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ログ・ホライズン  作者: 橙乃ままれ
異世界の始まり(上)
6/134

006

「治安悪くなっているという話は本当だなー」


 辺りのアイテムを回収した直継がシロエにそう言った。シロエは肩をすくめる。野盗に対しては余裕いっぱいの振りをしていたけれど、実はそこまで楽勝という状況でもなかった。


 敵の数は六人だったし、その殆どが90レベルとは言わないまでも、かなりの高レベルだったことは間違いない。防御系の特技を使っていた直継だって、半分近くのHPを失っている。

 アカツキが闇の中で敵の伏兵を手早く始末してくれなかったら。いや、それ以前にとっさに身を隠し「視認できる敵は4人」というシロエの言葉を「理解」して、遊撃隊として働いてくれなかったら、どちらに転んでいたかは判らない。

 もちろん、直継もシロエもおそらくはアカツキも、奥の手のひとつや二つは温存している。しかし奥の手というのは逆転の手段ではあるけれど、それを使用するためには冷静さが必要だ。パニックになってしまった精神状態では、優秀な切り札が存在したところで逆転はおぼつかない。切り札を切るためには、それなりの「勝算」、つまり落ち着きと段取りが必要なのだ。


 今回の勝利は、結果は野盗達が人数差から自分たちを過信してくれた事と、連携の練度においてシロエ達が勝ったという二点の結果だ。


「他にもPK達が潜んでいるかな」

 アカツキが小首をかしげるように廃ビルの群を見上げる。


「それはないんじゃないかな」

 シロエは応える。

 PKというのは不意打ちが命だ。そのためにはそれ相応の仕掛けるべき場所というものがある。ここよりもアキバの街に近づくと、アキバの街に逃げ込まれる恐れがある。それはPKにとってデメリットが大きすぎるだろう。


(とは言え、油断は出来ないけど。本当に物騒になってきてるし)

 今回のPKを撃退できたのはもうひとつの理由があるとシロエは思う。


 それは最近の治安の悪化、その情報だ。


 PKが頻出している、と云う話はシロエ達も耳にしていた。

 アキバ周辺のフィールドゾーンでは、特に夜間の視界悪化を待って不意打ちが行なわれているらしい。先ほどの連中も、「初めてのPK」などという雰囲気ではなかった。その手際は自分たちを過信しすぎるほどに、明らかに手慣れたものだったのだ。


 もっとも、そういう噂があればこそシロエ達も警戒しながら進んできた訳でもあるし、梢の上から監視していた影にも気が付くことが出来たのだが。


〈ドレッド・パック〉(恐怖の群)ねぇ……。何かこう、ありきたりな名前だ」

「それは仕方がない。PKなんてするギルドにセンスを求める方が贅沢だ」

 嫌悪感を隠さない直継にアカツキも同調する。


(まぁ、それは僕も同じだけどね)

 シロエもため息を漏らす。


 直継はPKを嫌っている。だが、シロエだって嫌いだ。

 理由は色々ある。しかしそういう理由はどれも補強であって、どうも根っこの部分はひどく単純じゃないかとシロエは考えている。

 その根っことは、大部分のPKは格好悪いと云う点だ。


 他人が努力をして得てきた金貨やアイテムを労せずしてかすめ取ろう、と云うその発想がすでに格好悪い。何よりも、そうやって得た金貨やアイテムでは、決してトップに立てないという点が最悪に格好悪い。そうシロエは考える。

 「他人が得た財宝をかすめ取る」ということは、その財宝が得られるような難関ゾーンには足を踏み入れないと云うことだ。それでは未発見の場所や謎に挑むことは出来ないし、「誰も見たことがないようなアイテム」を見つけ出すことは決して出来ない。PKと云う手法では、冒険の最前線に立つことは決して出来ないのだ。

 それでは他人の成果を盗むしか能のない、どこまで行っても寄生虫でしかないではないか。


 シロエはそんな風に思っている。


(――こんな異世界に飛ばされたプレイヤー達に格好良いだの悪いだの云っても……それは仕方が無いのかも知れないけど。

 みんな精神的には追い詰められているのだろうし)


 悪いことに、その追い詰められた状態が日常として定着しつつあるのが、いまのこの世界なのだ。


「私もそんな噂は聞いている」

「聞いた話だと他にも〈たいだるくらん〉とか〈ブルーインパクト〉だとか〈カノッサ〉とかがPKやってるって云う話だよ」

 アカツキの呟きにシロエは答える。


「なんだかなぁ。そりゃさー。色々てんぱってるのは判るよ。判るけどさ。……なんつぅかなぁ、他にやることあるんじゃねぇかな」

「たとえば?」

「おぱんつについて語るとかさぁ」

 アカツキは直継から一歩離れる。

 その後できょろきょろと辺りを見回し、もう一歩退避する。


「二歩退かれた……。二歩だぜ……?」

 落ち込む直継の肩をぽんぽんと叩いて励ますシロエ。直継は必死の形相でぱんつの素晴らしさを語ろうとするけれど、アカツキの「黙れ色魔」という一言で沈黙する。

 だんだんとパーティーの力関係が定まってきたらしい。


(『他にやること』か……)

