんだ。
確かにこいつは父親とはほぼ接触がない生活をしている。
今は味方がいなくて行く場所がない状態。
だとしたら、こいつの母親はどこに居る?
それは完全に父親の側についているか、もしくは既に居ないかのどちらかだろう。
そんなうさこが家庭的なカレーを食う機会がなかったとしても何もおかしくなかった。
母親はどうした? なんて今の状態で聞く事が出来ない。
万が一父親側だったとしても、既に亡くなっていたとしても、そのどちらもその後なんて言っていいか分からん。
「おねーさまはやっぱり優しいですわね」
「な、なんでそうなるんだよ」
「今私の事情考えて言葉を止めましたわよね。分からないと思いました?」
そう言ってうさこはスプーンを咥えながらにっこりと笑う。
「私の母はもう亡くなってますの。私が三歳の頃らしいですわ。全く記憶にないのが寂しいですが、逆に喪失感を感じずに済んだのはありがたいかもしれませんの」
って事はこいつはごく普通の家カレーをほとんど食った事が無かったのか。
いや、カレーに限らず、母親が作る料理という物を食った事がない……?
勿論友達の家とかに遊びに行って食べる事があったかもしれない。
この子はその度にこんな思いをしてきたんだろうか?
「この家に居る間はうちの母親が腕によりをかけて飯作ってくれるから期待しとけ」
「それは……楽しみですわ♪」
食事を終え、食器をキッチンへ持っていったついでに先ほどうさこが頭に被ったパンツを洗濯機に放り込もうとして気付く。
……似てるけどこれ私のパンツじゃない。
だとしたらこれはなんだ?
答えは一つしか無かった。
「貴様ぁぁっ!! ちょっとパンツ見せろぉぉっ!!」
「やっ、おねーさま急にどうしたんですの!? そ、そんな無理矢理っ! こういう事はお風呂の後にっ……!」
無理矢理うさこのスカートをめくりあげて確認。
そこには当然のように私のパンツがあった。
「やってくれたな……」
「ば、バレちゃいました……?」
こいつとの生活がしばらく続くかと思うと不安しかない。
とりあえずうさこが履いている私のパンツは無理矢理剥ぎ取っておいた。
11/20より新作公開!
おさころの更新も勿論続けていきますので二作ともよろしくお願いします♪





