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22. 防衛兵器

「きゅっ?」


 倒れたオーガを見ていたら、そんな鳴き声が足下から聞こえてきた。

 うちのブラウニーだな……。待っていてくれと言ってあったのだが、ついてきてしまったようだ。


「きゅっ!」

「あっ、待て!」


 止める声を聞かず、トテテテーと、オーガに走っていくブラウニー。

 近くによって、ツンツンとオーガを突っついているな。


 ブラウニー達は『臆病だが、好奇心は旺盛』という性格と聞いていたが、こいつには臆病さが見当たらない……


「死んだフリとかしていたら危険だぞ」


 そんな風に伝えながらも恐る恐る近づいて、剣をオーガの首筋にブスっと刺す。

 解体用の道具を出し、オーガのツノ二本を採取すると、死骸を倉庫にしまった。


「それじゃ、こんな感じで狩りを続けようか。オーガは一体だけで活動しているヤツがいれば、案内してくれ」


「きゅっ!」


 こうして追加のオーガ一体、イノシシの魔物一体、鹿の魔物二体を狩った。

 もうちょっと森の奥に行かないと、オーガの数は少ないみたいだな……


「トーマ、お帰りーっ!」


 城の石壁にある門……そこで俺達の帰りを待っていたらしいイェタに、手を振り返す。


「ポイント、全部で百三十五ポイントになったよーっ!」


 興奮する彼女。


 ツノが残ったままのオーガなどはポイント化しないように伝えてあるが、今日は、そういう死骸はない。

 いつも通り、全部の魔物をポイント化したようだ。


 狩れた獲物は、イノシシの魔物が二体、鹿の魔物が三体、ゴブリン二体に、オーガが二体。

 あまっていたポイントも十ポイントあって、合計百三十五ポイントになった。


 ブラウニーの獲物を見つける能力のおかげで、大猟(たいりょう)だ。


「……とりあえず、投石機と大型連弩を作るための百ポイントは超えたんだ」


「うん! 無人で動く『魔動投石機』と『魔動大型連弩』も作れるよ!」


 彼女がうなずく。


「それに『樹木園』や『地下鉱石採取所』! 『謁見室』『宝物庫』『宿舎』『兵舎』が七十五ポイントで作れるみたい!」


 ……なんか、いろいろ作れるみたいだな。

 まあ、この前イェタが欲しがっていた魔動投石機、魔動大型連弩を作るつもりなんだが……


「どうする、トーマ? 謁見室とか面白そうなんだけど……」


 そうなの?


