覚醒、受け継がれた能力
「あの……俺……」
「どうしたの?」
「眠たくて……」
「ああー、いいよ。私が見ておくから、とりあえずねんねなさい」
「ありがとう」
「気にしないで、変に遠慮されるよりは、好き勝手してくれた方が、私は生きやすいから」
「じゃあちょっと聞きたい事があるんだけど……」
「何?」
「何で二人共、俺にこんなに優しくしてくれるの?俺、強くなんかないし、言葉だって喋れなかった。何も返せないかも知れないって考えると……」
出来るだけ言いたくはなかった。
仮に見返りでも求められていたらと思うと、今まで受けて来た恩は一生かけても返せない。
葉を伝う雫一滴程の価値もない自分に、何が出来る?
だけどもスイは、シキの手を握って即答する。
「よくもまあ子供のくせに余計な事を考えるわね。でもまあ、そんな事を気にしてるなら、教えてあげる」
絹のように、滑らかな肌触りのする手だった。
「特に意味はないかな」
「へ?」
「強いて言うなら、一人しか子供が作れなかったから、しっかり者の兄弟分にでもなってくれればいいかなーって」
言っている意味がよく分からなかったが、これがスイと言う人間なのだ。
スイは続けてこう言う。
「この街は何でもあるの。食べ物も、武器も楽しみも。不自由はしないわ。でも希望がない。そして四季がない。ずーっと暖かい。ナイトメアはヒトを恐れているし、ヒトは迫害を受けているのに、何もしない。一応の生活は出来るから」
「ナイトメアの人々は希望を潰したくて、きっとシキ君は狙われていた。明るい日も雨の日も、寒い日も暑い日も、私には必要だから、多分花を育てているような感じかなぁ」
その言葉の意味は、シキには分からなかった。
「あっ」
ふいに引っ張られる。
引き寄せられて、スイの胸に頰があたった。
腕が背中に回り、抱きしめられる。
白い綿シャツを通してシキの頬にスイの燃ゆる魂と鼓動が伝わる。
「貴方は生きてね、そして、起きてからでいいからユイちゃんのお守り、頼むわよ」
「うん」
彼女からは、庭先に咲く、いっぱいの植物の匂いがした。
太陽の光にあたりながら、花の手入れをしていたからだ。
シキはその後、布団に潜る。
そこでシキは。
「うっ……ううう……」
思いのままに目頭を熱くし、心のまま泣いた。
幸せだった。
二人が彼を受け入れた日まで覚えて、それを記念だと言っているのだ。
好き合っている二人を眺めているだけでも気持ちが良かったのに。
この感情、どうしたらいい。
沢山与えられたこの気持ちを、どうにかして少しずつでも返していくつもりだった。
そうだ、これから少しずつ、この家の庭の周りに、花の種を蒔こう。
二人は花が好きなんだ。
この街には季節はないけど、花は四季の到来を教えてくれるから。
あと、剣が使えて、自分一人でもナイトメアを追い払えるくらい、強くなろう。
守りたい大切な存在と、出会うことが出来たのだから。
しばらく泣き腫らした先、気づけば布団の中で眠る。
「ん……」
いやに部屋が暑く、汗だくのまま目を覚ます。
いつもの暑さじゃなかった。
肌がピリピリするような熱だ。
「う、おお……」
焼ける。
異常性を感じる。
この家全体に赤みが出来る程だ。
これはシンマネだ。
いくつも散りばめられた力が空間の色を変えているのだ。
「すい……ゆい!」
シキは寝間着姿のまま二人のいるリビングへ向かう。




