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3.プロローグ 3

「さて、お主にはこうじゃ」


 神様の声と共に、俺の目の前のカードが全てめくれ上がった。

 おおぅ……。

 なんというサービスだろうか。

 まさに選びたい放題。

 裏向きのカードから一枚を選んだ人達には、なんだか申し訳ない。


「先ほどの者にも言った通り、星が多いほどよい能力じゃ。

 さあ、どれでも好きなのを選ぶがよい。

 無論、時間は気にせんでいいぞ? 他の者と違って選ぶのには時間がかかるからのう」


「は、はい!」


 俺は神様を前に気合いを入れすぎたせいか、少し上ずった声で返事をした。

 それにしても、このカードの数々。

 俺はまず一番左上を見た。


【剣の才】【小】【★】

【剣の才】【中】【★★】

【剣の才】【大】【★★★】

【剣の才】【特大】【★★★★】


 距離はあったが、書いてある詳細は不思議なことにその場からはっきりと見えた。

 左上には【剣の才】が並び、右に向かって【槍の才】や【弓の才】など、おおよそ武器使用に関するカードが並んでいる。

 お、こんなのもあるのか。


【武器全般の才】【小】【★★】【武器全般の才】【中】【★★★】

【武器全般の才】【大】【★★★★】

【武器全般の才】【特大】【★★★★★】


 しかし【小】で星は二つ、【特大】でも星は五つ。

 最高は星が十だといっていたから、その半分では少々頼りない。

 俺は次のカードへと視線を動かす。

 体力、馬術、調教など様々なカードか並び、そして、むっと目を留めた。


【火の魔法の才】【小】【★★】【火の魔法の才】【中】【★★★】

【火の魔法の才】【大】【★★★★】

【火の魔法の才】【特大】【★★★★★★】


 魔法……。

 胸が躍る言葉である。

 武器系の才よりも、星が一つ上なところを見る限り、魔法>武器、なのだろうか。


 そこからまた目を流す。

 火、水、木、金、土、という魔法の種類。

 どこの一週間だと突っ込みたくなった。

 その他、風、光、闇、雷や召喚などなど。

 さらに魔力の大きさについてのカード、そして――。


【魔法全般の才】【小】【★★★★】

【魔法全般の才】【中】【★★★★★】

【魔法全般の才】【大】【★★★★★★】

【魔法全般の才】【特大】【★★★★★★★】


 おお、これは凄い。

 小でも星四つ、特大なら星七つ。

 今までで一番多いぞ。

 魔法という超常的な力に対する憧れもあるし、これはキープだな。

 俺はさらに目を隣に移す。


「……ぶふっ!」


 神様の前でありながらも思わず噴き出してしまった。

 そこにあったのは――。


【普通の剣】【★】


 これは反則だろう。

 こんなの貰っても、かなり困る。おまけにその隣が――。


【かなりいい剣】【★】


 かなりいい剣と普通の剣の星の差が無いのだ。

 つまり、普通の剣は実際のところ星一つよりも価値がないと思っていいだろう。

 こんなカードを引いた日には……ああ、そういうことか。

 やり直しを要求した人は、多分これ系統を引いたんだろうなぁ。

 ちらりと他に目をやれば、普通の盾なんてのもあるし。

 もちろん星は一つ。

 ちなみに他の剣はこんな感じだ。


【英雄の剣】【★★】

【勇者の剣】【★★★】

【伝説の剣】【★★★★★】


 伝説の剣だけ星の上がり幅が高いが、それ以外は勇者の剣ですら【火の魔法の才】【中】と同レベル。

 いかにいい剣を持っていようと使い手次第ということなのだろう。

 では、伝説の剣はなんなのかというと、そこの説明書きにはこう書いてあった。


【森羅万象の力を宿す剣。これをもって念じれば、あらゆる魔法を放つことができる】


 なるほど。

 剣のあり方を飛び越えた剣。

 これならば、星が五つでも納得だ。

 とはいえ、欲しいとは思わないな。

 星はたった五つ。【魔法全般の才】【特大】が星七つだったことを考えれば、魔法の威力は弱そうだし。


 さて、剣の次を見ると、剣以外の武器が並び、その後は防具が並んでいる。

 その次には薬や雑貨。

 それが終わると、犬や猫、馬や羊などの動物の名前が並ぶ。

 たとえば馬はこんな感じだ。


【普通の馬・鞍つき】【★】

【良馬・鞍つき】【★】