 それがないことが、現状では問題なのだ。


 ただ命を繋ぐだけならば、安い食事はある。

 味は塩気のないふやけた煎餅だが、まぁ生きていけるので文句をつけるのは間違っているだろう。たとえば元の世界の東南アジアや戦争を行なっている国、飢餓に喘いでいる国々のように、子供がギラギラしたような瞳で餓えを訴えながら死んでいくような事態にはなっていない。

 また今後もおそらくそうはならないと想像できる。


 〈エルダー・テイル〉の世界での食糧アイテムは、素材アイテム幾つかの合成で作られる。そして素材アイテムはフィールドゾーンで集めることができる。具体的には戦闘によりモンスターから収集できる肉など、採取などにより得られるキノコや山菜、釣りによる海産物、栽培による穀物、果樹から得られる果実などだ。

 この世界に季節の概念があるかどうかはまだ判らないが、雰囲気からして現在は初夏のようだ。食材はフィールドに溢れている。


 元のゲームにおいて食料アイテムは個別にレベルや効果を持っていて、たとえば90レベルであるのならば相応しいレベルの食料アイテムを食べないとHP回復速度の上昇などは望めなかったのだが、「飢えを満たす」という一点に絞るのならば、どんなレベルのアイテムを食べても問題はないようだ。

 だとするならば、例え10レベル以下の初心者プレイヤーであっても、アキバの街近辺の比較的安全なフィールドで食材を手に入れることは可能だ。

 問題は〈料理人〉のサブ職業を持っているプレイヤーが調理をしてくれるかどうかだが、この三週間でどうやら自分のサブ職業を〈料理人〉に変更したプレイヤーは多いらしい。

 栄養摂取は生命の基本なので、それももっともな戦略だと云えるだろう。


 衣についてもそれは同様だ。

 獣から皮が取れるし、麻や絹からは布地が作れる。装備の数値的な性能を気にしないならば、衣服は生産職の職人が一着数十秒で作り出すことが可能だ。靴や生活必需品も、〈裁縫師〉と〈鍛治屋〉、〈木工職人〉が殆どの領域をカバーしている。少し大きなアイテムは〈大工〉、細かい宝飾品や機械仕掛けは〈細工師〉が担当する。


 住処については、安全面や快適さを気にさえしなければ、そこらの廃ビルに上がり込んで一夜を過ごせばそれで事足りる。

 安い宿屋を借りるためには金貨5枚ほどが必要で、この金額だって、10レベル前後のプレイヤーがゴブリンを数体も倒せば手に入れられる程度の貨幣だ。もちろん上を見るならば快適な宿屋の月極借りから、ギルドホールのような団体による居場所の確保、一軒家の所有まで果てしないが、とにかくただ「寝る」と云うだけならば、お手軽な手段がいくつもある。


 つまりこの異世界において、ただ単純に毎日を生き抜くというだけならば命の危険を冒すことも長い時間の労働をすることも、必要ない。

 「サバイバル」という1点において、そこまで悲惨な状況は存在しない。


(それが『生きる』って云う意味かというと『死んでない』ってだけなのかも知れないけれど……)


 シロエが思うに、この「生存競争の欠如」そのものが「生きるための目的の喪失」と関係しているように思える。つまり「他にやること」が無いわけだ。


 もちろんこの異世界は自由だ。

 いささか自由すぎるほどにさえ思える。


 直継に云わせれば「生きる目的? 他にやること? んなもん、自分で決めて自分で邁進すれば良いじゃねぇか。おぱんつについて語るとか。女の子を守るとか」となるのだろう。その意見は正論で、シロエにしたって反論をする気はさらさらない。


 だが人間そう言いきれる者とそうでない者がいるようだ。

 そして、自分で決めた打ち込める目的がないと、面倒くさいことを考え出す存在は何処にでも居る。たとえば他人を虐めることによって自分がたいしたものだと思い込むような人間とか。


(PKだってそうだ。

 この世界でただ生き延びるだけならば、遙かに簡単で、遙かに安全なやり方は幾らでもあるんだ。

 それ以前に暮らすだけなら大金は要らない。

 PKしてまで稼ぐ必要性がない)


