表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロジェクト・アーミー  作者: ダルキ
17/31

第15話

「敵は密集陣形で備えています」

「そのようだな……」


 チラリと画面端に映るレーダーを見て、CPUのセオリー道理の戦法に口元が緩む。

 こんなのが、カルミアの相方を決める試験だなんてな。

 AWP-07Fの力強い足が土を舞い上がらせ、軽快にコンクリートの壁を縫うように駆け抜けていく。

 走っているだけで分かる。機動面、武器の積載量、それを支えるフレームは確かに06以上だ。

 だけど、機体がピーキーなのは否めないな。

 機体の反応速度を直す為とはいえ、かなりピーキーな機体になってしまった。

 だが、今はベストを尽くしてデータを得るだけだ。

 その為にも──まずは目の前の敵だな!

 巨大な壁との間を通り抜けると、正面にはまたしてもコンクリートの壁が立ちはだかっていた。


「琴美祢様、この壁の先に敵4機が待ち構えています。

 壁の横から攻撃する場合、シールドを正面に展開し攻撃を凌ぎながら攻撃することを推奨します」

「いや、シールドは左右に展開しろ」

「左右ですか? それでは、正面から敵の攻撃を受けることになりますが?」

「問題ない、何故なら……」


 走るスピードを上げ壁に突進していく。


「壁は飛び越えても通れるからな!」


 迫り来る壁を前にした直後、片足に力を込める。

 壁の高さは約15メートル。06じゃこの高さを飛ぶのは難しいが、この新型の性能なら……!


「いッけぇぇぇッ!」


 片足に込めた力を全力で使いかっ飛ぶ。

 機体はその巨体をものともせず、コンクリートの壁を悠々と越え、敵が密集している中央へと降り立つ。

 コンクリートの壁を背に預けて敵は固まっていた。

 つまり俺は、敵が一番警戒していない位置へ簡単に入れ込めたことになる。


「まずは、1つ!」


 敵の背に銃口を向け引き金を引く。

 直後、銃声を轟かせ敵の背を40mm弾が食い破る。

 穴だらけになった06が無気力に膝を着くのと同時に、入り込んだ(おれ)に気づいた3機の銃口がこちらに向く。

 敵の銃口が火を噴く。豪雨のように力強い弾幕を両脇から受ける。

 だが、それは展開していたシールドが全て受け止めていた。


「ナイスだカルミア」


 素早く周りを見渡す。

 右側に1機。左側に2機。

 シールドをほぼゼロ距離で撃ち続ける敵は後だ。

 メインモニターの端に映る敵。少し離れているが、奴を先に殺るか!

 シールドの間から銃口を突き出し、左側に立っていた敵に照準を付け。

 引き金を引く。

 敵の銃声に交じって3発の弾丸が敵に放たれる。


「──2つッ!」


 確かな手応えに笑いが込み上げる。

 敵の硝煙に風穴を開け、3発の銃弾がコックピットを貫く。

 銃撃を始まって、10秒くらいで敵の銃声が止んだ。どうやら弾切れの用だ。

 機体の両脇に展開されたシールドのおかげで、こちらのダメージは皆無。

 とはいえ、弾を最初の一機に使いすぎた。残弾が少ない。

 それならと、銃に添えていた左手で、腰に備えられたブレードを抜く。


「これで、3つ!」


 左向き様に一閃。

 近くに居た敵の脆い腰をブレードで切り裂く。

 上半身が滑り落ち、地面に残骸を露にする06。


「最後!」


 機体を素早く回頭させ最後のターゲットに向きを変える。

 メインカメラに敵の姿が映る。

 だが、一足遅かった。最後の1機はマガジン装填を完了して、再びこちらに銃口を向けていた。

 避けるスペースも切りつける時間もない……。


「なら、こいつでどうだ!」


 右手に装備したままのライフルが敵の片膝を狙い火を噴く。

 40mmがたったの2秒だけ轟音を立て、撃鉄がカチッと虚しく鳴り響く。

 だが、流石対2足歩行兵器のメイン武器というべきか。

 数発でしっかりと脚部のフレームを破壊し、敵を地に這いつくばられせた。


「終わりだ!」


 サーベルを上に掲げ、振り下ろす。

 コックピットをサーベルが貫き、敵の動きが完全に停止する。


「終わったか?」

「いえ、まだです」


 画面端のレーダーに、一機の機影が移っていた。

 それは、壁をすり抜けて一直線にこっちに向かって来ていた。

 バグか?


