第36話:【すれ違い】【勘違い】【もう戻れない】。★
ああ気が重い。
また朝が来てしまった……。
でもそろそろ私だって動かないとダメだよなぁ。このままの状況がずっと続くなんて精神的にきつい。
奈那との関係は早めに修復しておきたい。
かといって、奈那とまともに話そうとしても彼女は今私を極端に避けてる。
きっと話があると言っても逃げられるだろう。
だったら、逃げられない状況を作るしかない。
卑怯だし、最低のやり方だけどとりあえず逃げ道を封じないと話すらできない。
教室で堂々と話をすれば会話はできるだろうけど、周りに人が居る状況で話す気にもなれないし、こんなやり方を選んでしまった事を許してくれ。
あれこれと自分に言い訳をしながら、私は一時間目の授業に少し遅れるくらいの時間に登校し、奈那の下駄箱に手紙を放り込んだ。
架空の人物からのラブレターを。
奈那はとても優しいから、誰から呼び出されてもちゃんと会いにいくしきちんと向き合った上で断る。
私はその優しさを利用した作戦を立てた。
我ながら恥ずかしいし情けない。
今日は一日授業がまったく頭に入ってこなかった。
いや、普段なら頭に入ってくるかと言われるとそれはまた別の話なんだけど……。
とにかくルキヤの冷ややかな視線を無視しながら放課後までつまらない授業を耐え忍ぶ。
明らかに奈那がそわそわしている様子が見て取れたので、昼休みあたりにあの手紙に気付いたんだろう。
奈那が動きやすいように私は敢えて鞄を担いで帰る振り。
隣の教室に入って知り合いに声をかけ、用事を装って奈那が廊下に出てくるのを待った。
五分程待っていると奈那が周りを気にしながら廊下を速足で進んで行って、窓から覗いたら階段を上がっていくのが見えた。
どうやらちゃんと手紙は読んでくれたようだ。
手紙に書いた内容は、ごく平凡な物。
夕張奈那様へ。
毎日貴女の事を考えて夜も眠れません。どうしても直接伝えたい事があるのでどうか話すチャンスを下さい。
もし来てくださるのなら今日、放課後に屋上で待っています。
宮本。
なんで宮本かっていえば私が佐々木だから。佐々木の対になる苗字は宮本でしょ。
小次郎の対は武蔵だよね。って事。
少し間を置いてから私も屋上へ向かう。
どうして呼び出しておいて屋上で待ち構えないのかと言えば、私に気付いた奈那が逃げ出す可能性があるから。
屋上に先に行かせておいて私が後から行けばもう逃げ場はない。
必ず今日ケリを付けてやるぞ。
どうして私を避けてるのか理由を聞き出すまで返さないからな。
ドキドキする胸を押さえつつ、三回深呼吸してゆっくりとドアを開ける。
あれ、奈那の姿が見えない。
まさか屋上じゃなくてどこか違う所に行っただけだったのか?
私は屋上に出て数歩進んだ所で後ろから声をかけられた。
「遅かったね絵菜ちゃん」
「ひゃあっ!?」
どうやら待ち伏せされていたのは私の方らしい。
「絵菜ちゃん……さすがに絵菜ちゃんの書いた文字くらい分かるよ……しかも宮本って」
そう言って奈那がくすくすと笑った。
「ば、バレてたのか……だったらどうしてここに来た?」
「その前に聞かせて。あの手紙読んだんだけど……あれってどこまでが本当?」
どこまでが本当?
私は一瞬何を言っているのか分からなかった。
奈那は私が書いた手紙をひらりと広げて、読み上げる。
「直接伝えたい事があります。は本当かな?」
「ああ、今日は奈那ときっちり話をしようと思ってきたんだ」
「あのね、それだったら……その、えっとね」
急に奈那の歯切れが悪くなる。
「毎日貴女の事を考えて夜も眠れません……っていうのは……?」
「はぁ? そりゃ本当だよ。私がどれだけ辛い思いをしたか……」
「そっか、本当……なんだ?」
奈那が顔を真っ赤にして俯いてしまう。
……私は今、何かとんでもない失敗をしたんじゃないか?
「これって、そういう意味……でいいんだよね?」
「待て、ちょっと待て奈那。そういう意味、っていうのは一体全体どういう意味でしょうか!?」
「今更誤魔化すのは酷いよ。私、覚悟して来たんだから」
「覚悟ってなんの!?」
まずい。流れがおかしい。
「あのね、私はからかわれてるかもって思ってたよ。だから傷付く覚悟もしてきた。だけど、もしかしたら……絵菜もそういうふうに思ってくれてたんだったらってどこかで期待してたの……本当に嬉しい」
「えっ、ちょっと……奈那?」
ダメだこれ!
今更そういう意味じゃないって言える空気じゃないぞどうするんだ……!!
その時、うっすらと屋上のドアが開いているのに気付いた。
そして、その隙間からルキヤが目を真っ赤にしてこちらを凝視しているのも。
私はルキヤにアイコンタクトを送る。
なんとかして助けてくれ!!
しかしルキヤはこちらに向かってグッと親指を立てるだけだ。いわゆるサムズアップというやつである。
「な、奈那……! 私は、その……」
「分ってる。絵菜ちゃん奥手なタイプだもん……当分はこのままでいいよ。気持ちが通じてるのが分かっただけでも私は今人生で一番幸せだから」
詰んだ。
「あのっ!! 奈那、聞いてくれ!!」
「はい♪」
ぐぅっ!! 笑顔が眩しすぎる……天使か……。
「そ、その、あのな? 私、実は奈那に……」
「なぁに? ちゃんと聞かせて」
奈那は距離をぐっと詰めて、私の手を両手で包み込んだ。
「そ、その……お友達から、お願いします」
「えっ? あははっ♪ 絵菜ちゃんってばおっかしい。私達とっくにお友達でしょ? これからゆっくり進んでいこうね♪」
そう言って奈那は私のほっぺにキスをした。
奈那は固まる私からゆっくり唇を離し、瞳に滲む涙を指で拭いながら照れたように笑う。
この瞬間の彼女は間違いなく私が知っている誰よりも、最高に綺麗だった。
だがしかし。
……マジかよどうすんだこれ。
絵菜はちゃんと奈那の事好きですが、それが友達なのかそれ以上なのかは分かってない状態です。
奈那は完全にその気になってしまったので今後更にグイグイ来るでしょうが、それにより意識が変わってくるのか、やっぱり違うな……となるのか。
そしてルキヤとの関係はどうなるのか? 今後も見守って頂けるとありがたいです☆彡
追記 第34話:悪魔的【エロさ】と水着の紐。
に挿絵を追加しました。
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