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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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214.「ちょっとシャワー浴びてくるから」

 止めようがないのでアルバムをテーブルに置いて二人の後ろから画面を眺める。

 小学校の運動会か何からしい。

 体操着を着た子供達が画面一杯に駆け回っていた。

 ビデオカメラで撮っているのか。

 この頃はまだ両親も僕に構ってくれていたんだよね。

 ていうかこの年齢で育児放棄したら下手すると犯罪だよ。

 でも誰が撮影しているのか知らないけど下手だった。

 画面は揺れまくっていて安定しないし、そもそも僕がどこにいるのかよく判らない。

 素人が家庭用ハンディビデオカメラで撮っているのが丸わかりだ。

 親父かなあ。

 母さんかも。

 露出や逆光の事をまったく考えないで撮っているみたいで悲惨な動画だったけど、そのうちにかろうじて僕らしい姿が判るようになった。

 だって遠景ばかりで豆粒みたいな人影がよろよろ動いているだけなんだもん。

 もちろん僕にはこんなことをしている記憶がまったくない。

 なのになぜ僕だと判るのかというと、子供達の中で一番小柄だったからだ。

 この頃から小兵だったのか。

 しかもあまり動きが良くない。

 というよりは鈍い。

 25メートルだか50メートルだかを走るのにみんなに置いてかれてラストでゴールインしていたりして。

 綱引きとか玉入れの映像もあったけど、集団で動かれたらもう判らなかった。

 撮っている方も判っていたのかどうか。

 ひょっとしたら適当に撮影していただけなのかも。

「あっダイチ様が転びました!」

「すぐにぃ立ち上がりましたぁ。

 さすがですぅ」

「ラストになっても諦めないで全力で走り抜けるなんて。

 素晴らしい」

「大器の片鱗がぁ感じられるですぅ」

 もう止めて(泣)。

 それにしても二人ともよく判るね?

 僕自身だって僕がどの子なのかあやふやなのに。

「どの子が僕なのか判るの?」

 聞いてみたら平然と返された。

「この子です!

 ダイチ様そっくりです!」

 いや小学生とそっくりと言われてもね。

「オーラが出てますぅ。

 見間違いようがないですぅ」

 そうかなあ。

 まあいいや。

 過ぎた事だ。

 子供時代も恥ずかしいDVDを見られた事も。

「それもいいけど見つかったよ。

 僕の卒業アルバム」

 仕方なしに生贄のつもりでDVDとはまた別の僕の恥ずかしい過去を捧げる。

 卒業アルバムなら小学校の体育祭よりはマシだろうと思ったんだけど。

 甘かった。

「わあ!

 中学生のダイチ様!

 凜々しい!」

「真面目な矢代先輩の顔ぉ、初めて見たですぅ」

 何だと信楽さん。

 いつもの僕が不真面目だとでも言うのか。

 否定出来ないけど(泣)。

「私もダイチ様と一緒に学生生活を送りたかったです!」

 いや、比和さん忘れてるみたいだけど僕たち高校2年と3年で同級生(クラスメイト)だったよね?

 厨二病が発症するまでは僕の事なんか認識してなかったと思うけど。

 もちろん言わないよ?

(当然だ。

 このメイドさんは確実に泣くぞ)

 判ってるよ!

 すると信楽さんが小学校の卒業アルバムの後ろに載っている「卒業にあたって」のページを見て言った。

「小学校卒業時のぉ決意表明もぉ凄いですぅ。

 さすがはぁ矢代社長ですぅ」

 そんなのあったっけ?

 慌てて覗き込んでみたら、卒業生全員のメッセージが載っていた。

 とは言っても3行くらいで要するに将来何がしたいとか何になりたいとか、そういうものだ。

 こんな爆弾()を見逃していたとは!

 どうしようもなく見守る僕の前で信楽さんは高らかに読み上げてしまった。

「ぼくは将来、色々やってみたいです。

 さしあたっての目標は会社の社長や大学の先生とかです。

 6年3組矢代大地」

 終わった。

 小学生の僕、何考えてたんだよ!

 馬鹿じゃないの?

「素晴らしいです!」

 一瞬の沈黙の後、比和さんが叫んだ。

「ダイチ様はこんなに幼い頃から将来を見据えていたのですね!

 しかも両方とも十代のうちに実現してしまった!

 感激です!」

 何で比和さんが感激するんだろう。

 意味不明だよね?

(色々あるんだろうさ)

 無聊椰東湖(オッサン)も訳が判らない事言ってないで。

「矢代社長ぅ。

 ここまでとはぁ思ってなかったですぅ。

 最高ですぅ」

「ダイチ様!

 一生ついていきます!」

 テンション最高潮のまま頬を染めて叫ぶ比和さんと珍しく潤んだ瞳で僕を見る信楽さん。

 何がこの二人を感激させたのか判らないけど、とりあえず拙いという事だけは判った。

「まあ、子供の言う事だし」

「だから凄いんです!」

「言うのはぁ誰でも出来ますぅ。

 本当にぃ実現させてしまう人は滅多にいないですぅ」

「いや、だからそれは僕がやったんじゃないでしょ。

 比和さん知ってると思うけど、そもそもは黒岩くんが」

「はい!

 私の我が儘をダイチ様が聞いて下さって!」

 そうでした。

 確か比和さんがメイドをやりたいとか言い出して、それから全てが始まったんだったっけ。

 いや比和さんの希望を我が儘というのは違うんじゃないかと思うけど。

「それはぁ知らなかったですぅ。

 矢代興業のぉ発足当時のことですかぁ?」

 信楽さんの疑問に比和さんが飛びついてしまった。

「そういえば信楽殿は矢代興業が出来る前の事は知らないんですね。

 素晴らしかったです。

 ダイチ様がいなければ私たちは今頃」

「興味深いお話ですぅ。

 教えて欲しいですぅ」

「喜んで!」

 勝手に盛り上がる二人。

 僕、いなくてもいいよね?

「ちょっとシャワー浴びてくるから」

「はいですぅ」

「お帰りをお待ちしています!」

 ごく自然に送り出されてしまった。

 もういいよ(泣)。

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