 で、あるならばPKは「生き延びるための手段」ではありえない。たとえば非常に貧乏な国の人々が、生き延びるためにやむなく手を染める強盗とはまったく性格が異なる。


 彼らにとってPKが「他にやるべき事」だったのだろう。

 生き延びる以外に、自分を満たす手段。

 それが余計に、なんだか格好悪いなぁ、というシロエの感想を引き出すのだった。


「ちょ、うっわ!」

 直継が声を上げる。

「どしたの?」

「あいつら、合わせて金貨62枚しかもってなかったよ。どんだけしょぼいんだっての」

「アイテムの方はそこそこだったぞ」


 どうやら、直継とアカツキは拾い集めたアイテムの確認を終えたらしい。その台詞からすると、がっかりな所持金でしかなかったらしい。


「そりゃそうだよ。PKなんてやるくらいだからリスクは認識してる。よほどのバカじゃなきゃ、必要最小限のアイテム以外は貸金庫に全部預けてきてあるよ。そのアイテムだって、他の人から奪ったものだと思うよ?」

 シロエのツッコミに「儲け損ねたな」なんて深いため息をつく二人だった。



 ◆



 トラブルがあったためにアキバの街に戻ったのは夜半だった。


 ここ最近の街は殺気立っているように思える。

 市街中心部――たとえば駅前広場や、大十字交差点、アキバンブリッジなどはいままで通り露天が並び、それなりに人出もあるが、暗がりが目立つ外れの辺りや廃ビルが入り組んだ路地には、警戒心に満ちたプレイヤーが言葉を掛け合うこともなく他人と距離をとるように行動しているのだ。


(やっぱりPKが増えてるのと関係があるんだろうなぁ)


 シロエ達はここ最近、街での活動を殆どしていない。

 あの災害が起きてから数日の間は知識を共有化することに大きく意味があった。食べ物や寝る場所、基本的な世界の構造や仕様など。確認しなければならないことが幾らでもあったからだ。


 だが、そう言った基本的な情報を押えたあと、シロエ達が選択したのは、今度はフィールドの情報収拾と、戦闘における差違点の洗い出しだった。


 この方針は三人の話し合いで決めたものだったが、思ったよりこの洗い出しには時間が掛かっている。


 たとえばPKとの戦闘で用いた〈エレクトリカル・ファズ〉がそうだ。あの持続型の電撃呪文の特徴は、コストパフォーマンスだったはずだ。戦闘の初期にかけておくことで、時間をかけてそこそこのダメージを与えるのが特徴の呪文である。


(その「そこそこ」でさえ、僕ら〈付与術師〉(エンチャンター)にとってのそこそこでしかないんだけど。僕らが時間をかけて奪うダメージを〈妖術師〉(ソーサラー)は、一撃の魔法で苦もなく刈り取るからなぁ)


 シロエは嘆息するが、しかし異世界化してしまったここでは、〈エレクトリカル・ファズ〉のあの派手な見た目、輝きと音がPK相手に副次的な効果を生み出している。

 もちろん、そうと気付かれてしまったり、一度手の内がばれた相手には効果がなくなるだろうが、その一度が明暗を分ける状況は存在するはずだ。


 「呪文や技を使う」のと「使いこなす」間には大きな隔たりがある。直継やシロエはそう考えるプレイヤーだったし、それはいつの間にかアカツキも考えを同じくするようになっていた。


 だが、「使う」と「使いこなす」の間の隔たりが大きければ大きいほど、当たり前の話だがその隔たりを埋めるためには修練が必要になる。ひとつひとつの技の特性を確かめてみて、使い方を研究し、実験をする。元々の〈エルダー・テイル〉もゲームにしては奥が深くてその情報量は素人泣かせだったが、この異世界での戦闘はそれに輪をかけて……いや数倍処ではなく難しいようだ。


 たとえば〈クロス・スラッシュ〉。

 〈守護戦士〉(ガーディアン)の攻撃の起点となる二連続の十字斬撃。

 起点となる基本技だけあって習得も早いが出番も多いこの技。直継によれば、この異世界においては入り方が5種類以上もあるそうだ。


「始めに袈裟斬りから入って、次の瞬間下から切り上げる。ま、これが基本だわな。でも、左袈裟からはいって逆切り上げもある。おそらく左利き用のモーションだろう。さらに、そのほかにも突進気味に横払いから連続して切り下ろすパターンなんかもあるんだよなぁ」

 とのことだった。


 どうやら、剣技というか戦闘の基本的な動き方は肉体に刻み込まれているらしい。戦闘職二人、直継とアカツキの言葉によれば、戦う意志があって目の前の敵の動きが認識できていれば身体は動くそうだ。


 だが、その細かい動きを制御しようと考えると、それはかなりの練習を要するらしい。それが元の世界の格闘技のような意味合いでの練習かどうかは判らないが、考えて、実験をして、また考えて、修正をして……その繰り返しなのは、武器攻撃組の二人もシロエも同じ事だった。


