新たな能力
衝撃が直撃した物体はなんであろうとはじけ飛ぶ。内部から四散する。
しかし、神崎の体はそうはならなかった。
神崎の体に当たった瞬間、衝撃が神崎の体を避けるように動いたのだ。エネルギーの塊の神崎に触れる部分に穴が空く。外れた衝撃が地面や壁やらに激突して粉塵を巻き上げる。
「え、えぇっ!?」
少年は驚く。手をこちらに出した状況で思わず固まる。そこを神崎は見逃さない。
追撃に移る・・・・・かと思えば無幻の刀を地面に落とした。それとレーザーガンも。
ダメージを負っている状態が続いたため疲労が溜まっている。ポーションは怪我を治す薬であって、肉体的、精神的な疲労は回復しないのだ。ポーションを使い続けていてもいつかは動けなくなる時が来る。
そんな命の危機を感じている時に少年の涙を見ただけで敵意ではなく恐怖から攻撃しているのを直感し、説得のために武器を捨てる。そんなことが普通の人間にできるだろうか。
何も言わずに少年の方へ歩く。意識も朦朧としていて、声も出せない。ポーションを使って流れる血液を止めることもできない。もしくはそんなこと必要ないと思っているのかもしれない。
その時、少年と神崎の間に無音の空間が存在した。命を懸けて、敵ではないことを指し示した神崎の行動は、しっかりと少年に伝わったようだ。
少年の元に辿り着き、ポンッと手を頭の上に置く。少年は笑顔になった。
それを見て、緊張の糸が切れたのだろうか。神崎はその場に倒れた。笑顔のままで――――――――――
そして、今の状況になったのだ。少年は今までに勝ち続けていた猛者のようで、色々なアイテムを持っていた。その中には1つだけ疲労すら回復するアイテムを持っていた。少年はそれを惜しみなく神崎に使ったのだ。
初めての仲間なのだろう、少年にとって。そのため、完全に神崎になついたのだ。今では神崎に肩車をせがむような・・・親戚のおじさん並になつく子どものようだ。
3人は光に包まれる。そしてゲームスタート時の何もない部屋へと誘われた。
アルマとフレイはまた人間化している。フレイは気絶している上条の傍に寄り添っている。アルマは久々の人間化で現れた腕や脚を見てキャッキャとはしゃいでいる。
「そういえば、お前のパートナーは?」
「パートナー?なにそれー?いないよー?」
少年・・・シャルルにはパートナーがいなかったのだ。ゲーム開始の時は、声は聞こえたが誰もいなかったらしい。
「なんか最初に戻ったみたいだなー」
「僕はここあまり好きじゃないよ。」
「ああ・・・でも今は一人じゃないだろ?」
そういうとパァァと笑顔を出す。純粋無垢な笑顔に神崎の方も多少照れくさそうにしている。
{ゲーム参加者の皆様へ}
突然、スピーカーも何もない部屋に声が響いた。
{ここからはそれぞれに職業を割り振って、第二ラウンドの開始とさせて頂きます。
職業によって運動能力が変化します。元々現実世界で運動能力が高くても、引きこもりで運動能力が低くても、職業によって変化します。そして職業によって1つだけ全員に能力が与えられます。
職業は、今までの戦績によって付けられますので、ご了承ください。}
それだけ言うと、また部屋には沈黙が生まれた。
嫌な沈黙だった。
これからの闘いはより一層激しくなるだろう。
それを掻い潜って神崎たちはゲームをクリアして現実世界に戻れるのだろうか。
ゲーム開発者の目的とは。
ゲームの闇を、晴らすことは出来るのだろうか。
続




