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61. 管理室

 『水源』という施設を設置し終わったあとの城の外。

 兵士たちが持ってきてくれた魔物の死骸を『倉庫』にしまう。


「トーマ様は、まだ、ああいう魔物の死骸をご所望ですかな?」


 そんな俺に、ゴーグ兵士長が、もっと魔物の死骸が欲しいかと聞いてきた。


「ええ。魔石がついた魔物の死骸を集めていますから」


 と、うなずく。


「そうですか! では手の空いた兵たちを連れ、私たちで死骸を集めてきましょう!」


 おおっ、それはありがたいな。


 その会話に、武人風の老人、ルマールさんも混ざる。


「私たち獣人も同行してよいですかな? このあたりに出没する魔物の特徴を教えていただきたいのです」


「もちろん、かまいませんぞ!」


 ゴーグ兵士長が、うなずいた。


 ……獣人たちも魔物狩りに行ってくれるのか。

 必要そうなものを『倉庫』から出さないと。


「装備やアイテムを、今、出しますね」


 ルマールさんに伝え、彼らにそれを渡していく。


「それと、あまっている霊薬などがありますから、それをゴーグ兵士長に渡しましょう。兵士たちと分けてください」


「感謝いたしますぞ!」


 彼らにもアイテムなどを渡した。


「あっ、あと、あの小川が、村の人とかの町への移動の邪魔になっていないかなども調べてくれるとありがたいんですが……」


 施設『水源』から延びている小川を指す。


「わかりもうした!」


 うなずいたゴーグ兵士長。


 さらに俺はルマールさんに聞く。


「ウニがいると、狩りも安全になりそうですけれど……、連れて行きますか?」


 ブラウニーの従魔である彼女は、近くの魔物のいる場所とかがわかる。


「ウニ殿がいなくとも問題はないでしょう。足あとから魔物を見つけるのは得意ですし、町の近くの魔物狩りは、兵士の仕事の一つだそうですからな」


 魔物はルマールさんが簡単に見つけられる。


 さらに、ここら辺の魔物に慣れているゴーグ兵士長や、その他の兵士たちがいる。

 たしかに、そんなに心配しなくとも平気そうだが。


「トーマ殿も、他の兵士と魔物狩りに行くかもしれません。そのときのため、ウニ殿は、おそばに置いておいたほうが良いでしょう」


 ……たしかに、時間があれば、魔物狩りには行くつもりだった。


 その時間があるかどうかはわからないが。


「わかりました。では、ウニは俺達の近くにいてもらいましょう。ルマールさんも気をつけてください」


 その言葉に、彼が「無論です」とうなずいたのだ。


 こうして彼らは魔物狩りへと出発。ルマールさんのお孫さんとか、獣人の子どもが見送っている。

 数名の獣人は、留守番として城に残るみたいだ。


「じゃあ、俺たちは残りの施設――『魔導工房』と『管理室』を作っちゃおうか」


「おう! ダークエルフんとこで使い道がなかった『管理室』が、どんな感じになるのか楽しみだぜ!」


 そんなジュナンの言葉。


 もう一個の『魔導工房』は、町にある魔法の設備……保存庫の修理のために彼女が使う施設なのだが。


 そっちよりも、今までずっと機能がわからなかった『管理室』に、興味が移っているようだ。


「『城下町管理室』を『管理室』にバージョンアップするー?」


「面白い機能があるかもしれないし、『管理室』から作ってみようぜーっ!」


 ジュナンに、せっつかれる。


 ……確実に使うことがわかっている魔導工房から作りたいんだけど。まあ、最終的には、両方作ることになるから、どっちからやっていっても変わりはないか。


「わかったよ。それじゃあ『管理室』へのバージョンアップからやっていこうか」


「わかったーっ!」

「楽しみだな!」


 そんなイェタやジュナン。それとユイさんやウニと一緒に歩き、『城下町管理室』を設置した部屋へと入った。


「えいっ!」


 イェタの気合で、ピカッと部屋が光った。


「見た目はあまり変わっていないように思えますね」


 ユイさんの疑問に答えるイェタ。


「新しい機能が追加されたみたいだよ! 近くにある鉱山を『城下鉱山』に指定できるようになった! この『支城』だと、四百ポイント必要!」


 四百ポイントで、近くの鉱山を『城下鉱山』というのに指定できるとか。


 『本城』だと二百ポイントの消費で済むものが、この『支城』だと二倍のポイント――四百ポイントを使わないといけないようになっているのかな。


「さらにポイントを使えば、廃鉱を復活させたりもできるみたいよ!」


 おー、すごい。


「ちなみに、ポイントは、いくらぐらい残っているんだっけ?」


「六百七十だよ! あと『倉庫』に入れた魔物の死骸がある!」


 兵士たちが持ってきてくれたものだな。