 射出型の魔法も、ただ単純のショートカットキーから詠唱するよりは、杖で目標を指示した方が命中率が高くなると云うのも発見だ。


 こういった技単体の些細だが重要な発見と練習はもちろんのこと、それを実戦で敵に対して運用しようと思うと個人プレーだけでは上手く行かない。三人の連携も大事だ。

 単純に「壁役」、「攻撃役」、「指揮、補助役」と分担はしてみたものの、そんな分担で連携が完成するほど甘くはない。

 直継は直継なりに、自分が敵をどう引きつければアカツキやシロエが敵を撃破、もしくは無力化しやすいのか。アカツキだって直継のどの一撃が敵の隙を生み出すのか。そう言った知識や経験を蓄えなければ行けない。


 シロエに至ってはその負担は最も大きかった。

 指揮を行うとなれば、仲間二人の出来ること、出来ないこと、癖や呼吸の全てを把握しなければならない。そうでなければフォーメーションの完成度は上がらないのだ。

 覚えることや洗い出すべき疑問点は無数にあり、その把握をじわじわと進めているのが、最近のシロエ達の日常だったのである。


 街での情報収集を放置できた理由はもうひとつあった。

 それは〈三日月同盟〉とマリエールの存在だ。


 〈三日月同盟〉はシロエ達と違って人数は多いが、90レベルのプレイヤーは少ない。中堅レベル冒険者の相互互助を目的としたギルドだ。だから彼らはフィールドでの戦闘による素材稼ぎと、街での情報収集を同時に行なっている。


 具体的に云うと三つの班をつくり、それぞれ日替わりで郊外の素材採集、街での情報収集と休息、生産職によるアイテム作成としているらしい。ローテーションを行なうのでなかなかに効率がよいのだそうだ。


 シロエはマリエールと相談をして、シロエ達が集めてきた60レベル以上のゾーンの情報と引き替えに街で集めた情報を教えて貰う約束をした。そのほかにも、食料アイテムを受け取ったりしているし、その見返りに高レベル素材を卸したりしている。


 シロエ達が街中で情報を聞いて廻るより、マリエール達の方が人数も多いゆえに効率よく情報を集められるのだ。


 ――PKが増えてるのと関係があるんだろうなぁ。

 などとシロエが先ほど憶測混じりに嘆息したのは、それが自分の集めた情報ではなく、マリエールから間接的に得た情報であることに起因する。とはいえ、こうして街の雰囲気を見る限りそれは真実なのだろう。


 シロエ達は屋根があるために絶好の露天スポットとなっている駅の構内を抜けて、駅前広場に向かう。広場は現実世界では巨大な駐車場や空中遊歩道があったはずだが、この世界では苔むす廃材と芝生に彩られた広々とした空間だ。


 四方のビルは荒れ果てているが、その1階部分は残らず商店となっている。この広場にはアキバの街の商業施設の多くが揃っているのだ。

 プレイヤー同士の交易を助けるマーケットのノンプレイヤーキャラクター、駆け出しの生産職を手助けしてくれる〈鍛治屋〉や〈裁縫師〉の師範。彼らは技術を教えてくれると共に、鉄を溶かすための炉や裁縫台を無料で貸し出してくれる。

 この世界に流通しているアイテムはモンスターやダンジョンの宝箱から得た物、そして生産職が作ったプレイヤーお手製の物が殆どだが、低レベルの冒険を手助けするためにノンプレイヤーキャラクターも基本的な武器や防具などは販売している。

 広場周辺の商業施設には、そう言った商人ノンプレイヤーキャラクターも存在した。


 この異世界に巻き込まれたプレイヤー誰もがちょっとびっくりして、その後あっという間に馴染んでしまったことだが、ノンプレイヤーキャラクターは元のゲームよりも格段に増えている。

 正確に数えた訳ではないが、元のゲームの6倍から10倍は存在しているのではないだろうか。


 市街フィールドにおけるこうした基本的なサービスは元のゲームの仕様を再現するためか、基本的に二十四時間年中無休のようだ。しかし、この世界ではノンプレイヤーキャラクターも寝たり食べたり休憩したりする必要がある。そのための補充要員なのだろう。人数が増えているのだ。

 彼らは彼らの勝手なスケジュールによって行動して、店の奥や上階にある住居で生活している。もっとも彼らはプレイヤーが生産したアイテムや獲得したマジック・アイテムを購入したりはしないので、経済活動に参加しているかどうかと云うと、微妙だ。

 ゲームと違って言動や反応は人間そのもので、ステータス画面を出さなければプレイヤーと区別がつかないこともある。


「どっかで何か買ってく? それとも食ってく?」

 直継が多少げんなりした声でアカツキに声をかける。


「あー。どうします、主君?」

 アカツキがそれに劣らぬ投げやりな調子でシロエに話を振る。この世界の食べ物はやる気を喚起するものではないから、彼らは食事の度に憂鬱そうな様子を見せるのだ。


「ん……。ちょい待って。マリ姐のとこ、起きてるなら寄っちゃおう」

 シロエはそう返す。マリエールの〈三日月同盟〉ならば、味は同じでも多少ましな食事が出来る。食べる雰囲気というのは決して馬鹿には出来ないのだ。

 それにいまは狩りの帰りだし、PKからせしめたアイテムもある。〈三日月同盟〉に格安で譲り、もしなんだったら生産物はマーケットを通して街に流してもらう。それがせめてもの還元だと考えたのだ。


