第55話:悩みと新たな【騒乱】の始まり。
もう頭の中真っ白で帰路につく。
私はいったいどうしたらいいんだろう?
私が好きな人は、悔しいが今隣で女装しているルキヤだ。
悔しいけれどそれは認めるしかない。
なんでこんな奴の事が好きなのか、とかこんな奴のどこが好きなのか聞かれても困る。
きっと昔の……アレだろうな。
自分で明確な自覚はしていなかったけれど昔一緒に……ってそれはいいや。
考えるだけでもやもやしてくるしどうせこいつは覚えてないだろうから。
だけど、今ズルズルと奈那との関係を続けてしまっていて、私はそれを受け入れてしまった。
なんでこんな事になってしまったのかと頭を悩ませる日々を送っているけれど、今日の事があって気付いた。
確かに私は奈那が大切だ。
どこの誰か分からん奴に奪われるかもしれないと思っただけではらわた煮えくりかえって殺人者になる勢いだった。
それくらいには理性がどこかへ行ってた。
私は奈那の事をどう思ってるんだろう?
なし崩し的に私の彼女という事になってしまっているが、このままでいいのだろうか?
私はどこかで、今までとたいして関係が変わらないと甘い想像をしていた。
でも、別れ際のキスを思い出す。
アレは、明らかに今までの仲のいい友達の範疇を越えてしまっている。
つまり、彼女は本当なんだ。
私はこんなあやふやな感情のまま彼女と関係を続けていていいのだろうか?
彼女は真剣だ。いつからそう思ってくれていたのか分からないけれど、今の私はあまりにも失礼で、無礼で、彼女の気持ちを裏切っている。
「はぁ……」
「溜息なんかついてどうしたの?」
チラっとルキヤを見ると、完璧な女の子の表情で私を心配そうに見上げている。
はぁ、なんでこんなに可愛いんだこいつ。
そもそも私がこの状態のルキヤにときめいてしまっている時点で私の好みはおかしいんじゃないか?
私は本当に女の子が好きなんだろうか?
でも女装なんてしてなくてもルキヤの事は好きだった訳で、矛盾が発生する。
きっと私は好きな相手が好きなだけで、それが男とか女とかどうでもいいんだ。
節操無しの糞野郎じゃん……。
いや、私は女だから糞女か。
「ちょっと、ほんとにどうしたの? 今日の事……?」
「ん? あぁ……まぁな。今日は本当に疲れたし心配しすぎて頭がどうにかなりそうだよ」
「……ボクが付いてたのに奈那ちゃんを守ってあげられなくてごめんね。 あんな連中に囲まれて、ボク全然動けなかったんだ」
急にルキヤが俯いてボソボソとそんな事を言う。
……はぁ。もう溜息しかでねぇよ。
「お前が気にする事じゃねぇだろ。普通はそうなるんだって。……それにきっと、本当に奈々が危険な目に合いそうならお前は動いたと思うぞ」
「どうしてそう思うの? ボクは……ただの弱虫だよ?」
どうしてって言われても、知ってるからとしか言えない。
「お前がそういう奴だって知ってるからだよ」
「……そんなふうに思ってくれてたんだ? ちょっと嬉しいな」
そう言ってルキヤは少し顔を赤くしながら微笑んだ。
その横顔がいつかの姿と被る。
そうだ、私は……この笑顔を守りたかったんだ。
弱虫でいつも虐められてる癖に、いざって時にはちゃんと動ける奴だから。
どっちにしたって弱いから役には立たないんだけど、そういう問題じゃない。
自分が弱いって分ってるのにそれが出来るってのが凄いんだよ。
私はルキヤの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ちょっ、乱暴に触らないでよウィッグズレちゃうでしょっ!?」
「お、おうすまん」
「まったく、絵菜ちゃんはそういう所気が使えないんだから……ほんと男の子みたいだよね」
「すまん」
女扱いされないのは悲しいけれど、私は男みたいだと言われたとしても大切な人を守れる存在で居られるならその方がいい。
「あっ、絵菜ねぇだ♪ どこかおでかけしてきたの?」
家までもう少し、という所で正面からルミナが現れた。
「げっ」
今の言葉はルキヤだ。ルミナに会ってしまったのが余程気まずいらしい。それはそうだろう。だって見た目ほとんど一緒だもんな。
「あれ、絵菜ねぇその子はだあれ? お友達……? って、嘘……」
「ぼ、ボクはあこって言うんだ。よろしく……」
正体を見破られたんじゃないかとビクビクしているルキヤの小動物みたいな動きが可愛くて悩んでた事が吹っ飛んでしまった。
「あこちゃんって言うんだ? 凄い……私達そっくりじゃない!?」
よく言うぜ……全部知ってる癖に。
「あっ、絵菜ねぇが言ってた私にそっくりな子ってこの子でしょ!? いいなぁ~私も仲良くしてほしいな♪」
ルミナが私にウインクで話を合わせろと合図してくるので仕方なく協力してやった。
「そうそう。よく似てるだろ? ほらあこも仲良くしてやれよ?」
そう言ってルキヤの背中を軽く押す。
ルキヤは恨めしそうにこちらを一瞬睨んでから、「よ、よろしくねルミナちゃん」と、語るに落ちた。
「えっ、私の名前ルミナって……まだ言ってないよね??」
ルキヤの顔面が青くなっていく。アホめ。
「そ、そそそれは、そう、ボクも絵菜ちゃんからルミナちゃんの話聞いてたんだ! そうだよね!? ね!?」
今度はルキヤからの圧力が飛んで来る。
めんどくせぇ……。
「あぁ、そっくりな子が居るんだってあこにも教えてあったんだよ」
「なるほどなぁ~♪ 二人一緒にお出かけなんて羨ましい。仲いいんだね♪」
ちゃーっちゃちゃっちゃちゃっちゃっちゃっちゃちゃーっちゃちゃっちゃっちゃー。
ふと、私のスマホが某時代劇のメロディを奏でる。
ポケットから取り出して画面を見つめるが、登録外の番号らしく名前が表示されない。
「ちょっとごめん、電話出るね」
この状況から逃げ出したい気持ちもあって、普段ならシカトする知らない番号の電話に出てしまった。
今この状況で出るべきでは無かった電話に。
「あっ、絵菜さんの番号であっていますか?」
「えっと……どちらさま?」
「私です。パフィーです」
「パフィー会長? 私の番号はどこで……あぁもしかして咲耶ちゃんから?」
「そうです。次の週末空けておいてください。それとあこさんと奈那さんにも声をかけておいてもらえますか?」
……?
「あこは今一緒なんで伝えておく。週末を空けておけばいいんだな。で、何をする……え? コミバ? ……いや、そういう事なら私はちょっと……」
「ぱふぱふゆりえっち先生とコミバ!? 行く行く絶対行く!」
急にルキヤが大興奮で掴みかかってきた。
「うわ、バカ離せ!」
「もしもーし! ボクも絵菜ちゃんもオッケーです!」
「そう、良かった。じゃあそういう事で、よろしくたのむわね」
ブツっ。
ルキヤの言葉を聞いて安心したのか通話を切られてしまった……。
「コミバ……? それ楽しそうだね♪ 私も一緒に行っていいかな? ねぇ絵菜ねぇ、いいよね?」
にっこり、というよりニヤリと笑うルミナに背筋がブルっとしたのは、私だけでは無かっただろう。
隣ではルキヤが顔面蒼白を通り越して土気色になっていた。
今回から新展開! まずはコミバ編です!
ちなみにコミバとはコミックバーゲンの略ですので(笑)
ルミナをメンバーに加えて今まで以上にカオスになっていきます♪





