アレキサンダーさん、ごめんなさい。
それから俺たち二人は……つまり、俺とアレックスは……なし崩しに同棲を始めた大学生カップルのように、なし崩しにパーティーを組んで森の中を歩いた。
「アレキサンドラってさあ……」
森を歩きながら俺はアレックスに聞いてみた。
「ひょっとして、アレキサンダーって名前の女性形?」
アレックスは、何を今さら言っているのか、といった感じで答えた。
「当たり前だっぺ。アレキサンドラはアレキサンダーの女性形だっぺよ」
「アレキサンダーって、あの超有名な?」
これまた、アレックスは何を今さら、って感じで言った。
「他に誰が居るっぺか」
き、きたぁー!
これは、ひょっとしてSF映画の金字塔「モンキーの惑星」的な設定か?
俺の生まれた地球とこの世界には、何らかのつながりが……
「あれだよね、古代の大王の……」
「はあ? なに言ってるっぺか? アレキサンダーと言えばメッサー163を設計したアレキサンダーに決まっているべ」
「あれ?」
ち……違うのか……やっぱり、ここは地球じゃないのか……
ま、偶然ってあるよな……日本橋から熊谷まで通じる国道17号線なんていうのもあったし。
「ところでアレックスって、お姫様なんだろ? こんな森の中で一人で何してんの?」
「婿探しを兼ねた武者修行だっぺ」
「む、婿探し……」
「そうだっぺ。僕、小さい頃は男の子として育てられたっぺ」
「へ、へええ……」(それで今でも僕っ娘なのか……)
「パパは、本当は国を継ぐ王子が欲しかったんだけど、生まれたのは5人連続で女の子だったっぺよ。……それで、最後に生まれた僕を王子として育てたんだけど、幸か不幸か、11才くらいから、おっぱいがドンドン大きくなったっぺよ。今じゃ、4人のお姉さまの誰よりも僕のほうが大きくなったっぺ……おっぱい。……それで、王さまであるパパも方針転換をして、5人の姫の中で、一番早く婿を見つけてきた者に国を譲ることにしたっぺよ」
「ははあ、なるほど」
やばい……すげぇ、やばい……
これ、ひょっとして、逆玉フラグじゃね?
こりゃ、地球に帰りたいとか言ってる場合じゃねぇぞ。
上手くすりゃ、石油産出国の王子さまみてぇに、フェラーリとランボルギーニ日替わりで乗り回す生活にズームインじゃねぇか。
「あ、あの……アレックス……いや、アレキサンドラさん……そ、そのお婿さんの条件って……」
「なーに、大した事じゃないっぺよ。国を治めて行くだけの才能と人徳の持ち主って事だっぺ」
いや、それ、すごく大変そうなんだけど。
「それから、王家の子孫繁栄ために、若くて健康な男子である事が望ましいっぺね」
それは、自信ある……とくに濃度には自信がある。
いつだったかの一人エッチで、あまりに濃度高すぎてゼリー状だったことある。
「それから、イナカーノ王家に代々伝わる掟があるっぺ」
「お……掟?」
「偶然、全裸を見てしまった時は、その人のお嫁さんになるしかないっぺ」
うひょひょーい……逆玉フラグ第2弾きたーっ!
これで、偶然を装ってアレックスの全裸を見ちゃえば……「もう! 責任取ってよね! ぐすんっ」みたいな展開が、俺を待っているに違いない!
「あ、勘違いしないように言っておくけど、結婚の条件は『僕が男の人の全裸を偶然見てしまった場合、責任を取って結婚する』だっぺよ」
「……え?」
「だから、僕のほうが、男の人の全裸を見たら、責任を取ってその男の人と結婚するっぺよ」
へええ……そ、そうなのか……め、めずらしい掟だな……
しかし、と、いうことは、今ここで全裸になって強制的にアレックスに俺のチンコを見せ付ければ……
「それから全裸を見るのは、あくまで『偶然』じゃないと駄目っぺよ」
「偶然じゃなかったら……どうなるの?」
「この前、僕の国を乗っ盗ろうとして、お姉さまの目の前で故意に全裸になった隣国の王子が居たっぺよ」
「ど……どうなったんですか?」
「さあ……くわしくは知らないけど、パパの命令で処刑されたっぺ。……確か、スズメバチの巣の横に全裸で縛り付けて、ソーセージにハチミツを塗っておけば、ハチが大好物のミツに群がって、どうのこうの言ってたっぺ……僕には、どういう意味か分からなかったけど」
キュッ、とした……俺のソーセージが、キュッ、とした。
強制的にアレックスに俺のソーセージを見せつける作戦は、却下だな……
そんな、こんな、しているうちに、森に夕暮れが訪れた。
「さあ、今日は、ここら辺で野宿するっぺ」
「の……野宿?」
「当然だっぺ。冒険者が森の中で一夜を過ごすと言ったら、野宿しか無いっぺ。
さあさあ、ドー君も焚き火に使えそうな枯れ枝を集めて来るっぺよ」
たくましいお姫さまだな……
それから俺たちは枯れ枝を集めて、火を熾した……と、言っても、火を着けたのは俺じゃなくてアレックスだ。
……あれ?
アレックスのやつ、火打石をどっから出したんだ? 見たところフル・アーマーに見せかけて、巨乳と巨尻まわりだけアーマーの無い鎧にはポケットのようなものは見当たらないが……
「さっき、焚き木を集めてるとき、きれいな小川を見つけたっぺよ。僕、水を汲んで来るよ」
そう言って、アレックスは森の中へ消えた。
水を汲むって言ったって、どうやって汲んで来るんだ? 容器も無いのに。
ところが帰って来たアレックスは、中ぐらいの大きさの鉄なべを両手で持っていた。
どこから持って来たのか、さっぱり分からなかった。
アレックスは、長い棒きれを焚き火の上で組み合わせてツタで縛り、そこから火の上に水の入った鉄なべをぶら下げた。
しばらくして、鍋の湯がぐつぐつ沸騰してきた。
それを確認したアレックスは、いきなり、アーマーで保護されていない自分の巨乳の谷間に手を突っ込んだ。
「え?」
しばらくして巨乳の谷間から抜いた手には、干し肉の欠片が何枚か握られていた。
「ア、アレックスッ、おまえ、そ、それ」
「は?」
「そ、その巨乳の谷間……」
「ドー君、四次元ポケっとんの魔法、知らないっぺ?」
「よ、四次元ポケっとん?」
「巨乳のみが使える魔法。おっぱいの谷間に無限の空間があって、何でも出し入れできるっぺよ」
「へええ……べ、便利なんだね。巨乳って」
「そんなこと無いっぺよ。不便な事の方が多いっぺ。肩が凝るし」
「そ、そうなんだ……」
「それよりドー君、大発見だっぺ」
「大発見?」
「さっき、水を汲みに行ったとき、偶然、温泉を見つけたっぺよ!」
「お、温泉……」
「晩ご飯が終わったら、交代で入るっぺ。こんな森の中で温泉に入れるなんてラッキーだっぺ」
それから、俺たちは、アレックスが作ったスープをアレックスが巨乳の谷間から出したお玉でアレックスが巨乳の谷間から出したお椀によそって、簡単な食事とした。
そして交代で温泉に入ることになった。