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16. 調合室

 ポイント化の検証を終えた俺たち。風呂に入ってさっぱりした。


「トーマ! 施設、どうする? 五十ポイントで調合室が作れるみたいだから、作る?」


 今日は六体のゴブリンをポイント化できている。

 それだけで六十ポイント……じゅうぶんに調合室分のポイントをまかなうことができていた。


 この調合室があれば、持っている毒を強化することができるかもしれないのだが……


「……ちなみに、今、作れる施設ってどんなのがあるの?」


「鍛冶工房と布革工房、木工工房! これは前と同じ! 新しく石工工房、調合室が作れる! 全部、五十ポイントだよ!」


 ほー。


「同じく五十ポイントで、調理場のレベルアップができるよ! 調理器具が増えて、レシピブックにあった『おこめ』っていう名前の食材なんかが定期的に支給されるようになるって!」


 あー、町でも見つからなかった食材か。

 イェタも食べたことが無いので、食べてみたいと言っていた。


「あと、城を囲む石壁が、二十五ポイントで設置できる! これを設置すると、作れる施設がいくつか増えるみたいだよ! すごいね!」


 なるほど、迷うな。


「あとは魔動投石機、魔動大型連弩っていうのを五十ポイントで作れる! かっこいいね!」


 ……彼女は、城壁や防衛兵器が欲しいみたいだ。

 食事も好きだから、調理場のレベルアップもやりたがっている気がする。


「……調合室じゃなくて、他のを設置しようか?」


 その言葉にフルフルと首を振るイェタ。


「強い毒があればトーマも安全になるかもしれないし、調合室がいい!」


 そうか……


「じゃあ、調合室の作成、よろしく頼むかな?」

「うん!」


 一緒に近くの空き部屋へと移動する。

 閉じきられた部屋の扉に、彼女が触ると、そこが光った。


「できたよー!」


 パカっとイェタが扉を開く。


「薄暗いな……」


 そこは、なにやらよくわからない金属やガラスの機材が所せましと置かれた部屋になっていた。


「薬品とかの自動濃縮機、ここにあるって!」


 俺の背ぐらいある、円筒状の銀色の箱を指差すイェタ。


「魔力を加えて、薬品の中の水とか、いらないものを消したりするみたいだよ!」


「……とりあえず、使ってみるか」


 フタがあったので開けてみるが、ここからどうしたらいいかわからない。


「中に薬品や霊薬を入れたビンを置いて、このボタン押せば良いみたいだよ! ビンのフタは閉めてても開けててもいいって!」


 なるほど……


「じゃあ、この城で採れたイール草から作った毒を二つぐらい置いて……」


 ……そういえば麻痺毒とかもあるな。

 さらに傷を癒す霊薬とか、唐辛子から作られた刺激臭を出す霊薬なども持っていた。


「予備があるものは、ためしに一つずつ置いてみるか」


 俺は毒や霊薬などが入ったビンを置き、魔道具のフタを閉める。


「じゃあ、ボタン押すよー!」


 イェタがボタンを押すと、ブーン、というかすかな音が魔道具から聞こえ始めた。


「大体、一時間か二時間ぐらいでできるって! この赤いランプが青くなってチンって鳴ったら終わり!」


 そのぐらいか。


「……じゃあ、その間に夕食くっちゃうか?」

「わーい! 食べるー!」


 一緒に調理場へ移動し、適当にハムカツというのを作りパンにはさんで、薬草のサラダやスープと一緒に食べた。


 サクサクしたハムカツは初めて食べる味で……、王都にこんな食い物を出す料理屋があれば行列ができそうだな。


 食事をとった俺たちは寝室へ戻る。

 寝かせていたブラウニーの様子を見るためだ。


「かわいーねー」


 ベッドの上のブラウニーを見て、とろけた表情のイェタ。


「まだ目覚めていないみたいだね……」


 そう言いながら、怪我の様子を見る。

 ベッドの回復効果とレドヒール草のおかげで、かなり良くなっているようだ。


 この様子なら、もう大丈夫そうだな……


「じゃあ、俺は、ちょっと毒の様子見てくるよ」

「わたしも行く!」


 二人で、濃縮中の、毒薬や霊薬の状態を見に行った。


「終わってるね!」


 青いランプが点灯し、ブーンというかすかな動作音もなくなっていた。


 中を見る。


「……傷を癒す霊薬は、丸い飴のようになっているな」


 ビンのフタをあけて中の飴みたいなものを取り出す。指でもんでみると、なんか弾力があった。


「うまくできたみたいだね! 『グミ状になっている』って書いてあるけど、……ぐみって何?」


 彼女にしか見えない、謎の板の文字を読んだイェタが、首をかしげている。


「……そんな名前の果物があった気がするけど、何なんだろうな?」


 俺も首をかしげながら、とりあえず、そのグミ状になった霊薬を試してみることに。


 ナイフを取り出して自分の腕を軽く切る。


 グミ状の霊薬を口に入れ、咀嚼。呑み込んだ。


「おお、問題なく治ったな」


「……この麻痺毒も『ぐみじょう』になっているね。トーマが作った毒は、良い感じに黒くトロっとした濃縮毒になっているよ! もう一回やったら『ぐみじょう』になるって」


『倉庫』から踏み台を出したらしいイェタが、それに登り、毒の状態を見ている。


 ギルドで買った麻痺毒は、グミ状になっちゃったのか……。

 剣や矢に塗りにくそうで、あんま使えない。


 イール草から作ったほうの毒は良い感じだ。

 量は二分の一ぐらいになっているが、これは次の狩りのときに効果を試してみよう。


「あと……唐辛子の霊薬がすごいことになっているみたいだけど……」


 ……本当だ。なんか液体が、赤く輝いている。

 その輝く液の中、小さな稲妻のようなものも走っていた。


「投げて割ると、良い感じに大炎上するって!」


 ……これは近くに燃え広がるもののない川辺とかで試さないとダメそうか。

 この森の木は、豊富な魔力のせいか燃えにくくはあるのだが、森林火災の可能性もありそうだ。


「……とりあえず、全部『倉庫』にしまうか」


 イール草の濃縮毒や、唐辛子の濃縮霊薬などを『倉庫』にしまった。


「毒とか唐辛子の霊薬は危険だから、『倉庫』から出さないでね」


 念のため、イェタに、そんな注意をしたのだ。

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