第八話 レベルアップ1
2013年9月16日改稿
シャルが部屋に入ってきた。ベッドの毛布を干すために取りにきたらしい。
丁度いい。
「母さま、あのね?」
「ん? なに?」
「昨日の夜に言っていた字ってなぁに?」
「ああ、ステータスを見たときね。字というのはねぇ、記録よ。記録ってわかるかな? 例えば、今話していることを忘れないでいようとしたら、どうする?」
そういう教え方か。話を合わせようか。
「うーん、一生懸命覚えておく!」
「そこで、字なのよ。話している言葉をそれに対応した形の決まりを作って、その決まりに従って何かに書いておけばどうかな?」
「えーっと、決まりを忘れないで、書いておいたものを無くしたりしないなら、話したことを忘れても大丈夫ってこと?」
「そうね。その決まりの形のことを文字とか字って言うのよ」
「ステータスにはその字があるんだ。あの変な模様が字なの?」
「そうよ。アル、貴方、字を覚えたいの?」
よっしゃ。行きたい方向に進みそうだ。
「うん、覚えたい!」
「そう、じゃあ教えてあげるわ」
こうして俺は母親から字を教えてもらえることになった。実のところ、今まで字の勉強がしたくても余りに不自然で言い出せなかったのだ。助かった。字については明日の午前中から毎日教えて貰えることになった。よし、ついでにこっちも言ってみるか。
「字を覚えないと魔法を覚えるのは難しいの?」
「うーん、無理ではないけど、字の読み書きが出来ないとすぐに難しくなるわね。もし貴方に魔法の才能があれば字を覚えたあとに教えてあげるわ」
「やった、有難う、母さま!!」
うおお、やった。魔法も教えてもらえる。これは嬉しい。
シャルは毛布を抱えて部屋から出ていった。
さて、早速確認が必要なことがあるな。
先ほど神様が仰っていたことだ。
そもそも神様がこちらに接触して来られたのだって、鑑定がレベルアップしたからだ、と仰っていた。
早速ステータスオープンだ。
【アレイン・グリード/5/3/7429】
【男性/14/2/7428】
【普人族・グリード士爵家次男】
【固有技能:鑑定(Lv.1)】
【固有技能:天稟の才】
鑑定の固有技能にレベル表記が付いていた。しかし、レベル1ってことは今まではレベルが無かったか、無理やり表現するとレベル0だったってことか。
天稟の才は何も変わった表記にはなっていない。
早速鑑定を使ってみるか。
【ベッド(幼児用)】
【オーク材】
おお、表示内容が増えている。
材質が表記に追加された。
と言う事は鑑定の固有技能がもっとレベルアップしたら更に詳しく判るようになると思って良いのではなかろうか。
ここで疑問が残る。そもそも鑑定の固有技能は何故レベルアップしたのだろう?
使えば使う程、技量が上がったことになったのだろうか?
そうとしか考えられない。
鑑定の技能を使う以外に特別なことはしていない。ステータスオープンは使ったが、あれは誰もが使えるということだし、特別なことには入らない気がする。
それとも鑑定した物が重要なのだろうか?
ちょっと思い出してみよう。
最初は昨日の午後、ステータスオープンを初めて使った時に鑑定の固有技能に気がついたんだ。鑑定したものはベッド。
次は昨日の夕食後、シャルとヘガードだ。
その次は今朝、馬と枕と鑑定モード中のキャンセル。
その次は今日の午後、棚×3と俺の髪の毛
レベルアップの要素ってなんだ?
最後に鑑定したのは俺の髪の毛だ。これか?
(鑑定)
【頭髪】
【普人族の毛髪】
別段変わったことはないな。
念のため
「ステータスオープン」
【アレイン・グリード/5/3/7429】
【男性/14/2/7428】
【普人族・グリード士爵家次男】
【固有技能:鑑定(Lv.1)】
【固有技能:天稟の才】
うん、レベルは1のままだ。
だとすると回数か?
