アルフレーガシ
もう帰りたくなっていた。
空は変わらず青く、見知らぬ彼方に孤独を感じていた。
あまりの青さに心が吸われていき、不安に散らされる。
目を覚ますと、泣いている。
こんなのばかり、最近起こるようになった。
桜吹雪の更に奥地に潜む、たった1人のナイトメア・アクセルによる力で栄える街
「アルフレーガシ」
厳かな神秘さが漂うこの街に、始まりを告げる風が吹き荒ぶ。
「もうちょっと仲間を連れていけば良かったんじゃない?」
「るっせえな。桜吹雪が俺らの拠点なんだよ、要となる場所を守るのが一番大切だ。そんな事もわかんねえのか」
「そっか」
悪態をついてくるシキの若さを微笑みにも似た表情で流しつつその行き先を案じる燦。
2人は仲間を集める事、及び母との再会を狙ってアルフレーガシへ向かう為、森の中を進んでいた。
そんな折、シキはしきりに目を瞑っては感覚を研ぎ澄ませていた。
「まー僕はこの世界ではお尋ね者に違いないし、色々見て回るのも悪くないな」
笑いながら頭の後ろで手を組みながら歩く燦。
対照的に突然シキは、反対側へと振り向き走り出す。
「シキ!?いきなりどうしたの!」
「ひぎゃああああっ!」
シキが刺し込んだ木から悲鳴が木霊する。
「なっ!?」
これは、敵か!?
燦には何が起きたかわからない。
ブレーキが木に擬態していたのだ。
景色に溶け込み、攻撃の機会を伺っていたのだろう。
何人いるかは分からない、突然の事で直ぐに臨戦態勢を整えられない燦を目掛けて、敵が爪型のナイフを持って突撃する。
が、それを予測していたシキにより、燦の足元に一本置いておいたゲフィアンズ・シルスが発動する。
シルスが発する球状のシンマネが敵の攻撃を包み込み、攻撃を回避。
反対方向にも襲撃者が迫るその直前、突如として強風が吹き抜けた。
風を追うように無数の木の葉が舞い、燦の周りを取り囲む。
「おせえ」
シキのスピードは風を起こす程であった。
『なんだこりゃ!こいつはええ!』
驚嘆したと同時にシキも剣を一本のシルスを振りかざすとたちまち剣から発せられる熱が辺りを拡散され、そのあまりの潜在能力の深さに畏怖を持ち。
『に、逃げろ!』
シルスに保護される燦と本人を除く全員が背を向けて、逃げ出した。