 シロエはメニューを開いてマリエールに念話を試みる。

 時間的にはまだ就寝していないとは思っていたが、日は暮れている。駄目なら駄目で、また明日と思っては居たけれど意外なほど素早く念話への返答があった。


『おー。シロ坊やん。今どこにおるん?』

『街に帰ってきたところですよ』

 マリエールの挨拶はいつも通りだったけれど、シロエには少しだけ焦りの色が見えるような気がした。


『ギルホ来てや』

『いいのですか? まだ起きてます?』

『丁度連絡しようとしてたん。良いから来てや』

『直継とアカツキも一緒だけど、良い?』


 〈三日月同盟〉との付き合いで、直継やアカツキもマリエールには紹介してある。何度もギルドホールへお邪魔したり、〈三日月同盟〉の若手メンバーと一緒に狩りに出掛けたりした関係で、二人の顔はもう知られたものになっているのだ。


『もちや。かえって都合がええで。待っとるから』

 途切れた念話。話していたマリエールの背後で慌ただしい気配が感じられた。どうやら〈三日月同盟〉のギルドホールはこの時間でも完全に営業中らしい。


「どうした? シロ」

 そんなシロエの気配を敏感に察した直継が、気遣いの言葉をかける。そんなところは本当に気遣いあるよな、と感心しながらもシロエは二人の仲間を振り返った。


「〈三日月同盟〉へ行こう。どうやらトラブルが起きたらしい」



 ◆



 〈三日月同盟〉のギルドホールは慌ただしい雰囲気に包まれていた。案内をしてくれた仔犬のような印象の少年ヒーラーも、シロエ達三人をギルドマスター、マリエールの部屋に送り届けた後にきびすを返してパタパタと去って行ってしまう。


 当のマリエールは前に来たときよりも散らかった部屋で、それでも何とか確保した応接セットにお茶の準備をしていた。

 傍らに控えたヘンリエッタは、マリエールの執務室の掃除を必死に続行している。すでに真夜中近い時間帯なのに、このギルドはまったく寝静まる様子がない。


「すみません、シロエ様……。って、うっわぁ! アカツキちゃんじゃありませんかっ!」

 ヘンリエッタはアカツキを見つけると、箒を放り出して駆け寄ってくると、思い切り抱きしめる。ヘンリエッタの悪癖、つまりは少女趣味にアカツキはクリティカルヒットしたらしく、初めて紹介したときからこの調子なのだ。

 ヘンリエッタは女性にしては平均的な身長だが、アカツキはそれより優に頭半分以上は小さい。抱きつかれている様子は「じゃれてくる人間に面倒そうな黒猫」と云った風情だ。


「おかえりな。三人さん。ちょーっと散らかっとるけど、その辺はお目こぼししたってな」

 ヘンリエッタとアカツキを脇目に、小さく両手を合わせて器用にウィンクをするマリエール。そのお茶目な姿を見たシロエはため息をひとつつく。


「何があったんですか。マリ姐」

「まぁ、ま。そう急かさんと。座ってや。水入れたげるからっ。色つきでお茶風味! えへへへ」

 マリエールの勧めで、それぞれ腰を下ろす三人。

 シロエと直継はソファに。アカツキはヘンリエッタにまとわりつかれて、仕方なくクッションソファに腰を下ろす。


「……あー。うん」

 席は勧めたものの、マリエールは口火を切らなかった。話しづらい内容なのだろう。シロエはしばらくその様子をじっと眺めていたが、仕方なく自分から話し始める。


「遠征ですか?」

「うん、そや」

「どこに?」

「えーっとな。エッゾっていうか……ススキノ」


 ススキノの街は、〈エルダー・テイル〉の日本サーバの五大都市のひとつ。この世界では「氷結の島」(ノーザンアイランド)と呼ばれる場所にある、北の街だ。


 日本サーバが管理する区域。

 それは「ハーフガイアプロジェクト」においては地球上の日本とほぼ同じ空間を担当としている。その形状はほぼ日本と同一。ただ距離が半分、面積にして1/4であるだけだ。


 この仮想的な日本は、中世風ファンタジーである〈エルダー・テイル〉の世界において大きく五つの国に別れている。現実世界で云う北海道は〈エッゾ帝国〉、四国は〈フォーランド公爵領〉、九州は〈ナインテイル自治領〉。そのほかに本州の東半分を〈自由都市同盟イースタル〉、西部を〈神聖皇国ウェストランデ〉となっている。


