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異世界二日目 都市ランブラス

朝起きて

隣を見れば

美女ハダカ


レンレン



目を閉じて肩まで毛布を掛けて目を閉じたエレノアを見て、俺は起こさないように静かに布団を捲ってベッドから這い出た。


こっちはゲーム内で戦闘や統率の経験は積んでも女性経験は無いんだぞ。


そんな事を考えながら布団を捲る際に、エレノアの華奢な肩から首筋に掛けての白い肌が見えてまた変にドギマギしてしまった。


「おはようございます」


俺が着替えていると、背後からエレノアの挨拶が聞こえた。


振り返ると、いつの間にかアンダーシャツ代わりの白いワンピースを着込んだエレノアが立っており、俺に頭を下げた。


「何故、そんなに不服そうな顔をしている」


俺が半眼で少し不満気な顔つきのエレノアを追及すると、エレノアは口を尖らせた。


「布団を捲くられる時に少し期待してしまっただけです。不服というわけではありません」


「起きてたのか…」


俺は朝から頭を抱えて溜め息を吐いた。





「マスター、お疲れ?」


空をゆったり飛行しながら、サニーが不意にそんなことを聞いてきた。


「いや、まあ、体力的には、少しな」


俺が曖昧な表現でサニーの問いかけに反応すると、セディアが笑いながら俺の下に現れた。


セディアは口元を片手で隠しながら仰向けに寝そべるような形で飛んでいる。


「エレノアがご機嫌で浮き足立ってたぜ、大将。今まであんなエレノアは見たこと無いくらいだ。まさか、ついに襲われちまったんじゃないか?」


茶化すようなセディアの軽口に、俺は渇いた笑い声をあげて視線を地上に向け直した。


さて、街は何処かな。


「お、おいおいマジかよ、大将⁉︎ ギルドの死の掟がついに砕け散る時がきたってのかい⁉︎ これは楽しみになってきたね」


「ちょっと待て、なんだその死の掟というのは」


スルーしようと思っていたのに聞き逃せない単語が鼓膜に突き刺さった。


すると、セディアは目を丸くして俺を見る。


「え…大将が知らなかったとか無いよな? 嘘だろ? これは少数派の意見だが、大将が老若男女イケるって話は知ってるよな?」


「あぁん?」


「ひょえ⁉︎ じ、自分が言ってるわけじゃな、ないから!」


あまりの台詞に俺が思わずドスの利いた声を出すと、セディアが慌てて関与を否定した。誰だそんなこと言った奴は。ディオンか?


「あ、いや…大将は、ギルドの誰でも宝物庫に連れて行って手ずから装備を整えてくれるだろ? すげぇ嬉しいんだけど、男でも2人きりでアンダーシャツからパンツまで選んでくれるから…大将に情欲の籠った目で見られたって証言も一部でてるしよ…」


「あぁん⁉︎」


「じ、自分は何も言ってません!」


俺が目を見開いて声を荒げると遂にセディアが敬語になって叫んだ。


そりゃ、キャラクターを作る時と育てる時、後は育った後に仕上げの最強装備を考えるのは楽しいから時間を掛けますとも。ユニークキャラなんかは特に楽しいから服のデザインも考慮しますとも。


あ、キャラクターの視点から見たら気持ち悪いのか。そうか、ムキムキのオッサンの身ぐるみ剥いで下着からチョイスする変態ですか。


誰が変態だ。


「あ、でも…大将が女の装備を整える時の方が時間かかるから男もイケるって意見は少数派なんだよ。わ、私も大将から下着選ばれる時にお尻をずっと見、見られてたし?」


俺が変態だ!


「ぐはっ!」


俺は遂に羞恥心に負けた。意識朦朧となりながらも何とかバランスをとって上空から落下だけはしないように気をつける。


頑張るんだ、俺! ゲームのキャラクターを作ってただけなんだからセーフだ!


俺は自らを叱咤激励し、戦意向上を図る。


「あ、私もマスターに下着ずっと見られた。途中でマスターが身動き止めてから何となく時間計った。なんと10分間も指一つ動かなかった」


地上に還りたい!


もう頭から地上に還れこの野郎!地面に突き刺さるんだ!


なんで自慢気に胸を張ってるんだ、サニー!