ひのふのみの……。
10回鑑定した時にレベルアップしている。
ならば今2回新たに鑑定したのであと8回かな?
(鑑定)
【ベッド(幼児用)】
【オーク材】
(鑑定)
【ベッド(幼児用)】
【オーク材】
(鑑定)
【ベッド(幼児用)】
【オーク材】
くそ、眠い。何もやる気がしない。
・・・・・・・・・
夕食時に起こされた。
気分は爽快だ。
昨日からあれだけ眠りゃ当たり前か。
離乳食のオートミールをミュンに食わせてもらいながら考える。
相変わらず美味くない、と言うより、不味いわ。
じゃなくて鑑定をしていると眠くなることについてだ。
最初は1回で眠くなった。次は2回鑑定するまで問題なかった。その次は3回だ。このときに急に襲って来る眠気と鑑定について怪しんだ。その次には用心しながら使い、大丈夫かと安心したら4回目で眠くなり、神様に呼び出されたんだ。
で、レベルアップ。
本当、不味いな。オートミールって。塩っけが足りないんだよな、この家は。
さっきは髪の毛とベッドを合計5回の鑑定したときに眠くなったはずだ。
じゃあ、次は6回目の鑑定で眠くなるのだろうか?
どうせ晩飯を食ったら寝るだけだ。
実験してみるか。
現代日本人の俺には本当に口に合わないわ、さっさと食っちまおう。
「旦那様、奥様、アル様がご自分でお食事を摂られています!」
うわっ、急になんだよ。
「ガキじゃあるまいし、そりゃ飯くらい自分で……。あ゛」
まずい、変な事を口走った。おおっ、と一度は感心した顔をした両親と兄姉とミュンだが、既にぽかーんとしている。
やばいわ、こりゃ。
「僕だって、ご飯くらい一人で食べられます」
とにかく誤魔化して押し切るしかないか。
「アル、お前はまだガキどころか赤ん坊だ。それにそんな汚い言葉をどこで覚えた?」
ヘガードが真剣な顔で言う。
「ごめんなさい。父さま。その、誰かが言っていたもので……」
しおらしい態度が出来たろうか。
「……まあ、いい。一人で食べられるのならこれからは一人で食べろ」
「はい、分かりました」
誤魔化せた、のか?
恐る恐るテーブルを眺めてみる。皆がこちらを見ている。
木の匙でオートミールをすくい、食べる。
ちょっと危なっかしい手付きをしてみた。
何回か食べると皆、自分の食事に戻る。
俺はひと皿分のオートミールを食べ終わった。
皆も食事が終わったようだ。
シャルが俺を抱き上げる。寝室に行くのだろう。
なんとか誤魔化せたようだ。ふぅー、良かった。
・・・・・・・・・
シャルが俺を寝かしつけようと子守唄を小声で歌っている。
大丈夫、あと6回も鑑定すればすぐ寝るさ。1分もかかりゃしない。
(鑑定)→俺
【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
あれ?
ステータスオープンのときと表示が違うな。
これが鑑定Lv1の効果か。
(鑑定)→シャル
【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】
【女性/11/10/7400・普人族・グリード士爵家第一夫人】
ふむ。内容的には想像通りだ。
一気に行くか。
(鑑定)→シャル
【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】
【女性/11/10/7400・普人族・グリード士爵家第一夫人】
(鑑定)→シャル
【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】
【女性/11/10/7400・普人族・グリード士爵家第一夫人】
(鑑定)→シャル
【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】
【女性/11/10/7400・普人族・グリード士爵家第一夫人】
これでレベルアップしたんじゃないかな?
ステータスオープンで確かめてみたいが……。
最後に俺を鑑定して確認するか。
(鑑定)→俺
【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
【状態・良好】
お。レベルアップしたようだ。状態の行が増えた。
良好とあるけど、なんだ?
健康状態のことかな?
だとすると結構便利だ。
回数制限はあるけど、ステータスオープンなんかよりずっと便利そうだ。
無事レベルアップも確認できたし、眠くなったから寝よう。