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20. 石壁

 町の中。霊薬など、必要そうなものを買う。

 イェタの好きそうな食べ物や、ブラウニー用の道具類なども見つけた。


 今日は川原によったりで、ちょっと時間を使ってしまっている。

 森の中で日が暮れると面倒だから……、用事を済ませると、すぐ帰路についたのだ。


 途中、イノシシの魔物を見つけ襲い掛かったり、オオカミの魔物の群れに襲い掛かられたりしながら明るいうちに城にたどり着いた。


「トーマっ! トーマっ! ポイントが二十五ポイント貯まったよーっ!」

「きゅっ! きゅーっ!」


 出迎えてくれたイェタとブラウニーが興奮している。

 イェタは、新しい施設を作れるのが嬉しいんだろう。

 ブラウニーが興奮している理由はわからないが、多分、イェタの興奮が感染したのかな。


 今日倒したのは、ゴブリン一体に、イノシシの魔物。

 それとオオカミの魔物四体に襲われ、他のやつらには逃げられたものの、二体を返り討ちにしていた。


 前回の十ポイントも残っているから、合計で三十五ポイントを、彼女は持っているはずだ。


「……たしか、二十五ポイントで『石壁』が作れたんだっけ?」


 イェタが欲しがっていた城壁だ。


「うん! 外敵の攻撃を、すっごく(ふせ)ぐ石壁だよ! 人()けの結界なんかも効果範囲が広がったり、いろいろ良くなるんだって! 作って良い?」


 ワクワクしている彼女にうなずいてやる。


「もちろん」

「やったーっ! じゃあ、作るよ!」


 彼女が手を挙げると、城の周囲が、ぼんやりと光り始めた。

 その淡い光に包まれた周囲の木々が、次々と消えていく。

 そしてゴゴゴゴゴと静かな音を立てて、石壁が地面からせり上がってきたのだ。


 ――目の前に生えた、城を囲む、俺の首ぐらいの高さがある石壁。

 城壁というには、かなり低いな。


 村とかにある、魔物対策の防護壁みたいな感じなんだが……


「うわー! うわーっ! わたしに城壁ができちゃったよーっ!」

「きゅっ! きゅっ! きゅーっ!」


 ……喜んでいる彼女に、そんなことを言うことはできない。


 まあ、調理室もレベルアップできるみたいだし、それと同じで石壁もレベルアップできるかもしれない。あまり気にしないことにしよう。


「ねーねー、トーマ! わたしの城壁の位置、あそこでいいかな! もっと城に近い位置に移動することもできるみたいなんだけどっ!」


 そんな彼女の言葉。

 今は、城と石壁の間に、宿屋五件分ぐらいの隙間がある。


 城と石壁の間にあった森の木々は全てなくなっているので、石壁を動かすときに、木々が邪魔になることも無さそうだ。


「……もしかして、壁を城の近くに移動させると、何か良いことがあるのかな?」


 小さくなることで、人除けの結界が効きやすくなるとか、そんなことがあるのかな、と思ったんだが……


「特に無い! わたしが楽しいだけ!」


 ……そうですか。


「……まあ、何かに使えるかもしれないし、試してみるのはいいかもね」


 それに「わーい!」と喜びの声をあげ、彼女は石壁を動かしていた。

 念動力じゃないけど、遠隔で操作できるようだな。


 ずいぶんと、ゆっくりとした動きだが……

 ズゴゴゴゴゴ、と静かな音を立てて、近くに来たり遠くに行ったりする石壁は、なかなかありえない光景だ。ブラウニーもイェタも、それを見て喜んでいたよ。


「あっ、そうだ、イェタ。今日、冒険者ギルドでサフ草っていうのを手に入れられないかって聞かれたんだけど……」


 遊び疲れたらしい彼女に、ハスの葉によく似ているという、例の薬草について聞いてみる。


 彼女は、薬草園に生えている草について、全部ではないが、ある程度名前や効能などがわかると言っていた。

 何か知っているんじゃないかと思ったんだ。


「……サフ草って、薬草園のお池に生えている草のこと?」


「ああ……、やっぱり、あれがそうだったのか」


「んー……、でも何種類かあるみたいだから……」


 そうなのか……?


 ガルーダさんからもらった、サフ草の特徴が書かれた紙を改めて取り出す。


「ハスに酷似した池などに生える水草で……、根っこのところに、紫のレンコンみたいなのができるみたいなんだけど……」


「……一応、グリーンサフ、パープルサフ、シルバーサフ、ゴールドサフっていう名前の草が生えているよ」


 ……紫ってことだから、パープルサフかな?


「それぞれ、どんな特徴を持っているんだ?」


「うーんと、グリーンサフは他のサフの生存に必要で、水をキレイにするんだったかな?」


 なるほど……


「パープルサフも水をきれいにして、消臭剤になったりするんだって。異性を誘惑するフェロモンの力を高める香水の原材料にもなったはず」


 ……金持ちが好きそうな薬草だ。


「シルバーサフは魔法儀式などに主に使われるって書いてあったかな?」


 ほほう。


「ゴールドサフは、この中で一番貴重で……聖なる金色に輝くお酒ができるって書かれていたよ!」


 ……気のせいか、一番貴重な割には、けっこうどうでもいい能力な気がする。


「……とりあえず、掘り起こしてみるか」


 そう決断した俺。

 薬草園に移動し、池に入る。


 イェタに聞きながらパープルサフやシルバーサフを掘り起こしてみたところ、やはりパープルサフは紫のレンコンのようなものを根元にもっていた。


 シルバーサフのレンコンのようなものは銀色だから……、多分、このパープルサフで当たりだろう。

 念のため、他のも収穫しておいたほうが良いか?


 サフ草の納品については、他の薬草と一緒で良いと言われていた。

 次にギルドへ行くときに、持っていくつもりだ。


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