崩壊16
シキはイラついているのだろう。
頭を揺らしながら、肩を震えさせながら前を歩いている。
泡食いそうなほど慌ててしまう私とは正反対な程に、彼はそんな事は気にも留めないといった様子で話しかけてくる。
「実は君の戦い方、しっかり見ていたんだ。昨日は本当に色々試していたんだろう?力を発揮出来る機会があまりないと思って」
「あ、うん」
「大切にするといい」
「大切に……?」
「うん。力は使い方だよ。ユイにはそれを伝えたい」
「無理だよ。この力、どこまで行ってもみんなを不幸にし続けてるもん……私だって、みんなと同じように、シキくんのように、しっかり修行して、普通の力を身に付けて、みんなを守りたかった」
「物心ついた時から故郷の人達にはひどい事ばかり言われるし。煙たがられるし、私のことを庇ってくれたジャンヌは何処かにいなくなっちゃったし」
「だから必死にあの街を守ったの。ナイトメアブレーキを追い払えるのは私だけだって言うから。だけどいつの間にか街は滅んでいたみたい。きっと私の力が原因なの、なんとなくわかるんだよ。なんでこんな力が私にあるの?他にいるの?私のような人やナイトメアが……」
あれ……
「すごく、辛かった……」
なんで私、こんな年下の子に愚痴を……?
「……うん、知っているさ」
「えっ?」
「こんな話を知ってる?まだ邪悪な心がみんなの中に存在しない頃、開けてはならないとされていた一つの箱があった。だけど一人の男が箱を開けてしまった。中から出たのは、あらゆる邪悪な心。嫉妬、ねたみ、独占、破壊、支配、だけど、箱の奥に一粒の光が残っていた…」
「光……?」
「それがユイだとしたらどう?」
「君は世界に残された最後の一粒。「希望」という名の一粒の光だよ」
「大袈裟な……」
「僕はそう信じてる。この世界は戦いに満ちてるけど、結局の所、誰かがそういう箱を開けてしまったんだ」
「なんで、そんなに私の事を……」
「僕は君に会う為にここまで来たんだよ。言ってしまえばオルレアンに向かうのはついでなんだ」
彼は太陽みたいに笑った。




