崩壊11
「朝……だよな」
時間の経過がわからない。
何せ立ち乱れた自然に阻まれて、日があまり入らないからだ。
箱庭のように細かく美しい自然とは真逆で、立ち並ぶ植物は仰々しくも、雄々しくそこに在る。
身支度を整え、部屋を後にすると、二の腕が服から出るまで天めがけて手を伸ばしているユイが夜の時のベンチに腰掛けていた。
「よく眠れました?」
「うん、疲れてたから」
「お代?ああ結構だ。お前さん、野良ナイトメアがめっちゃくちゃ来たのに追っ払ってくれたんだろ?ありがとうな」
「いえ、泊まる所が無くて困っていたのでイーブンです!」
「すまねえな、ブローディアに住んでる連中は嫌に排他的っつーか、力のある奴には近づきたがらねえんだ。盛大にお礼と行きたいんだけどよ」
「イーブン!」
二人で宿屋を後に、出発する。
「そう言えば、オルレアンへの行き方を聞いてみたんですけど」
「うん」
「この森の出る方法が分かっただけでした」
「ええ〜シキくーん……」
「よそよそしい感じはしてたんですけど、どうにも本当に知らないみたいで」
『僕が教えてあげるよ。お二人さん』
その声は先ほどまで寝ていたユイにとって、半分夢のような温かさで、目を瞑るとまるで柔らかに包まれているような心待ちにさせる声だった。
「子供……?」
「昨日会った人だよね」
ユイと同じ、銀の髪を持ち、日のあたり具合なのだろうか、少しだけ水色っぽく見える。
あの時の少年だ。
「うん、そうだよ。僕もそろそろ帰りたいんだけど、一人じゃ野良ナイトメアには心許なくてね。案内ついでにオルレアンに帰りたいんだ」
「お前、オルレアン出身なのか?」
「そうなのさ。故郷がめちゃめちゃになって、当て所なく迷ってたらここにたどり着いてさ、何とかここで暮らしてたんだ。君達に会えたのは運命だよ。ユイ、シキ」
「ユイさん、昨日のって言ってたけど面織があるんすか?この子供、なんか怪しいぞ……」
「いや、名乗った覚えはないはず……」
街が崩壊した頃ってのは俺たちが年端もいかないガキだった時だ。
こいつの言ってる事は辻褄が合わない。
オルレアンから抜け出した年頃の俺たちと同じくらいにしか見えないんだからな。
「まーいいじゃないいいじゃない。連れてってくれても」
「悪いけど俺たち、今は子供一人だって守ってやれるような状況じゃねえんだ。さっさとオルレアンに行かなくちゃならねえんでな。行き方だけ教えてくれよ」
「態度悪いなぁ。別に君達、弱そうにはとても見えないよ。焦ってるんでしょ?」
小利口で生意気そうな子供という訳ではない。
かと言って西も東も分からない子供でもない。
謎の落ち着きと、まるで物語風の風情があった。




