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14. 毒の強さ

 翌朝、魔物狩りに出発する俺は、城門でイェタにお見送りをされていた。


 今日は、まず毒の強さについて、『冒険者ギルドで買った麻痺毒』と『イール草から作ったオーガを倒した毒』、二つを比べる予定だ。


 帰ってきたら『体の一部が欠けた魔物の死骸でも、ポイント化できるのか』を調べる。――こちらについては、ツノぐらいなら欠けていても大丈夫というのはわかっているのだが。


「それじゃあ、いろいろ実験したいことがあるから……、今日は魔物の死骸のポイント化はしないでおいてね」


「うん! わかった! 無事に帰ってきてねーっ!」


 元気いっぱいの彼女に手を振り返しながら、ちいさな白亜の城をあとにした。


 獲物を探し、森の中を歩く。

 罠などを使えれば、そこを巡回すればいいだけなのだが、魔物の中にそういうのを解除するのが得意なヤツがいたりなどで、どうも使いにくいのだ。


 しばらくし――


「あれ……、今日はついているな」


 城から近いところで、ゴブリンの通った跡を見つけていた。

 こんぼうで、腰ぐらいの高さの木を叩いたらしい。木の枝が大量に折れている。


「足あとは……、これか」


 その足あとのすぐ近くで、何かを探すようにうろつく二体のゴブリンを発見した。


 これは、ちょうど良いな……。

 イェタの薬草園で採ったイール草から作った毒と、冒険者ギルドで買った麻痺毒。

 二つの毒を、二体のゴブリンで試すことができる。


(まずは、薬草園の……イール草の毒だ)


『倉庫』から出した毒矢を弓につがえ、一体を狙っていたのだが……


「グオ?」


 ――今日は、あまりついていない日のようだな。

 そのゴブリンが、たまたまこちらを見て、俺たちの目がバチっとあってしまった。


(くそー!)


 心の中で罵声を浴びせ、俺は矢を射る。


「グオオオッ!?」


 手で体をかばうゴブリン。矢が、ヤツの手のひらに当たる。


(くっ……、あそこじゃ、毒があってもダメか?)


 なんて思っていたんだが……


「ギュゥゥッ」


 そんな聞いたこともない声をあげたゴブリン。

 バタンと倒れ、一瞬で動かなくなってしまう。


「グオオオッ!」


 もう一体のゴブリンも俺に気がついたようだ。


(毒の効果に驚いているヒマはないな)


 今朝作った麻痺の毒矢を取り出す。


 走ってくるゴブリンに射ると、今度は肩に当たった。


(おっ、理想的な場所だ!)


 そんな風に喜んでいたのだが――


「グオオオッ!」


 ゴブリンは止まらず、俺の元へ。


 元気良く手に持つ棍棒を振り回した。


(効いてねーっ!)


 棍棒を、飛びのいて避ける。


 弓を『倉庫』にしまうのは、少し集中がいる――


 長剣を抜くため、手に持つ弓を捨てようとした瞬間に異変が起こった。急に、目の前のゴブリンが倒れたのだ……


(あっ、麻痺の毒が効いたのか)


 地面に倒れたゴブリンは、動かない体で忌々(いまいま)しそうに俺をにらみつける。「グオオオッ!!」とひときわ大きな咆哮をあげ、動かなくなった。


「グオ?」「グオグオ?」「グオ」「グオー」


 そんな鳴き声が聞こえ、四体のゴブリンが姿を現した。


(足跡は二体だけだったが、仲間がいたか!)


 まあ、人間でも、薪拾いのためとかで二人だけが別行動するとかあるからな。


 俺は、真ん中でえらそうに指示を出しているヤツに毒矢を射ると、逃げ出した。


「グオーッ!」「グオグオ!」「グオオオッ!」


 リーダーっぽいのは仕留めたが、残り三体は逃げない様子。

 木々の中を逃げ回りながら、一体ずつ確実にしとめていき、やつらを全滅させた。


「終わったか……」


 ゴブリンの相手は慣れているから、逃げ回る中、麻痺毒の矢を射たり、イール草の毒矢を射たりで、毒の効果を確かめることもできた。


 やっぱりギルドで買った麻痺毒は、効くのに、ほんのちょっとの時間がかかる。

 イェタの薬草園で採った薬草から作ったイール毒のほうが、効果は高いようだ。


「麻痺毒は、しばらく使わなさそうだな……」


 ちょっと残念に思いながら、ゴブリンを『倉庫』に入れる作業を開始した。


「あれ……?」


 リーダーっぽいやつを倉庫に入れようと近づいたところ、そいつが棍棒を持つのとは逆の手に、何かを抱えているのに気がついた。


「これは……『ブラウニー』か?」


 手のひら二つ分ぐらいの背の高さを持つ、耳がとがった小人……一応、心臓に魔石を持つ魔物だ。

 このブラウニーは、小麦色の肌をもっている。


 今は目を閉じているからわからないが、目は白目の部分も含め、黒一色だったはず。


 臆病だが、好奇心は旺盛というよくわからない魔物。――手先が器用で、森に仕掛けた罠などを、遊び感覚で解除してしまうという。


 ゴブリンたちの今日の食べ物だったのだろうが……


「こいつは、『従魔』の首輪をしているのか」


 星型の紋章がある首輪は、魔物使いにより慣らされた魔物である証。

 人の味方だ。


 ただ、この首輪、革ではなく、木で作られている。

 エルフは、小鳥の『従魔』とかにツタから作った首輪をつけるって聞いたことあるが……


 ダークエルフとかの従魔なのか?


「しかし、ケガがヒドいな……」


 ゴブリンの腕からブラウニーを救出し様子を見たのだが、胸の骨などが折れていた。

 飲むよりもかなり効果は薄くなるが、霊薬を体につけて回復力をあげることにする。

 いつも持ち歩いていた包帯に霊薬をかけ、ケガがヒドそうな場所に巻いた。これで出血などは止まるはず……


 ブラウニーの従魔はおとなしいことで有名だから、連れ帰っても大丈夫だろうか。

 衝撃を与えないよう、そいつを抱きかかえ、城への帰路についた。

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