 日本サーバ管理区域は、〈エルダー・テイル〉の世界でも比較的人口密度が高いと云われている。といってもこの広い日本にプレイヤーが数万人。まだまだ未開の荒野は広い訳だが、それでも無数の村や町がある。


 その中でも拡張パックで追加されていった五大都市は別格だ。

 ススキノ、シブヤ、アキバ、ミナミ、ナカス。

 この五つはプレイヤーがゲームの開始地点として選べるだけあり、あらゆる便利な商業施設も揃っているし、周辺のゾーンは初心者向けに難易度が調整されていて、サポート的なクエストも充実している。プレイヤーが死亡したときは、最寄りの五大都市の神殿で復活する事からも判るとおり、ゲームでは活動の拠点になるようにデザインされていたはずだ。

 さらに、五大都市は互いにトランスポート・ゲートという大型の特殊なゲートで接続され、自由な往来が保証されていた。

 少なくとも、あの大災害が起きるまでは、である。


「トランスポーターが修理されたって話は聞かねぇよな」

「まだ修理されとらんし。むしろ故障してるかどうかも判らん」

 直継の質問にマリエールが応える。だが話し始めたことで少しは前向きな気分になったのか、シロエ達に事情を説明しはじめた。


「前にも云うたけど、うちら〈三日月同盟〉は小さなギルドや。メンバーは、いまはちょい増えて24人。殆ど全員は、アキバの街にいるし、いまはこの建物の中におる。

 でも一人だけ、ススキノにおる娘がおるねん。名前はセララってゆーんやけど、まぁ、これが可愛い娘でな。〈森呪遣い〉(ドルイド)や。

 うちの中でもまだ駆け出しで、レベルは19。まぁ、そんなのはどうでもええねん。ちょっと気が弱いところがあって、人見知りなんやけどな。商売やりたいって〈エルダー・テイル〉始めた変わり種で」

 視線を落としたまま話を続けるマリエール。


「〈大災害〉があった日、セララはススキノにいたのですわ。

 ススキノで丁度レベル20くらいのダンジョン攻略プレイの募集がありまして。その時はギルドに手の空いてる人もいなくて、狩りに出掛けて腕を磨きたかったセララは一人でススキノに……。

 一時パーティーでした。ススキノで募集をしていたメンバーと合流して遊んでいたらしいのですが、そこで〈大災害〉に遭遇しました。

 トランスポート・ゲートは動作不良になって、セララは取り残されてしまったのですの」

 そのマリエールの説明を引き取ったヘンリエッタは深いため息をつく。


 プレイヤーの間では、あの事件にたいする〈大災害〉という呼称が定着しつつある。異世界転移だとか、召喚だとか、漂流といった言葉も一部では使われていたが、原因も実際の現象もまったくつかめなかったために、もっとも無難な言葉である〈大災害〉が定着してきたのだ。

 〈異世界転移〉よりも〈大災害〉のほうがまだしも、理解できうるトラブルであるかのような印象があるからではないかと、シロエは思っている。

 転移や召喚という言葉を使ってしまうと、もう二度と戻れないのを認めたような気分になるのではないか。そんな引っかかりは、シロエの中にも確かにあって、そのささくれが〈大災害〉と云う言葉を選ばせるのかもしれない。


「迎えに行くんですか?」

 シロエの質問にマリエール達は頷く。


「わたし達はよく知らないが、事件後にススキノに向かったプレイヤーは居るのか?」

 アカツキが三人の疑問を代表するかのような質問をする。

 それはシロエもちらりと考えたことだった。


 トランスポート・ゲートが使えないとなれば、移動方法は二つ。

 各地に残された〈妖精の輪〉(フェアリー・リング)と呼ばれる転移装置を何回か経由して目的地を目指すか、それとも真面目に何十ものゾーンを踏み越えて北を目指すかしかない。

 〈妖精の輪〉は主にフィールドにある転移装置で、巨大な石やキノコが円上に配置された天然の魔方陣だ。月の満ち欠けに影響を受ける複雑な計算によって選ばれた目的地点の、別の〈妖精の輪〉と接続されている。使いこなせば旅を短時間で終えることが出来るが、使用するタイミングを間違えると何処へ飛ばされるか判らない。


「いや、うちの知るかぎり、一人もいーひん。

 みんな今日を生きるので精一杯や。他の都市のことなんか気にかけてられないのはよぉ判るんよ。

 攻略サイトを閲覧できないいま〈妖精の輪〉を使うのは自殺行為やしな。かといって徒歩や馬でススキノ目指そう思うたら二週間以上はかかると覚悟を決めなならん。

 途中には結構な難所も幾つかあるはずや。好奇心でふらふら行ける場所や無いやろ」


 それはもっともな話だった。

 あの事件前。プレイヤーはこの日本サーバを自由自在に駆け巡っていた。一部の猛者は韓国サーバや中国サーバの管理区域にまで遠征を行なっていたほどだ。

 五大都市のトランスポート・ゲートは移動を迅速化していたし、〈妖精の輪〉は攻略サイトのタイムテーブルさえ確認すれば、各地に一瞬で辿り着ける非常に便利な交通機関だったからである。


