第53話:新たな【同士】と人外。
もくもくまくまくとケーキを食べ続ける奈那はもう放っておいて、私は額に汗を浮かべているリーダーに向き直る。
「事情は……説明してくれるんだろうな?」
「えっ、えっ? これはその、お客さんにケーキを……」
「そりゃ見たら分かるんだよ! そんな事じゃなくて……お前確かケイジって言ったか」
「えっ、なんでお前俺の名前を……」
ケイジは目を丸くしながら顔についたクリームを拭おうとして、さらに顔をクリームまみれにする。
「そんな事はどうでもいい。ケイジ、なぜ私のお……」
「「「お……?」」」
何故か奈那やルキヤまでそこに食いついてきた。
「けふんけふん! なんで私の友達二人を無理矢理さらうような真似しやがった。返答次第じゃただじゃ済まさねぇからな」
「ま、待て! 待ってくれ! 二人をさらった!? 何の事だ!」
「しらばっくれるんじゃねぇぞゴルァっ!!」
私はあまりにムカついてテーブルをぶっ叩き、真っ二つにへし折ってしまった。
会議室とかでよく使われるような簡易的な奴だったとはいえ、物に八つ当たりはよくない。テーブルには悪い事をしてしまった。
「ひっ、なんて馬鹿力だっ!!」
「誰がゴリラだおぉん?」
「そ、そんな事言ってねぇよ! それより、さらって来たってのは何の冗談だ! 俺は本当に心当たりが……」
「てめぇまだそんな事を……」
バンッ!
その時、部屋の中に革ジャンおじさんと赤髪男が飛び込んできた。
「お、お前等……」
「リーダーを許してやってくれ! リーダーは何も知らねぇんだ!」
赤髪男が私の足元に縋りつきながら懇願し、顔をべしゃべしゃにしながら私を見上げて……。
「あっ、見え……」
即座に側頭部に蹴りをかまして部屋の隅まで吹き飛ばした。
「お、お前、俺の仲間に何をしやがる!」
「うるせぇ! 部下の管理も出来てねぇ奴に文句言う資格はねぇぞ! それを言うならこっちは友達二人もさらわれてんだ。文句あるなら死ぬ覚悟をしてから発言しやがれ!」
「本当にリーダーは知らないんだ! 俺とそいつで勝手にやった事なんだ……!」
革ジャンおじさんがその場に土下座して謝る。こいつまで私のスカートの中を覗こうとしたら躊躇なく蹴り飛ばそうと思ったけど、そんな事は無かった。
「おい……どういう事なんだ? お前等、この二人は俺の噂を聞いて尋ねてきてくれたって言ったじゃないか!」
ケイジが凄まじい剣幕で怒鳴る。どうやら知らなかったというのは本当らしい。
「す、すまねぇ! この前リーダーと一緒に古宿に行った時、一目惚れしたって言ってた女の子がを偶然大川で見つけちまって、それで……」
「無理矢理連れてきたのか……?」
「すまねぇ!! 許してくれぇぇぇ!」
「バカ野郎! お前等……お前等俺の事を考えてくれるのはいいが一般人に迷惑かけるなっていつも言ってるだろうが!」
ケイジは革ジャンおじさんにかけより、肩に手を置いて涙を流した。
どうやらいいリーダーって話は本当のようだ。
しかし、クリームまみれの顔で三角巾とエプロンじゃ締らない。
「どうやら君の言っている事が正しかったらしい。俺の仲間が失礼をしたようだ……本当にすまない」
「謝るのは私じゃねぇだろうが」
「そう、だな……二人とも、あこさんと奈那さんだったね。無理矢理連れてきてしまって本当に申し訳なかった」
「ボクにケーキを出さなかった事は許さない」
「ご、ごめん! 君の分はこれから作るつもりだったんだ」
おろおろしながらルキヤに頭を下げるケイジ。
これだけ規模の大きいチームのリーダーに頭を下げられるルキヤっていう絵面に違和感しかない。
「私はべつにいーよ? びっくりしたけどケイジさんいい人だしケーキ美味しかったし恋人が助けに来てくれたし♪」
「こ、こいび……と?」
ケイジが顔を歪ませながらゆっくりとこっちを見つめてくる。こっち見んな。
「……そこに居る奈那は私の彼女だ。文句あるか?」
そう言いながら拳を顔の高さまで掲げる。
「い、いや……それは、本当にすまなかった。むしろそういう世界が現実にあると知れて良かった」
……ん? その反応は何か違わないか?
ルキヤがリーダーにとことこ近付いて肩を叩く。
「気を落としちゃダメだよ。世の中にはこういう世界もあるんだよ。それに、それはとっても素敵な世界なんだ。君にはきっと素質があると思うよ」
「あ、あこセンパイ……!」
なんだコレ……。
「あー美味しかった♪ 絵菜ちゃーん、一口残しておいたから食べて! はいあーん♪」
いきなり目の前にケーキ出されたからついパクっとやってしまった。
「ほら、アレを見てよ。……君もああいうのが好きなんでしょ? これからゆっくり理解を深め、沼にハマろう」
「お、俺……正直になってもいいんでしょうか」
「我慢する事なんて無いんだ。ほら、もう君も尊さが膝に来てるじゃないか。ボク達は同士だよ」
「パイセン!」
「ケイジ君!」
がっしりと二人が握手を交わすのを、奈那はきょとんと、意識を取り戻した赤髪と革ジャンおじさんは号泣しながら、そして私は……。
やっぱり、なんだコレ……と見つめていた。
それとこれは余談なんだけれど、二人を取り戻し外に出た私が目にしたものは……。
ボコボコにされたジョージとアキオ。
あとおびただしい数のドールズの人達。
そしてそいつらの山の上で胡坐をかきタバコをふかしているうちの担任兼保険医だった。
「おう、遅かったな」
マジでこいつ人間じゃねぇ。
ルキヤに新たな同士現る!(笑)