俺は何故か悔しそうなセディアを横目に過呼吸になりそうな息を整えた。


「主ら…いい加減くっちゃべるのは止めるのだ。拙者達は幸運にも殿に選んでいただいた栄誉ある殿の護衛なのだ。任務に全ての意識を集中せよ。勿論、拙者の下帯も殿に選んでいただいたがな!」


「えぇい、張り合うな!」


横から出てきたサイノスが途中まで良いことを言っていたのに最終的に俺の心を斬りつけてきた。


結局、聞けば死の掟とは主から求められないのに自分から迫らないという暗黙の了解のようであった。


エレノアは自分から迫ってきたような気がするが、何故か記憶が曖昧で判断がつかない。





ランブラスはほぼ真四角といった形状の街だった。10メートル以上はありそうな石造りの城壁には四方に対して巨大な門が取り付けられている。


街の中は上から見る限り赤茶色の屋根ばかりであり、門から中央を交差する広い中通りには出店のようなものも見える。中々の賑わいだ。


俺たちはそっと少し離れた場所に降り立つと、人の行き来の最も少ない門、つまりグラード村の方角から潜入した。


そう、タイミングを見計らって城壁を乗り越えて潜入したのだ。


「こ、コソ泥みたいではないですか、殿」


「嫌ならお前が入場料を払ってくれ」


俺が不平を言うサイノスにそう言うと、サイノスは項垂れるように肩を落とし黙った。


そう。なんとというか当たり前にというべきか、街に入るには証明書を見せて銅貨か鉄貨らしき鈍い色合いの貨幣を門番に手渡す必要があるらしい。


なので、一度並んだ入場の列からそっと抜け出し、俺たちはセディアに周囲の気配を探ってもらいながら街へ潜入した。


今は大通りの一つ手前の裏路地である。


少し薄暗い路地裏には酔っ払いが倒れていたり、生ゴミが散乱していたりと惨憺たる汚さだった。


だが、中世特有の排泄物が多量に撒き散らされているような状態ではない。


もしかしたら、古代ローマ時代にあったとされる下水道が完備されているのかもしれない。クロアカ・マキシマだったか。


下水の向かう先は近くの川へ直通垂れ流しなので、川には行きたくないが。


「とりあえず、大通りへ出てみるか」


俺は気をとり直してそう言うと、路地から大通りへ出た。


雑多な街並み。賑わう人々と引っ切り無しに声をかけている露店の店主。まさに中世ヨーロッパといった雰囲気だ。


これを見たかった。俺は初めての海外旅行でも来たかのような気分になりながら辺りを見回し、ふと、自分達に集まる視線に気がついた。


いや、目線は俺ではなく連れてきた三人に向いている。


服装かと思ったが、恐らく街の住民に龍の鱗やオリハルコン、赤ミスリル鋼を使った鎧など理解出来ないだろう。


そこまで考えてふと気がついた。


いまだ、異世界に来たというのに獣人やエルフなどを見ていないのだ。


周囲の住民を見ても、どうもヒト族ばかりのように見える。


「おい、あれ…エルフじゃないか?」


誰かがそんな声をあげたのが聞こえた。


「行くぞ」


俺は嫌な予感がして三人に声をかけると、その場を足早に離れた。


「エルフは存在するが、珍しいということか?」


歩きながら俺がそう呟くと、セディアが首を傾げた。


「こっちに来る前はいくらでも居た気がするけどね。ドワーフとかの方が珍しいんじゃないか?」


「ハイエルフは少し珍しかった。大体は大きなギルドか聖樹の麓にしかいなかった」


それはゲームだったからね?


「ふむ、エルフだけじゃなく獣人も珍しいようです。拙者は先ほどから耳と尾を狙われている気が…」


フサフサだからな。


三人が首を傾げる中、俺は何となくイメージ出来るファンタジー世界のパターンを何種類か思い浮かべた。


「ありえそうなのはエルフや獣人は数が少なく、迫害の歴史があって一箇所の国に固まっている。もしくは森に住んでいて出てこない」


「おお、エルフっぽい」


サニー、お前が感心するのはおかしいだろう。


「後は、嫌な想像だが、エルフや獣人などは珍しい為に奴隷として売買されている」


「え、大将それ暴れていい? 奴隷とかダメだろ」


俺の推測の一つに対してセディアが怒ってしまった。まあ、ゲーム内に奴隷というシステムは無かったからな。


「だが、犯罪奴隷はあるらしいからな。奴隷自体は普通なんだろう。待遇がどうなるかは知らないが」


確か、中世ならば奴隷は国ごとに天と地の差があった。遥か古代のエジプトは意外にも奴隷の待遇は良かったという説もある。


「まあ、街中で全く見かけないからな。森に隠れ住んでいる可能性が一番高いだろうな」


俺がそう結論付けると、三人は頷いて納得していた。


「さて、まずは冒険者になるとしよう。一応の身分と金銭を手に入れないとな」



ただの街観光の回でした。

いや、ただ到着しただけという話も…




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