「『倉庫』にあるゴブリンの死骸は二十体だから……それをポイント化すれば、八百七十ポイントぐらいになるか」


 ……そこから四百ポイントを使ってしまうと、残りは四百七十だ。


 『城下鉱山』の指定をすると、『魔導工房』が作れなくなってしまう。あの施設の作成には五百ポイントが必要だから。


「トーマさん! 『城下鉱山』の指定をしようぜ!」


 迷う俺に、ジュナンが言う。


「……良いのか?」


 ジュナンが必要とする施設なのだが。


「ああっ! ちょっと希少鉱石が足りなくて……。魔法の矢を作る希少鉱石とかはあるんだけど、保存庫を修理するときに使うかもしれないリュカ鉱石が少ないんだ」


 そうなのか。


「だから、『魔導工房』の前に、()()鉱山を復活させてくれると嬉しい!」


 そんなことも言っていたが……


「……その鉱山は、町の人とか、この領地の人のための鉱山だからね?」


 わかってると思うけど、一応つっこんどいた。


 この領地の鉱山では、もともと魔法の儀式に使うような珍しい鉱物が採れていたとか聞いていた。

 それがリュカ鉱石なんだろうか。


 まあ、ジュナンは、魔道具を練習代わりに大量に作っている。そういうので希少鉱石を使ってしまったんだろう……


「さあ、イェタちゃん! 早く鉱山を! 私の希少鉱石を!」


 ジュナンにせっつかれているイェタが、良いの? という風に俺を見てくる。


「……迷うけど、領地の収入にもなりそうだし、いいんじゃないかな」


「わかったー! えいっ!」


 気合を入れるイェタ。


「『城下鉱山』の指定に成功したよー! 鉱山の復活には四百ポイント必要みたい! 魔物の死骸をポイント化して、鉱山を復活させるー?」


「お願いするよ」


「うん!」


 廊下に行きゴブリンの死骸を出したイェタが、それをポイント化した。


「今あるポイントは四百七十だよーっ! 鉱山の復活するー?」


 その質問にも「頼むよ」とうなずく。


「大復活だよー!」


 イェタが、空中に手をさまよわせるが。


「……おう?」


 何か、変な声を出している。


「どうしたんだ?」


「坑道の中に生物がいるみたい! 坑道を埋めるとき、どこかの出口に排出しなきゃならないみたい! どの出口に排出する?」


 ……人間がいるのかな?


 そう思っているとユイさんが質問する。


「何がいるんですか?」


「ゴブリン四十数体の群れなど! 人や従魔などはいないとも書かれているよ!」


「『群れ()()』ですか……」


 他の魔物もいるかもしれないのか。


「……それは、出口に排出しないで、岩の中に埋めちまって良いんじゃないか?」


 ジュナンが聞いている。


「なんか、傷つけずに出口に転送するような設定しかないよ!」


 そんな応答をイェタからもらっていた。


 ……多分、カルアスの町を襲ったゴブリンの仲間か、もしくは別のゴブリンの群れかな。

 ポイントになるし、増える前に、倒してしまったほうが良い。


「獣人と兵士たちを連れて駆除に行ってきます」


「すみません……魔物などは坑道の中に入り込みにくくなっているはずなのですが」


 ユイさんに謝られてしまったが、むしろこういう任務のほうが冒険者の俺にとっては楽だ。


 俺は、イェタに聞く。


「向こうについたら合図を送るから、それにあわせて鉱山を復活させてくれるかな? 坑道の入り口のところにゴブリンたちを転送してくれれば、簡単に殲滅ができる」


 獣人たちに、戦闘能力を強化する『戦の角笛』をかければ、ゴブリンの攻撃が、こちらには一切通じなくなる。


 他の魔物もいるかもしれないが、ここら辺の魔物なら対処できるはずだ。


「わかったー!」


「合図はウニにテレパシーで送ってもらうからね」


 従魔のウニ……彼女は、テレパシーっぽいもので元主人のエルナーザさんに思いを伝えることができた。


 イェタも、このテレパシーを受信できる。

 距離が離れすぎていると、このテレパシーが届かない可能性はあるが……


 テレパシーが届かない範囲だったときは、『倉庫』を使って、手紙か何かをイェタに送ることになる。

 それについても後で相談しよう。


「あと、ルマールさんたちにも戦闘に参加して欲しいんだけど、魔物狩りに行ってたな」


 『水源』から延びている小川をたどっているはずだが。


「きゅっ!」


「ルマールさん達、まだ近くにいるみたいだよ!」


 ウニは、近くの魔物や人間などがどこにいるかわかる。

 ルマールさんたち獣人は、まだ、そんなに遠くには行ってなかったようだ。


「じゃあ、彼らと合流して、必要そうなら町の兵士たちも連れて、ゴブリン退治だな」


「きゅっ!」


 イェタにテレパシーを送る役目のウニも、やる気のようだった。

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