【名馬・鞍つき】【★】

【稀代の名馬・鞍つき】【★★】


 説明文を読むと、無条件で選んだ者に従属するらしい。

 ちなみに猫などの星は全て一つだった。

 やがておとなしそうな動物の名から猛獣の名前へと変わり、その後は物語の中でしか聞いたことのない獣の名前へと続く。

 そして動物系最後のカードはこれである。


【レッドドラゴン】【★★★★★★★】


 いかにもヤバそうであるが、そもそもドラゴンなんてペットにしても、食料とかに困りそうだし、論外だろう。


 これで動物系のカードは終わり。

 カード全体を見ても漸く最後が見えてきた。

 次はこれだ。


【ステータスオープン】【★★★★★】

【英雄になる】【★★★★★★】

【勇者になる】【★★★★★★★】

【魔王になる】【★★★★★★★★】

【ダンジョンマスターになる】【★★★★★★★★】


 明らかに星の格が違う。

 というかステータスオープンってなんだよ。


【ステータスオープン】【★★★★★】

【自分や他人のステータスを覗ける能力。スリーサイズから隠された才能、病気に至るまで全てを明らかにできる】


 ああ、これは結構いいかもしれない。

 もし俺が医者だったりしたら、かなり重宝しそうな能力だ。

 他の【英雄になる】【勇者になる】【魔王になる】は言わずもがなだろう。

 【ダンジョンマスターになる】の説明は――。


【ダンジョンマスターになって最強のダンジョンを造り出せ。

 ダンジョン内で死んだ探索者の魂を使って、強いモンスターを産み出せるぞ。

 魂の質が重要なので、探索者は飴と鞭を使い分けて、しっかりと成長させてから殺せ!】


 えぇー。

 なんて物騒な能力なんだろうか。

 とてもじゃないが平和な国家で生きていた俺には無理な能力である。

 他には……。


【大臣になる】【★★★】

【領主になる】【★★★★★】

【王になる】【★★★★★★★】


 この【王になる】の星の多さが示すところは何か。

 【勇者になる】と同等の星七つ、これは王が世を支配して、国を成しているということだろう。

 多勢に小勢は勝てず、最低でも勇者クラスでない限り、王と相対することはできない。

 つまり、どんな才があろうとも個人の力では、たかがしれているということだ。

 もしかしたら俺が想像している以上に魔法などは弱く、現実的な世界なのではないだろうか。

 そしてまだ残っているカードがある。


【瞬間治癒能力】【★★★★★★★★★★】

【不老になる】【★★★★★★★★★★】


 いちいち数えなければならないほどの星の多さ。

 星の数は十。

 すなわち最高の能力。

 どちらも命に直結する力であり、どちらも素晴らしいと言わざるを得ない。

 【瞬間治癒能力】は命の危険がグッと下がることだろう。

 【不老になる】はうまくすれば永遠に生きられるということである。

 しかし、星が十のカードはもう一つあった。

 俺はその最後の一枚を見る。


【町をつくる能力】【★★★★★★★★★★】


 ……なんなのだろうか、町をつくる能力とは。

 俺は説明文を読む。


【その名の通り町をつくる能力。初期資産は一千億円。お金と引き換えに町を作ります。

 初期の時代設定は江戸。

 人口一万人を超えた際に、一兆円を投資すると時代設定は現代になります。さらに人口十万人で百兆円を投資すると……。

 うまく町を運営してお金を稼ぎ、町を発展させていこう!】


 ……神様は中世ヨーロッパの世界だと言った。

 よくよく考えてみれば、現代社会に生きていた俺にとって、中世の時代など、たとえ王になったとしてもゴメンこうむりたい話である。

 数々の文明の利器に娯楽や食事。

 何もかもが足りない。

 はっきりいって、現代社会の一般市民は中世社会の王よりもはるかにいい暮らしをしていると断言できる。

 住めば都、という言葉もあるが、このカードを知ってしまった以上、俺はもう一度あの物で溢れていた世界で暮らしたいと思った。


「決めました、これにします!」


 俺は迷うことなく、【町をつくる能力】のカードを選んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者よりも魔王の方が格が上なんだな
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