15. 手当て
城に気絶したままのブラウニーを持って帰った。
入り口で、出迎えてくれるイェタ。
――彼女に、『そのブラウニーも、ポイント化したい!』とか言われたらどうしようと、ちょろっと心配したのだが……
「なに、その子! かわいい!」
余計な考えだった。
ブラウニーを見て、目を輝かせている。
「寝てるの?」
「多分、気絶をしているんだと思う。ヒドい怪我をしているから」
「……じゃあベッドの上に寝かせる?」
……俺たちが夜に使っているベッドのことか。
使用感が抜群に良いのだが、上に乗っているだけで、傷や体力、魔力などを回復させる効果もある。
「そうだね、それが良い」
「うんっ! あっ、じゃあ、わたし、体に貼る薬草採ってくるね!」
タタタターっと走っていくイェタ。
レドヒール草は、よくもんで傷口に貼り付けても効果があるから、それを採りに行ったんだと思う。
俺はブラウニーを運び、ベッドの上に寝かせた。
……霊薬をしみ込ませた包帯代わりの布は乾いてしまっているな。これじゃあ、もう効果は望めない。
包帯を取り、患部や体を清潔にする。
「薬草とって来た!」
「ありがとう」
イェタが採ってきた薬草をよく揉んでから、彼……彼女か? とにかく、その子の体に貼り付けて、上から新しい包帯で縛った。
「……できるのは、このぐらいかな」
作業は終わったし、そろそろ死骸のポイント化をしようか、なんてことを言おうとしたのだが……
「かわいいねーっ」
とろけたような笑顔で、イェタがブラウニーを見ている。
「……魔物を狩ってきたんだけど、もうちょっと、ブラウニーを見ているかい?」
その言葉に、ちょっと迷った様子で、でも最後には「うん!」と元気よくうなずいたのだ。
今日はブラウニーを見つけて、すぐ帰路についた。
日が落ちるまでじゅうぶんな時間がある。
ブラウニーの薬草の交換もしたいし、イェタが満足するまでつき合うか。
そして、けっこうな時間が経つ――
「……そ、それじゃあ、ポイント化の検証をしようか?」
イェタは、まだまだブラウニーを見ていたかった様子だが、午後も半分過ぎてしまった。
彼女を促し、ゴブリン六体のポイント化のため、城の外に出ることにした。
服も汚れても良いものに着替える。強い毒も使ったから、俺もイェタも、血が素肌にかからないように気をつけないと……
「それじゃあ、体の部位が欠損した魔物のポイント化ができるかを調べたいんだけど」
……持って帰ってきた魔物、特に欠損がないんだよな。
イェタの目の前で、切断作業とかするの……?
さっき、やっとけば良かったと悩んでいたらイェタが首を、こてん、と傾げて聞いてきた。
「わたしも、うで、もぐの手伝う?」
そんな作業は、させられない……
「……イェタは魔物の解体とか目の前で見るのは大丈夫かな?」
「大丈夫ーっ!」という応え。
……んじゃ、やってみるか。気持ち悪そうにしていれば、やめれば良いし。
こんな感じで、魔物の解体作業とポイント化が開始された――
――そして作業の結果。
「……どうやら欠損部位は、ある程度までなら大丈夫みたいだな」
肝を取った死骸など、いくつか試してみて、ポイント化は問題なくできた。
死骸が消えても、肝などは消えずに残り、いつも通り十ポイントを獲得できていた。
これならば、オーガの肝を取ったり、カニの魔物の足を半分ぐらいもいでも大丈夫そうだ。問題なく残りの死骸から、ポイントを獲得できる。
冒険者ギルドへの魔物素材の納品も可能そうだった。
ただ、残念なことに、魔石を取った死骸のポイント化はできない様子。
魔石のない人間やエルフ、動物などの死骸もポイントにできないのだと思われる。
魔石を体内に戻してやればポイント化はできたが、損傷が激しいせいか、かなり集中が必要と言っていた。
バランバランになったような死骸は、ポイント化が難しい可能性がある。
試してみたいのだが、そんな死骸をイェタに触れさせるは気がひける。
それはそういう死骸ができたときに考えればいいやと、そんな結論を出した。
「……とりあえず、持って帰った死骸も六つ全部使っちゃったし、後片付けして体や服を洗おうか」
その言葉に「うん!」とイェタがうなずいた。