 また、ゲームであった当時には、野営という概念がなかった。どんな遠隔地に行ったとしても、周辺がちょっと安全な場所を見つけてそこでログアウトすれば良かったのだ。〈帰還呪文〉で街へ帰ることも出来た。


「ちょっと待った。〈帰還呪文〉は……。ああ、そっか」

「ええ。〈帰還呪文〉は五大都市に入った時点で、自動的に上書きされますわ。いまセララが〈帰還呪文〉を使ってもススキノに戻れるだけ。……この街に戻ることは出来ません」

 〈帰還呪文〉は全ての〈エルダー・テイル〉プレイヤーが使用できる瞬間移動呪文で、最後に立ち寄った五大都市へと一瞬で戻れる呪文だ。詠唱は数分かかるし、そもそも24時間に一回しかつかえないから、戦闘から一瞬で逃げ出すという訳にはいかない。ゲームとしては「今日のプレイはもうお終い。ログアウトの前に街に戻るか」という場面で使う一般的な呪文だった。

 そもそも五大都市はトランスポート・ゲートで接続されているのが「前提」だったのだ。その前提が守られている限り、〈帰還呪文〉で帰れる都市なんて何処だって構わない。それが〈エルダー・テイル〉の常識だったはずだ。


「いま、救援を出す理由は、何?」

 アカツキは切り込む。

 シロエにもおそらくそれが問題の中核だという予感があった。


「それは……」

「あー。な。うん……。救援は、前々から出す予定だったんよ。あんな北の最果てにひとりぼっちじゃ心細いやろ?」

 言いよどむヘンリエッタ。アカツキを抱きしめる手にきゅぅっと力がこもる。先を続けようとしたマリエールも言葉を選ぶ風だ。


「……マリ姐」

「そんな目で見ちゃだめやで、シロ坊。シロ坊の目つきはちっとばかし鋭いんやから、可愛い娘さんにもてへんようになってまうで?」

「マリ姐」


「ん。……うん。ススキノな。こっちより治安が悪いみたいなんや。あー。もうだめだめ。あかんっ。

 ――『みたい』も『なんや』もなしっ。

 ススキノはこっちよりも治安が悪いんよ。

 ……セララなぁ、なんか柄の悪いプレイヤーに襲われたん」

 パステルピンクの濃淡で構築されたファンシーなマリエールの部屋の中で、それはひどく不吉に響いた。


 確かに市街地は戦闘行為禁止区域だ。ダメージを与えるような武器使用や魔法の使用は禁止されている。また「キャラクターの移動不能化」を誘発するような通せんぼうや拘束行為も禁止されている。


 しかし、だからといって、全ての犯罪的な行為が禁止されているわけではない。また禁止されているからと云って「実行不可能」になるわけではない。特にそれが、まだレベルも低い女の子に対してであれば、PKより質が悪いことは存在しうる。

 『ゲーム世界には存在しない。存在しないゆえに対策なんかとらなくても良い』事が、『この異世界では実行可能』になる例はあるのだ。


「……」

 アカツキの剣呑な沈黙は、「襲われた」という言葉の響きの持つ内容を正しく察したがゆえのものだった。


「あ。いやな。まだ大事にはなっとらんのよ。

 そこまでは行っとらんの。でもな、ススキノはそもそも、人少ないやん。話によると、いま二千人を超えるか超えないかって云う人口らしいんよ。

 そんな街で、何時までも逃げ隠れる訳にも行かないやろ? うち、助けにいってやらんとあかんのやん。うちんとこのメンバーやもん。それが当たり前やろ?

 で、こっからが相談なんやけどな。えーっと、悪いんやけどさ。

 うちのメンバーも、まだひよっこが多いやろ? みんな良い子なんやけど、まだちょっと頼りないんよ。

 今回の遠征で精鋭の連中は連れて行かな、そもそもエッゾまでたどり着けないと思うん。そのあいだ、こっちに残す子の面倒を見たってくれないかなぁ?」


「ずっとついていてくださる必要はないと思うのです。

 アイゼルという〈妖術師〉(ソーサラー)がいるでしょう? 青い髪の。彼が居残り組の取りまとめをします。マリエもわたしも、それから戦闘班の小竜も今回の遠征に全力を傾けるつもりですわ。

