アルフレーガシ2
「待て!お前ら!」
襲撃に失敗したら、逃げるのは当たり前だった。
彼に限っては。
恐らくシキに関する情報は、既にブレーキ達には伝わっている。
正面からのぶつかり合いならば、リベールの感知力とシキの腕前が合わさって敗北を強いられてしまうだろう。
不意をついてあわよくば始末するのが常套手段である。
だから逃したら、また何度でも襲いかかって来るだろう。
それでも。
「最初にやられた奴を置いて逃げる気か?情けねえな、ブレーキ連中が聞いて呆れるぜ。アゲハにも伝えておいてやろうか?」
『ああ?そいつはてめえが殺っちまっただろうが!』
「姿は木に化けていたから自信はない、だが多分急所は外した。逃げるならこいつを連れて逃げろ」
『うぅ……』
確かに、最初に刺されたナイトメアブレーキには息があった。
『ま、マジかよ……嘘なんかじゃねえみたいだな……』
『スキありぃ!』
シキの温情を遮るように、さらなる敵が空中から迫る。
背後に仰け反り素早く定点攻撃を躱すが。
拳が地についた瞬間、地が響き、乾いた土に大きくヒビが入った。
直撃すればやられていただろう。
それを見た燦は怯え、恐れた。
今までただのナイトメアが複数、意志あるナイトメアとの一騎打ちはあっても複数の意志あるナイトメアが襲ってくることはなかった。
連携をとって襲ってくる敵の恐ろしさを肌で感じた。
最後に襲ってきたナイトメアはシキにすかさずその豪腕を振るう。
『るおおおおおお!!』
シキは持ち前の武術、その独特な構えは肘を曲げ、腕を短くその豪腕を器用に捌いた。
パンチともエルボーともつかない拳の払い方は、一度手合わせした燦にはとても無駄のない動きに見えた。
柔よく剛を制する。
チカラを込めた拳が力まない拳に次々と払われていく。
しかし流石はナイトメア・ブレーキ、攻撃の手が緩まない。
シキは一発も喰らいたくない。
『当たらねえ……この野郎ォ!』
視覚情報に頼らず、接触感覚に全てを捧げなさい、というのはこの武術を教えてくれたジャンヌのアドバイスだった。
「重い拳だが、使い方が悪い!失せろ!」
シキの細やかな手技に軽々と絡め取られ、鼻元に一撃をもらった。
ひたすら相手に攻撃をさせ、それを受け流し、素早い反撃をする。
見事な技だと燦は思った。
そして、彼はどんな状況でも敵の存在を意識し、すぐ対処できるよう考えている男だと。
「もう帰れ、帰ってアゲハに伝えろ。大人しくしてろ、とな」