「……いや、違う!」


 正面のコンクリートの天辺を見上げる。

 すると、突然それは姿を現した。


「なッ!」


 驚きで一瞬言葉が詰まる。


「07だと‼」


 分厚い装甲。ライフルを持つ4本の腕。

 それは、まさしく07であった。

 マズい!

 敵の姿に気を取られすぎた。

 敵は既にライフルを構えていた。瞬時に回避行動をとろうとするが、既に手遅れ。

 空中に居るにも関わらず、敵はしっかりとこちらに照準をつけていた。

 やられる⁉


「琴美祢様、そのままで動かないでください!」


 カルミアの指示に足を止める。

 直後、敵が持つ4丁のライフルが火を噴く。

 それと同時に、こちらの07に備えられていたシールドが本機を守るために構える。

 銃弾がぶつかる事に鳴り響く金属音。その衝撃がコックピット内にまで伝わる。

 敵は地面に着地するが、集中弾を浴びせてくる。

 これが、新型の性能って奴なのか⁉

 だが、それも長くは続かず、敵の銃声が止んだ。

 弾が切れたか?


「カルミア、シールドをどけてくれ!」


 カルミアに命令すると同時に、ライフルを捨ててサーベルを構え敵に向かって突っ込む!


「これで、どうだ!」


 敵に近づき縦に一閃。

 が、敵はメインアームの2丁のライフルを犠牲にして身を守る。

 マガジンが持てないこの機体には、弾切れのライフルなど無用ってか。


「ッ!」


 気づけば敵はサブアームで大型サーベル抜いていた。


「(マズいッ!)」


 後ろに跳び敵との距離を取ろる。

 その間に、敵は大型サーベルをメインアームで構え、サブアームで腰のサーベルを構えていた。

 その姿は、さながら阿修羅だ。

 だが、ここで負ける訳にも、長期戦をする訳にもいかない。

 カルミアに負担をかけさせてしまうが……やるしかない!


「カルミア、守りは任せた。速攻で片をつける!」

「了解」


 速攻で終わらせる!

 機体を走らせ再び敵との距離を縮める。

 敵は大型サーベルを右に構え、サブアームのサーベルを上に構えこちらを迎撃する構えをとる。

 接近戦において、大型サーベルの扱いは難がある。

 当たれば大きなダメージを与えられるが。

 その武器の重量はすさまじく。今までの機体では当てるのは困難だった。

 だが、新型(こいつ)なら話は別だ。

 こいつのパワーがあれば、大型サーベルは最強のメイン武器になる。

 だけど、相手はCPU。攻撃パターンは決まっている。

 俺が近づいてからの横一線、外せばサブアームで近寄らせない。

 そんな所だろう……。


「動きが分かっているなら対処できる!」


 敵との距離が近づく。

 その直後、敵の横一線が迫る。

 思っていた動き、ドンピシャ! これなら避けられる!

 足を止め後ろに下がる。直後、敵の横一線が中央で止まる。

 なんでだ? なんで、止まっ、た……。

 敵のサーベルの切っ先が一瞬後ろに下がったと直後だった。

 切っ先が伸びた。

 敵が横一線から突きに変えたのだ。

 サーベルの剣先が胸部めがけて近づいてくる。

 

「まだ、だ‼」


 右肩を斜め後ろに振り、その反動で機体が斜めに体制を崩す。

 機体の反応を上げた甲斐があってか。大型サーベルが胸部装甲の表面を削りながら抜けていく。

 片足で地面を蹴り敵との距離を更に取った。


「あ、危なかった……」


 まさに、間一髪。紙一重で躱せた。

 サイガ達との特訓が無かったら今ので終わっていたな……。

 それにしても──あの07の動き、本当にCPUかよ?