 ですから、誠に勝手なお願いで恐縮なのですが、どうかシロエ様、直継様……アカツキちゃん。

 このギルドのことをお願いできませんか?」

 マリエールとヘンリエッタは揃って頭を下げる。


 シロエは目の前で頭を下げる二人の女性を見ていた。

 呼吸を止める。

 脳内が静かになる。

 まだうるさい。

 出来れば血流も止めたい。

 思考が加速されて行く。

 集中が暗闇の中に稲妻を呼び起こす。


 現実世界における東京-札幌間の距離は約850km。〈ハーフガイア・プロジェクト〉下のこの世界においては425km。マリエールたちの移動手段は徒歩と馬。街道の舗装は場所によっては旧世紀のアスファルトや基幹道路が残っているが、未舗装の荒野や丘陵地帯も予想される。毎日の移動速度はもっとも優秀な日でも50kmがよいところ、平均してその半分も出れば上等だろう。いや、モンスターとの戦闘を考えればそれさえも怪しい。

 20km/一日という移動速度を採用するとして到着は21日後。三週間だ。……二週間というマリエールの読みは、甘いと云わざるを得ない。


 体温が3度ほど下がる。


 それはシロエを支える直感。気配のようなもの。

 マリエールの旅は、失敗する。

 もちろん最大限の準備をして旅に出るだろう。多少レベルが落ちるとは云え、マリエールたちは〈三日月同盟〉の精鋭で挑むと云っていた。当然〈エルダー・テイル〉のパーティーにおける最大人数六人での行動となり、優秀な回復職も同行するだろう。

 けれど、それはもはやレベルであるとか数値的な意味での強さとは別次元の話のようにシロエには思えた。


 シロエは内向的な性格で、考えすぎだと云われる。

 それは空想や妄想が様々な方向にとりとめがないという意味だが、それらを統合するシロエだけの武器があるとすれば、それは胸の中にある(はかり)だ。シロエのその装置は残酷なまでの冷徹さで自分たちの実力を計る。


 アドバイスを考える。具体的なアドバイス十二種。

 それぞれに対して検討を加える。

 有効性が確認できるもの約半数。

 成功率の上昇や期間の短縮が見込める。

 何らかの代案を考える。その数四種。

 それぞれに対して実行の有効性を検討する。

 半数を却下し、残りの半数にさらに幾つかの要素を投下して再計算をする。思考の道筋は稲光のよう。その先端はもはや無意識の領域で、稲光の軌跡だけがシロエに自分の考えのかたちを知らせる。


(でも――)


 アドバイス? 代案?


 それが何だというのだろう。

 そんな事が望まれているのか。いいや、そもそも、自分にそんな事をする権利があるのか? するどころか、望む権利すらあるのか? 自分の責任だけで済む訳ですらないのに。


 そこまで言語化が辿り着いてシロエは意識を肉体内部に帰還させる。誘われるようにあげた視線の先で、直継とアカツキはこともなげに頷いた。

「云え、シロ」

「主君の番だ」


 おそらく、あと5秒考えたらシロエは身動きが取れなくなっていた。自分の思考と責任感と「他人のギルドのことに口をはさむなんて云う厚かましさ」という罠に捕らわれて。

 でも、その瞬間だけは直継とアカツキという二人の同行者からの風を目一杯に受けた帆船のように、言葉が口から飛び出す。


「僕らが行きます」

「え?」

「僕らが行くのがベストです」

「そんな。シロ坊っ。うちらそんなことねだってるわけやっ」

 そんなマリエールの抗議をあっさり無視して仲間を振り返るシロエ。

「もちのろんだぜ」「主君と我らにお任せあれ」

 完璧なタイミングで返答を返す二人の仲間。話は終わったとばかりに直継は立ち上がり、アカツキもそれに続く。



「俺達が遠征に行く。マリエさん達が留守番だよなー。ひよっこの面倒を見るなんて、俺達にゃ無理無理っ」

「忍びの密命に失敗の文字はない」


 今度こそぽかんと口を開けてソファに座ったまま見上げるマリエール。シロエはその顔をとてもじゃないが見ることは出来ない。


 恥ずかしかった。僕らが行くのがベストです、なんて傲慢なことを云ってしまった後悔でいっぱいだった。同じ云うにしても、もうちょっと上手い言い回しはなかったものだろうか? きっと呆れてる。


(「何云っちゃってるんだろう? この子」みたいに思われてる。し、しでかしてるよっ。僕っ!! いわゆる痛い発言してる人間だよっ!!)


 いまはただ、格好をつけてしまった自分が気恥ずかしい。目の前が白黒にちかちかしそうなのを必死に押さえつけて、いつもよりも強い口調で叩きつけるシロエ。


「明朝一番で出発する。任せておいて、マリ姐。ヘンリエッタさん」




2010/04/20:誤字訂正

2010/04/24:誤字訂正

2010/05/29:誤字訂正

2010/06/13:誤字修正

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