46.もう訳分からんですが…バリンは「刺激のあるチョコレート臭」。リジンは「パン臭」だっ!!
メイラード反応の続きです。
パンとお肉、それぞれを焼きます。
「香ばしい」
と両方表現できますが、焼いた時の匂いや香りはまったく異なります。
これはパンとお肉に含まれるタンパク質(アミノ酸)が違っていることが原因です。
パンは小麦なので植物性、一方お肉は動物性のタンパク質がメインとなります。
食材が持つアミノ酸の種類によって、メイラード反応でできる香り・臭いが違うということが、実験などで確かめられています。
具体例を挙げましょう。
バリンという名のアミノ酸があります。
これと糖類を混ぜて180度で熱します。
すると茶色く変色するとともに「刺激のあるチョコレート臭」がします。
メイラード反応によって「刺激のあるチョコレート臭がする化合物」が発生するのです。
別のフェニルアラニンと呼ばれるアミノ酸を糖類と一緒に180度まで加熱します。
今度は「ライラックの花の香り」がすることが知られています。
このほかのアミノ酸でできる香り・臭いをザザッと書き出しますと、
ロイシン「嫌なチーズを焼いた臭い」
メチオニン「じゃがいもの臭い」
スレオニン「こげ臭」
ヒスチジン「とうもろこし・パン臭」
リジン「パン臭」
アスパラギン酸「カラメル臭」
などとなります。
<NPO法人「日本食行動科学研究所」の機関紙CHA22号(2013年)の2Pの一覧表から>
「嫌なチーズ」って、どんなチーズなんでしょうね。
ふと思ってしまいました。
リジンは、おお我が「パン臭」ですね。
ということは、強力粉にはリジンが多く含まれているのかな?
これも調べると…
強力粉のリジン含有量は、むしろ少ない方でした。
あれれ?
バリン、ロイシン、フェニルアラニンはリジンの2倍以上、グルタミン酸に至ってはリジンの20倍くらい多く含まれていました。<日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編による>
含有量の多いグルタミン酸は「バターボール臭」がするとのこと。
バターボール? バター臭でなく? あの飴ちゃんの?
いずれにせよ、パンの焼けるいい香りは、リジンやグルタミン単体の香りではありません。複数のアミノ酸が同時に反応して、合わさった複雑なものとなっています。
パンに限らず、食材には十も二十もアミノ酸が含まれています。
なおかつ、それぞれの含有比率も異なっています。
いろいろな食材を組み合わせて焼いたり煮たり…そうしてでできる香りや風味、旨みの種類はもはや無数といっていいほどです。
パンの茶色に隠れていた「複雑さ」と「奥深さ」。
メイラード反応を調べていて、それをヒシヒシと感じたのでした。
諸般の事情で、以後、数日ごとの記事更新となることをお許しください。ちょっと、仕事がつかえてきたもので…