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やっぱり避妊や性病対策に一番なのはコンドームだ、ゴム製のコンドームそのものはこの時代はないけどな

 さて、花見も終わり見世は通常営業に戻る。


 脱衣劇場の宣伝効果や花見の際にうちの見世の女たちが堤で着飾って騒いでいたのを見た男たちがこぞってやってきているおかげで売上は順調だ。


 さて、性行為を生業として行う遊女にとって怖いのは性病と妊娠だな。


 そしてこの時代の性病の中でも怖いのは梅毒。


 この時代にはまだエイズはないので致死的な性病は梅毒くらいだが、他にもヘルペスやクラミジア、淋病なんかが有名だな。


 俺は見世が始まる前に広間に遊女を集めて言った。


「今日からみんな(かさ)や妊娠防止のために茎袋を使うことにするぞ。

 みんなに一日一個渡すからやるときは客のあそこにかぶせてくれ。

 客が拒んだら出入り禁止、もしくはそいつに身請けしてもらう。

 いいな、茎袋が破けたりしないように注意しろよ」


 そう言って一人一人に手渡していく。


「あい、わかりんした」


「とりあえず茎袋の代金はこっちで持つ。

 だからかならず使ってくれ」


「それはありがたいこってす」


 茎袋というのはやはり南蛮人が持ち込んだコンドームのようなもので動物の皮や魚の浮袋で薄く作られたものだ、これはかなり高価なものではあるが、性病や妊娠の危険を考えればもとは取れるだろう。


 なにせ梅毒や堕胎は命に関わるし、妊娠中は働けない。


 梅毒は比較的新しい性病でもともとはアメリカの西インド諸島の風土病とされている。


 コロンブスが西インド諸島に到達し現地の人間を殺戮&陵辱しまくって、スペインに帰国した際、その船員たちがヨーロッパに運んだといわれているが、一種の呪いのようだと思うのは俺だけか?


 日本には十六世紀の半ば南蛮船の来航によって鉄砲伝来とともに日本に上陸した船員が女を買うことで広まった。


 ただし長崎や大阪、京都などの西日本に比べて東日本は南蛮人が来ない田舎なので広まるのは割りと遅かったようだが。


 現在は梅毒は、かさと呼ばれている。


 瘡と名がつく病気は天然痘や麻疹などもそうなんだが、この細菌に感染し発症すると感染部におできのようなかたまりができ、これがかさぶたのようになる。


 この瘡は潰れると、痛みを伴うがしばらくするとなくなって一見治ったように見えてしまう。


 実際は一次症状が収まって潜伏しているだけであるのだが、江戸時代には顕微鏡もないので今の医学知識ではこれで治ったと思っていたわけだ、一度瘡にかかって治った遊女は、二度と梅毒にかからないとされ、客の方でも病気のない遊女として認知された。


 現代であれば血液検査などで簡単に発見できるし、抗生物質で簡単に治るのだがな。


 基本風俗店は一ヶ月もしくは2ヶ月おきに在籍してる風俗嬢に性病検査をさせて、性病が発見されたら完治の証明が出るまで仕事はさせない。


 なんで風俗嬢のほうが素人でやりまくってる女性より性病を持ってる可能性は少ない。


 ちゃんとした店であればだがな。


 はなしがそれたが、そんなもんだからもっと後の時代では見世からも梅毒にかかったら一人前の遊女として扱われ、遣手は客にどんどん勧めた。


 おまけに病気が潜伏している影響か、妊娠しにくい身体になっているから、見世としては大変重宝したわけだ。


 こうして、潜伏しているだけの梅毒は男にどんどん広がっていったわけだ。


 客の方でも、梅毒にかかることは一種のステータスで、遊びを極めているという目で見られたからなおさらだ。


 しかし、何年か後、再び症状が現れると、今度は皮膚にゴム状の腫瘍ができて、その部分の肉が落ちる。


 鼻が落ちるといわれる梅毒の末期的な症状はこの時期だな、このときはすでに内臓などにも腫瘍が広まっていて、やがて神経系が冒され、動けなくなり死に至る。


 こういう症状が出ると遊女としての価値はなくなり、吉原を追い出されたり、食べ物も与えられず物置に押し込められて餓死させられたり、生きたまま投げ込み寺へ捨てられたりという、悲惨な結末が遊女を待っていた。


 もっともこの時代に江戸にはまだ梅毒はあまり広まってないからそうなる遊女も少なく、死因は結核や脚気のほうが多かった。


 また遊女が病気になる理由は偏りすぎた食事と慢性的な睡眠不足によるところも大きい。


 睡眠不足は昼見世の廃止で、食事は俺が変えたのでだいぶましになったと思うが。


「所で、瘡や胸病みの症状に思い当たるやつがいたら早く言ってくれよ。

 優先して納豆や味噌を食ってもらうからな」


「えー」


「そう言うな、納豆や味噌をたっぷり食べれば病も遠ざかるんだ」


「あい、わかりんした」


 日本は発酵食品の宝庫だが中でも納豆は健康維持に役に立つ。


 納豆菌はとても生命力の強い細菌でわらを一度煮沸消毒して、納豆菌以外の細菌を煮殺してから、茹でた大豆を包むことで発酵させるのだが、納豆として食べた納豆菌は体の中で梅毒や結核などの細菌などを殺してくれる、だから納豆を頻繁に食べるものは病にかかりづらい。


 その他にも納豆は血液をサラサラにして血管を柔軟にして循環器系の病気の予防にもなる。


 大豆にはイソフラボンが含まれているので女性ホルモンを補うこともでき、米と一緒に食べると理想的なアミノ酸比率になる。


 その他にも日本酒、味噌、醤油、酢、漬物などは麹や乳酸菌の力を使って発酵させるが、もちろんこういったものも体に良い。


 塩分のとり過ぎというのも精製した塩でなければそこまで高血圧とかにはならないはずだ。


 まあ、健康には食事と睡眠とある程度の気晴らしが大事ってことさ。


 そしてかかってから何とかするんではなく、かからないように予防した方がいいのは言うまでもないな。

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