表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/89

24. サフの報酬

 薬草などを担当する受付嬢のサリーさんに、ビリーの兄が(のこ)した借金について相談し始めたときだった。


「おっ、なんだ、なんだ? トラブルか?」


 ギルド長のガルーダさんがやってきた。


「そんなとこに突っ立ってないで、談話室に入れよ! ギルド長の俺も、手助けしてやるぜ!」


 どことなくワクワクした表情の彼にグイグイと押され、皆で、いつもの個室へと入る。

 ……俺も一緒の部屋に入ってしまったんだが良いのかな? 関係者じゃないんだけど。


 部屋の中にいるのは、ビリーとその祖父、テッドとその父、サリーさんとガルーダさんに俺の総勢七名。

 人数が多いと、せまく感じる……


 指名依頼のときや、ギルドから直接何かを頼まれたとき、また一部の品の買い取りなどで、割とよく使われる部屋だったが――


「んで、何があったんだ? このガルーダに聞かせてみな。俺のバトルアックスに解決できない問題は、あんまないぜ!」


 ……バトルアックスで解決できない困りごとのほうが、多そうな気がするけど。


「じ、実は死んだ孫が借金を遺しまして……」


 ビリーの祖父が、ガルーダさんに説明を始める。


「私の娘が保証人になっているのですが、娘が言うことには額が二桁ほど多くなっていると……」


「なるほど、詐欺か何かかと思っているのか」


 ガルーダさんがうなずく。


「うーん……ちゃんとした、契約用の魔法紙を使っていれば、詐欺なんかは難しいはずですが……」


「それは、わからんぞ!」


 サリーさんに吠える彼。


「とりあえず、借用書か何かがあるなら見せてみな」


 ガルーダさんに要求されたビリーが、慌てて数枚の紙を取り出した。

 ちゃんとした、契約とかに使われる魔法紙に見えるな……


 もし本物なら、大魔導士と呼ばれるぐらいの一握りの魔法使いじゃないと、これに細工はできないはずだ……


 ガルーダさんが、その紙を読み始める。


「……王金貨一枚を借りていることになっているな。……このウィルってのが、あんたの孫の名。んで、こっちに書いてあるのがあんたの娘の名……。……そして、こっちが……詐欺師だな」


「……まだ詐欺師と決まってないですよね?」


 突っ込む、サリーさん。


「いや、こいつは詐欺師だな。この前から何度も何度も問題を起こしていたやつらだ。なんか変なトリックを考えついたんだろう」


 断言をした彼が、ちょいちょいと俺を手招きする。

 近くに寄ったら腕をつかまれ、そのまま別の部屋へ連れ込まれた。

 隣にあった、さっきの部屋と同じような、防音性の高い談話室だ。


「なあ、これトーマからのギルドへのお願いってことで、処理しちゃっていいかな? 貢献度の高い冒険者からの依頼ってことになれば、無茶しても、冒険者ギルド内での言い訳が立つんだよ」


 二人だけの部屋で、そんなお願いをされる。


「えっと……名前が出たり、目立つのは避けたいんですが」


「問題ない! 『薬草不足回復に貢献してくれる冒険者からのお願い』って伝えるから。しかも言うのは、俺の信頼している一人か二人だけだ! なあ、いいだろ……?」


 猫なで声が怖いのだが、まあ、ビリー達が助かるならいいんじゃないかな、とうなずく。


「よっしゃ、よく決断した! この礼は絶対するぜ!」


 元の部屋に戻る。


「話はついたぞ! 居所もわかってるし、子飼いの冒険者どもを連れて、ちょっくら話し合いに行ってくるわ! ビリーだっけ? お前らもついて来い!」


 そんな宣言をしてビリー達を連れてガルーダさんが出て行った。

 なんか「バトルアックスも持ってかないとな」とかつぶやいていたんだが……、話し合いなんだよね?


「不安です……」


 そんなサリーさんの独り言が、俺の気持ちを代弁していた。

 二人きりになった部屋。サリーさんが、ため息をつく。


「……とりあえず、いつもの薬草などをいただけますか?」


 どうやら気を取り直したらしい彼女に促され、俺は薬草の入った袋を渡す。


「あと、これ……ガルーダさんから頼まれていたもので、パープルサフって言うサフ草になります。あっているか確認してもらえますか?」


 紫色のレンコンのようなものを、いくつか渡す。

 間違っていたときのため、シルバーサフなど色違いのものも出せるように、準備だけはしていた。


「……拝見しますね」


 紫色のレンコンのようなものを受け取った彼女が、検分を始める。


「うん……大丈夫そうです」


 うなずいたことに、ホッとする。


「他の薬草の鑑定もしてきますが……もし、オーガの素材を売るつもりなら、そちらも一緒に鑑定しますよ?」


 ニッコリと笑ったサリーさんが、そんなことを伝えてきた。

 ……この前、オーガのツノをここで売ったからな。情報が共有されているようだ。


「……よろしくお願いします」


 俺は、C級冒険者が使うことを禁止されているような強い毒を使っている。

 そのことはバレていないといいんだが……

 そんな思いを抱きながら、ツノを渡した。


 それらを持って部屋から出て行く、サリーさん。

 戻ってきた彼女が持っていたトレイには、王金貨六枚と、その他の金貨銀貨が乗っていた。


「サフ草の報酬が、王金貨三枚になります」


 ……あのレンコンが?


「存在をほとんど知られていない薬草なのですが、基本、手に入らないものなので……」


 レンコンが三千万エーナになったことに驚愕する俺に、そんな解説をしてくれた。


 すごいな……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