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第62話:お見合いと【ガスマスク】。


「うさこの奴見合いするって言ってるのか?」


「……そう、らしいな。あの馬鹿野郎……あたしの苦労をなんだと思ってやがるんだ」


 咲耶ちゃんはこめかみに血管を浮かび上がらせながら煙草に火をつけ思い切り吸い込んだ。

 一吸いでメリメリと根本まで灰に変わっていく。


 どういう肺活量してんだよ……。

 というか吐き出す煙の量も煙草一本分で保健室内が一気に煙たくなった。


「咲耶ちゃん、うさこは今どこに居るんだ?」

「あぁ? そりゃあたしの家だよ。せっかく人が匿ってやったっていうのに……もう知るか! 勝手にしろ!! 私は寝るッ!」


 咲耶ちゃんは根本だけになった煙草を床に叩きつけげしげしと踏みつけてから布団に飛び乗り布団を被って丸くなってしまった。


 ……今この保険医裸足で踏みつけやがったぞ……。


 私もこれ以上ここに居ても仕方ないな……うさこが早まる前に合流しないと。


 私は再び保健室の窓から出る為、靴を片手にベッドの上に乗る。

 そこには誰かが丸くなってるけどしったこっちゃない。

 出るにはここを通らなきゃならないんだから。


「ぐえっ!!」

「はいごめんごめーん、よいしょっと」


 窓の外へ出るとベッドから上半身を起こした咲耶ちゃんが仏頂面でこちらを睨んでいた。


「内側からならどの窓からでも良かっただろうが!」

「あー、それもそうだね。つい入って来た時と同じようにしなきゃと思って」

「お前あたしを踏みつけたかっただけだろ」

「あはは、バレた? だって友達の事放り出そうとするからさ。こっからは私が引き継ぐから咲夜ちゃんの家の場所教えて」


 咲耶ちゃんはまるで子供のようにほっぺたをぷくーっと膨らませてから、そこに溜まった空気をゆっくり吐き出す。


「はぁぁぁぁぁーっ。もうめんどくせぇな……分かった分かった。私が車出してやるからさっさと行くぞ」

「そうこなくっちゃね」

「翔子の奴に説教してやらなきゃならんからな」


 ……それは私も同じ意見。


 咲耶ちゃんはもぞもぞとベッドの下にもぐり服を取り出すと、スカートとTシャツを着こんで白衣を羽織る。


 なんで白衣はその辺に置いてあったのにシャツとスカートはベッドの下なんだ?

 この人のやる事は本当によく分からない。


「うーっし、お転婆娘をとっ捕まえにいくぞー」


 校舎裏の駐車場から咲耶ちゃんの車に乗り込む。車で走る事約ニ十分ほどでボロボロのアパートに到着した。


「……咲耶ちゃんって、金無いの?」

「あぁ? 喧嘩売ってんのかオイ。あたしのどこを見たら金持ちに見えんだよ」

「だってお金持ちと仲が良かったでしょ?」

「あのなぁ、金持ってるのは有栖であたしじゃねーんだよ。お前だって翔子と仲いい癖に一般人だろうが」


 確かにそれはそうだ。

 というかうさこがあまり金持ってるっていう印象が全くない。

 学校に居るうさこからはお金持ちオーラが一切出ていないし、うさこのお姉さんだって服屋でバイトしてたくらいだし……。


 ん? そう言えば姉ちゃんが居るなら後継ぎは姉ちゃんになるんじゃないのか?


「なぁ咲耶ちゃん、うさこのお姉さんって知ってる?」

「あぁ、勿論知ってるが……というかそこに居るしな」

「えっ!?」


 咲耶ちゃんの言葉に驚きつつ、ボロアパートの方を見ると階段を降りてくる女が一人。


「おい、ちょっと待て!」


 私は咲耶ちゃんの制止を無視して車を飛び出した。

 だって階段を降りてきたのはうさこの姉などではなくどう見たってうさこだったから。


「おいうさ……こ……??」

「あっ、貴女はあの時の……じゃなかった、えっと……どうしたんですのおねーさまっ♪」


「……いや、何してんのうさこのおねーさん」



 何をどうしたらこういう事になるんだ?

 目の前に居たのはうさこではなく、うさこの制服を着てうさこの髪型を真似しているうさこのお姉さんだった。


「だから翔子じゃないんだってば」


 後ろから咲耶ちゃんがやれやれといった様子でやってくる。


「あれー? 完璧に翔子になれてると思ったんだけど」


「……いや、どうみてもお姉さんですよ。てか咲耶ちゃんはこの事知ってたの? どういう事か説明してくれない?」


 もう私の頭の中は大混乱だ。


「私も知ったのは布団に入ってからだよ。見合いするってのが姉の方だってな」


 つまり咲耶ちゃんは保健室のベッドに飛び込んで丸くなってた時にあのポケベルとかいうのに次のメッセージが来てたって事?

 じゃあ咲耶ちゃんは事情を知った上で車を走らせていたのか。


「咲耶ちゃんが事情を知ってたのは分かったけど、なんでこうなったのかが全然分かんない。結局どういう事?」


「残念だけどあたしも代わりにこいつが見合いに行くとしか聞いてないんだよ」


 私と咲耶ちゃんがジト目でお姉さんを見ていると、気まずくなったらしく笑ってごまかされた。


「え、えへへ……とりあえず部屋で話しましょうか」


「私の部屋だけどな」


 咲耶ちゃんはぶつぶつ文句を言いながらも彼女を部屋へと促す。


 これから私は咲耶ちゃんの部屋へ入るのか。

 そこはどんな魔境が広がっているんだろう。


 そして、ボロアパートの一室、一番奥の部屋のドアを開けると……。


 強烈なヤニ臭さとアルコール臭が鼻を突いた。


 でもそんな事よりも気になった事がある。


 部屋のど真ん中に変な物がいる。


 シュコーシュコーと音を立てるそれはこちらを見るとガタッと勢いよく立ち上がり、私に飛び掛かってきた。


 急に目の前に飛び出してきたそれはどう見てもガスマスク。


 普通さ、ガスマスク人間が突然飛びついて来たら逃げるか反撃するかするでしょ? するよね?


 私? 勿論思い切りぶん殴ったよ。

 それはもう綺麗にクルクル回転しながら部屋の反対側まで吹っ飛んで行って積み上げられていたビールの缶を薙ぎ倒していった。


 咲耶ちゃんの悲鳴が聞こえたけどそんな事よりも私はガスマスクが取れて中から現れたのがうさこだったのを見て心の底から申し訳ない気持ちになった。


「いや、だって……ご、ごめんて」


遅くなりました(;´∀`)

新作書き溜めがそろそろ50話突破しそうです。

現状11月の3連休近辺の公開になる予定ですのでよろしくお願いします♪

そしておさころ、もう少し更新ペース上げていけるよう頑張ります!

久しぶりのお姉さん登場♪

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