「どんな施設なんだ? なんか、玉座みたいなのが置いてある部屋はあったよね?」


「うん! あの部屋を強化する感じになるんだって! 城の主としての特殊能力がいくつか付加されるって書いてある!」


 ほー。


「例えば、魔力を使って、自分や城の住人の能力なんかを一時的に上げられるスキルとかがもらえるってあるよ!」


 あっ……、魔力を使うのか。


「……あんまり魔力は多くないから、俺向きの能力じゃないかもな」


 作ってみないと、わかんないけど……


「あと宿舎、兵舎って言うのは、城の『住人』に技術や知識なんかを与える施設みたいだけど……トーマは『城主』だから、当てはまるのかな……?」


 わかんないな。


「まあ、今回は魔動投石機とかで良いんじゃないかな? 城に俺がいないことも多いから、イェタ用の防備もあると安全かなって思っていたし」


 招かれていない人や魔物に対応する、人よけや魔物よけの結界のようなのはあるらしいが、それ以外にも何か欲しいと思っていた。

 無人で動く連弩なら、ちょうどいい。


「……なくても大丈夫なはずなんだけど……いいの? 『魔動投石機』と『魔動大型連弩』作っちゃうよ?」


「いいぞ!」


「やったーっ!」


 バンザイをした彼女が、ピッ、ピッ、と城の近くと石壁のあたりを指差す。


 その二ヶ所がキラキラときらめいて、後ろに箱みたいなのがついた投石機と、上に四角い箱のようなものがついた大型弩(バリスタ)が現れた。


 どちらも、なんかカラクリがついているな。後者が魔動大型連弩だろう。魔動投石機は地面の上、魔動連弩は石壁の上に備え付けられていた。


 急に現れた兵器に、足元のブラウニーも「きゅっ? きゅっ?」と驚いている。


「トーマ! 魔動大型連弩とか動かしてみて良い!?」


 ワクワクした目で問いかけられれば、うなずくしかない。

「わーい!」と喜んだ彼女が無人で動くという魔動連弩に指令を出した。


「行けーっ!」


 ボボボボボという音を出しながら、連続で撃ち出される、槍ほどもある矢。

 城の外にある木々に向かって撃っている。

 門の辺りから様子をうかがっていたのだが……すごいな。木々がへし折られていく。


 そして音もすごい……

「きゅー」と鳴いたブラウニーが、俺の体にしがみついてきたので抱き上げてやる。


「しかし、なんか矢の発射される間隔、異様に短くないか?」


 絶え間なく、つねに矢が撃ち出されているんだが。


「うん! 毎分二百四十発の矢を、ばらまくって書いてあった!」


 ……一秒に四発、槍のような矢が撃ちだされているわけか。


 連弩っていうぐらいだから、連続で矢が次々に発射されるんだろうなとは思っていたけれど、これは思った以上だ。


「矢は一日に二万五千発まで撃てるって! 射出した矢は、十分ぐらいで消えちゃうみたいだけど!」


 敵に再利用されないという意味でも、射出した矢が消えちゃうのは便利なのか?

 長いのか短いのかよくわからないが、百分とちょっとで、二万五千発全ての矢を撃ちつくしてしまう計算になる。


 ちなみに矢は、大型弩の上についている四角い箱から落ちてきているようだ。

 とても二万五千発が入るような大きさの箱ではないが、この城の設備だからな……


「魔動連弩は、城の屋根の上とか石壁の内側……地面の上とかにも設置できるみたい!」


 そう言った彼女が、城の屋根の上を指差す。


 石壁の上に設置されていた魔動大型連弩がキラキラときらめいて消える。そして城の屋根の上に、その魔動連弩が現れた。


「他の施設と同じく、設置場所の移動もできるのか……」


「うん! わたしやトーマが攻撃対象を指定すれば、その対象に向かって、矢をばら撒くみたいね!」


 なるほど……


「ある程度、兵器の近くにいないとダメけど、魔動連弩からどんな風景が見えるかもわかるよ!」


 へー、と思い、目をつむって意識を集中する。

 城の上にある魔動連弩がどんな風景を見ているのか、それが脳裏に浮かんだ。


 ……自分自身の姿が眼下に見えるってのも、変な感じだな。

 けっこう魔力を使う。


「ちなみに、あっちの城近くに置いてある魔動投石機は、どんな感じなんだ?」


 目を開けて、そんなことをイェタに聞いてみる。


「トーマも命令すれば、動かせるよ!」


 ……じゃあ、やってみるか。


 石壁を作ったときに、人()けの結界が広くなったりしている。

 城の周囲なら派手にやっても大丈夫だ。


「あそこの岩に向かって、投石をしてみてくれ!」


 石壁の外の大岩を指差すと、魔動投石機が勝手に狙いをつける。

 ブオン、という音を立て、俺の頭ほどある大きな石が射出された。


 一メートル半の石壁を飛び越え、見事、岩にぶつかると、標的の岩をバラバラに割り砕いていた。

 ……直径四メートルぐらいの大岩だったんだがな。当たった石も、なんか爆発したように見えた。


 ブラウニーも、「きゅー」と驚いているぞ。


「魔導投石機は、四秒に一発の間隔で『爆石(ばくせき)』っていう石を撃ち出すことができるみたいだよ! 一日に五千発ぐらいまで撃てるって!」


「……すごいな。命中率もいいみたいだし。……っていうか投石機って、こんなに簡単に、石を標的に当てられるものなのかな?」


「なんか、魔動大型連弩も命中率良かったよ!」


 ……そうなのか。


 ちなみに魔動投石機は、どんな風景を見ているんだろうかと集中してみたら、投石機の上、ニ、三メートルに浮かんで、あたりを見下ろしているような風景が脳裏に浮かんだ。


 視点も、上下に動かすことができる様子。

 普通なら石壁に隠されて見えない敵も、この高さからなら、問題なく見下ろすことができそうだ。


「城の主であるトーマが近くで魔力を込めてあげれば、『魔動投石機』は次の爆石()()の威力が! 『魔動大型連弩』は連射性能が、けっこう上がるんだって!」


 ……『けっこう』上がっちゃうのか。

 試し撃ちをして見ないとわからないが、俺の少ない魔力さえどうにかすれば、下手すると無敵の兵器になりそうだった。

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