挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
町をつくる能力!?〜異世界につくろう日本都市〜 作者:ルンパルンパ
4/108

4.町づくり 1

 俺がカードを選ぶと、神様は言った。

「では、送るとしよう」

 それと同時に、俺はまばゆい光に包まれて目を閉じる。
 神様に一言お礼を言いたかったが、そんな間はなかった。
 やがて、まぶたの裏から光の気配がなくなり目を開く。

「凄い……」

 そこは地平線が見えるような平野だった。

 俺はキョロキョロと辺りを窺う。
 大地は荒れていると表現するべきか、むき出しになった地肌にポツリポツリと背丈の短い草が申し訳程度に生えていた。
 空を見てみれば、雲一つない壮大な青空が広がっている。

 俺は、まるで押し潰されるような圧迫感に襲われた。
 この広大な大自然には誰もいない。
 俺だけなのだ。
 まるで世界に俺しかいないようにただ一人。
 喉はからからになり、恐怖で足がブルブルと震える。

 すると、ふと、手にあったカードがなくなっているのに気がついた。
 その時のこと。

《本拠地をつくってください》

 目の前に文字が浮かんだ。
 なんだ?
 いや、わかる、わかるぞ。
 俺の頭の中には、今までになかった知識があった。
 それは『町をつくる能力』について。
 さしあたって、この目の前の文字は、俺の脳が作り出しているもののようだ。
 俺は新たに得た知識に従って『町データ』を呼び出す。

【町長】藤原信秀
【資金】1000億円
【時代設定】江戸
【町】無し

 空中投影ディスプレイとも言うべきだろうか。
 俺の目の前に四角い画面が登場した。
 それは俺の『町データ』。
 俺の能力のステータスともいうべきものである。

 さあ上から見ていこう。
 まず【町長】には藤原信秀という昔ちっくな俺の名前。
 この名前のせいで、今まで『大名』だとか『侍』だとか変なあだ名をつけられてきたが、一番酷かったあだ名は『馬鹿殿』である。

 次に【資金】の1000億円。
 これはデータ上のものであり、手元にあるわけではない。
 この1000億円をやりくりして、町をつくるのだ。

 【町】はまだつくってないので無し。

 【時代設定】の『江戸』については、『町をつくる能力』における商品購入に関わってくる。
 これは、俺の今いる場所が江戸時代ということであり、江戸時代の物を適正値で買えるということだ。
 では、現代の物を買いたい場合はどうか。
 当然、江戸時代には現代の物はないわけで、現代の物を買う場合、その時代差を埋めるために、本来の値段の百倍の金を支払わなければならないのである。
 たとえば国民的10円棒お菓子を買おうと思ったら、一本につき1000円払わないといけないということだ。

 そして、その【時代設定】を『現代』にするにはどうすればいいか。
 それには、カードを選んだ際の説明文にもあったように、1兆円を投資しなければならない。
 ちなみに投資といっても、データ上にある資金がただ消えるだけである。
 果たしてこの1兆円を高いと見るか安いと見るか。
 まあ、現代の技術がたった1兆円で手に入るのなら安いと見るべきだろう。
 ただ、一個人にはやはり膨大な額である。

 さて、とりあえず本拠地をつくれという指示に従うことにする。
 俺は『町データ』の下部にあるコマンド群の中から【商品カタログ】をタッチした。

【商品】
・建物
・家具
・食料
・調理器具
・衣類
・車両
・雑貨
・娯楽
・軍事

 この中から『建物』を選ぶ。

・江戸の建物
・平成の建物
・未来の建物

 ふむ、とりあえず『江戸の建物』を選んでみよう。

・城
・士族の家
・庶民の家
・その他

 『城』を選ぶ。

【江戸城】1000億円

 高すぎる。
 他にも【大阪城】800億円など、馬鹿みたいな額が並んでいた。
 ページを戻って、『士族の家』を選ぶ。
 ズラリと表示される屋敷の見本画像。
 上は数千坪、数億円。
 下は数十坪、数百万円。
 武士社会の大きなヒエラルキーがひしひしと感じられる。
 全体的に少々安すぎる気もするが、土地の値段がタダならばこんなものか。

 再びページを戻って、今度は『庶民の家』を選ぶ。
 田舎っぽさ溢れる茅葺きの屋根をした住居に、商家といった感じの瓦屋根をした土蔵造の住居、果ては幾つもの部屋が連なった、江戸時代の集合住宅である長屋等々。
 多様な住宅の見本画像が並んだ。
 その値段は高いものでも1000万円を超えるものはなく、非常にお手頃な価格となっている。

 一方、再びページを戻って『その他』のカテゴリー。
 そこには風呂屋、旅館に加え、寺や神社などの建物が並んでいる。
 値段も様々で、大きな神社などは、数億円規模であった。

 さて、これで江戸の建物は全て見たわけだが、ここまで一通り見たのはただの興味本意であり、元々住居は現代の物にしようと決めている。
 というわけで、ページを戻って『平成の建物』を開いた。

・住居
・施設

 『住居』を選択し、次のページへ。

・一戸建て
・集団住宅

 『一戸建て』を選択し、次のページへ。

・木造
・鉄骨造
・鉄筋コンクリート造
・プレハブ

 勿論選ぶのは、『鉄筋コンクリート造』だ。
 耐火性、耐震性に優れ、デメリットといえば金がかかることくらいだろう。
 すると無数の住宅映像が並び、その中から三角屋根の全体的にねずみ色っぽい家を選ぶ。

 さらに家の仕様をオール電化にして、完全自家エネルギー型住宅にする。
 完全自家エネルギー型住宅とは、単純に言えば、外部からの電力やガスを遮断した状態でも太陽電池のみで必要なエネルギーを賄うという、この世界にあってはまさに夢のような住宅のことである。
 太陽パネルの発電容量は10kWh、蓄電池の容量は12kWh。
 定格出力が3kWという優れもの。
 その分、面積をかなりとる。
 15坪分の太陽パネルが屋根を占領することになる。
 そしてなによりも値段が高い。
 家の代金に加えて、【太陽パネル】4億円(定価400万円)と【蓄電池】2億円(定価200万円)がかかるのだ。
 まあ、買うけども。

【完全自家エネルギー型住宅・二階建て・延床坪数50】46億円(定価4600万円)。

【購入しますか?】【はい/いいえ】

 俺は【はい】を押した。
 すると今いる場所の3Dマップが現れる。
 指を動かして俺のすぐ隣を選んだ。

 ズズズズズという唸るような音。
 わっ、と驚いて隣を見れば、地中から土と草を押し退けて、非常にゆっくりな速度で土色の泥のようなものが盛り上がっていく。
 おそらくこれが家になるのだろう。
 俺は家ができ上がる様子を、暫し呆然と眺める。

「……」

 それにしても遅い。余りにも遅い。
 能力に関する知識によると、安全面を考慮してのことのようだが、泥の盛り上がりは遅々として進まない。
 この分だとあと三十分以上はかかりそうだ。
 このままボーッと眺めているのもいいが、それでは退屈が過ぎる。

 俺は新たに『町データ』を呼び出すと、【商品カタログ】の【家具】から3万円(定価300円)のパイプ椅子、さらに【娯楽】から2万6000円(定価260円)の週刊漫画雑誌を買って、暇を潰した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