 冷や汗を流しながら敵を睨みつける。

 07(てき)はこちらに体制を戻すと、ゆっくりと同じ構えをとる。


「掛かって来いってか……」


 その構えから先程とは違う、何か異様なものを感じられた。

 これは、昔感じたことがある。1度だけ、そう。仲間が殺されたあの時に感じたもの。

 ()()

 こいつはCPUじゃない。ふと、そう思った。

 いや……感じたと言った方が正しいだろうか。

 じゃあ、どうするか? そんなの決まっている。

 さっさと、(こいつ)を倒す! これ以外に考える必要なんてない!


「カルミア。頼みがある……」

「はい、何でしょうか?」


 奴に勝つには、


「装甲を全部、パージしてくれ!」


 これしかない!


「了解。装甲をパージします」


 カルミアの返答と同時に、機体を覆っていた装甲が勢いよく剥がれ落ちる。

 すべての装甲が外れ、07本来の姿が現れた。

 先程とは打って変わって、かなり細い姿。

 肘や膝、腰回りのフレームが露わになっている。

 確かに装甲は薄いな……。でもこれで──軽くなった!

 ブレードを構える。


「押して参る!」


 高揚する気持ちをふざけた口調で表し。敵に向かって突進を始める。

 軽い、さっきとは段違いだ。軽くなった機体を駆り敵めがけて突進を続ける。

 敵は先程と同じ構えで、俺の出方を待っている。

 このまま突撃すればさっきと同じだろう。

 だから、どうした! さっきと同じことをしてくれるならこっちも好都合だ!

 更に敵に近づく。

 もっと、だ。もっと、近く!

 敵との距離がさっきと同じくらいまで近づく。

 だが、俺は後ろには跳ばず、更に1歩踏み込む!

 もう、後ろに下がっても横一閃は避けられない。

 でもそれでいい!

 敵が大型ブレードを横に振る。

 ──もう、下がる必要なんてないんだからなッ!


「頼んだぞ、カルミア!」


 左画面から見えていた大型ブレードの刃が、シールドによって遮られる。

 直後、重たい金属音を響かせて大型ブレードがシールドを直撃する。

 その間に、俺はサーベルを敵の頭部に向けて突き立てる。

 だが、それをさせまいと、サブアームのサーベルを縦に構え剣先の軌道を変える。

 続いて、空いているサブアームがサーベルを高々と振り上げる。

 刃が下を向いている。頭部の関節を狙ってコックピットを狙っているのか?

 でも──。


「こっちにも手はある‼」


 手に持っていたサーベルを離す。


「ナイフ射出!」

「了解」


 腕に内蔵していた電動ナイフのハッチが開きナイフを射出される。

 それを受け取りなり、ナイフが振動を始める。


「これで、どうだ!」


 敵の胸部めがけて振動するナイフを突き立てる。

 ガリガリ金属を削りながら敵の胸部を掘り進んでいく。

 やがて、刃が全て入り込み、それ以上進まなくなった。


「……」


 チラリと敵の顔を見る。

 07のツインアイがチカチカと数回点滅し、やがて光を失う。

 機体の首がガックリと落ち、力なく膝を着きこちらに寄り掛かる。


「終わった、のか?」

「はい、敵は完全に機能を停止しています。

 敵増援の気配もなし。戦闘終了のようです」

「そう、か……」


 勝利したことに安堵して力が抜ける。

 それにしても、こいつは一体何だったのだ?

 さっき感じた殺気といい、こいつは一体……。

 画面に映る07を見ながら考えていると、トーレスの声が飛び込んできた。


≪お疲れ様。お陰様で良いデータが取れた。

 テストシステムを終了させ、倉庫に戻ってきてくれ≫

「了解。戦闘終了。これより1番倉庫(ハンガー)に帰還する。

 カルミア。システムを切って、サブアームも閉まってくれ」

「了解しました」


 システムが切られ、サブアームも折りたたまれ元の位置に収まる。

 俺は捨てた武器を拾い、倉庫へと向かった。

次回、プロジェクト・アーミー第16話

琴「終わりがあれば始まりがある。

  始まりがあるからこそ終わりがある、か」

カ「琴美祢様は、まさにそれですね。尊敬します」

琴「いや、俺もできれば休みたいんだけどな」

カ「まさに社畜の鏡です」

琴「それ、褒めてるの?」

カ「胸を張っても良いと思います」

琴「そうか。なら次回も頑張るかな」

カ「よろしくお願いします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