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大陸英雄戦記  作者: 悪一
ラスキノ独立戦争
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タルタク砦

 タルタク砦に着いて暫くした後、北東防衛軍団の作戦参謀から作戦説明と言うか現状説明があった。


「現在、ラスキノでは反政府暴動が頻発しており、それに伴って独立の機運が高まっている」


 ラスキノはシレジアと東大陸帝国の国境近くにある都市で、前世ではカーリニングラードと呼ばれた場所だ。ただこの世界のラスキノは特に何もない小さな都市だ。


「独立運動は周辺の都市や農村にも広がっており、数万人の市民が蜂起している。また一部の警備部隊や軍もこの蜂起に加担しているとの情報もある」


 万単位の市民による暴動か。帝国軍もおそらく手間取ってるだろうな。大陸帝国末期のキリス戦争の時と同じ状況だ。


「また複数の国から既に義勇兵がこの独立運動に参加している。我等もこれに乗じる形で参戦する」


 ここで参戦してラスキノに恩を売って東大陸帝国の国力を少しでも弱める、他国と共同戦線を張ることによって情報収集したり仲を深めたりしたいというわけね。

 でもなんで俺たちなんだ? 士官学校生を召集するほど逼迫した状況でもないような気がするんだが。


「我が方の戦力は君ら士官候補生125名と、北東防衛軍団義勇兵部隊約3000名だ」


 1個連隊から旅団規模ってことか。まぁこの国に師団規模で外征する余裕はないだろうし、あまり過剰に派遣しても軋轢を生むだけか。でもそんなに用意できるなら俺ら呼ぶ意味ないだろ!


「以上だ。何か質問は」


 聞きたいことは山ほどあるよ! 畜生言ってやる!

 という訳で挙手。先生!


「いくつか質問よろしいでしょうか」

「構わん。なんでも聞きたまえ」


 今なんでもするって言ってないか。いや男に興味はないけど。


「蜂起している都市や町はラスキノ以外に何ヶ所あるのでしょうか」

「農村を含めればかなりの数だが、人口数千人規模の都市はラスキノを含めて6ヶ所だ」

「その都市の戦力は、市民の数を除くと如何ほどありますか?」


 訓練された市民は戦力にはならないからね。女子供老人含めた暴動だと尚更「数万人」なんていうものは信用できない。


「あぁ、少し待ってくれ……。えー、各都市には1個中隊程度の警備隊が駐留していた。また都市に住んでいた退役軍人や予備役、それに帝国から裏切った部隊、各国から派遣された義勇兵等を加味すると、一都市あたり1000ないし1500と言ったところだ」


 つまり6都市合わせて6000~9000。市民から使える奴を徴兵すれば1個師団程度の戦力がラスキノ周辺にあるわけか。でもそれは6ヶ所に散らばって存在している、と。


「もうひとつよろしいですか?」

「構わん」

「今回の戦い、指揮官はどこの誰ですか?」


 ここが重要だ。誰の命令を受けて行動すればいいんだ。


「ラスキノ警備部隊の隊長であるゲディミナス大佐がラスキノ周辺の反乱部隊の指揮を執っている。また義勇兵部隊については所属している国の指揮官がそれぞれ執っている」

「それはつまり、指揮権が統一されているわけではないと」

「……そういうことだ」


 やる気あんのかこいつら。


「我々の指揮官は?」

「マリアン・シュミット准将だ」


 誰だそいつ。


「そうそう、言い忘れていたが君らの所属は第38独立混成旅団となる」


 この独立混成旅団って諸兵科連合部隊(タスクフォース)のことなのか、それとも寄せ集めの素人集団の事なのか……後者だろうなぁ。


「他に質問は?」

「……ありません」


 あとは現地行ってみないとわからんからな。


「わかった。他に質問があるものは?」


 他の質問は特になく、参謀殿は編制とか今後の予定とかを話し始めた。全ての事が終わったのはそれから2時間後のことである。




---




「あぁ、君、ちょっと来てくれ」


 説明(ブリーフィング)が終わった後、作戦参謀から呼び出された。何かまずいことしたかしら。


「なんでしょうか」

「君、名前は?」

「戦術研究科5年、ユゼフ・ワレサです」

「戦術研究科か、なるほど。なら納得だな。ワレサ君は学校の成績もよかったのではないか?」

「いえ、お恥ずかしながら下から数えた方が早かったです」

「なんと」


 どうやら作戦参謀殿に気に入られたようだ。そういやこいつ名前なんだっけ。


「ルット中尉、何をしている?」

「! 閣下!」


 閣下?


「ワレサ君、こちらは第38独立混成旅団の司令官であるシュミット准将だ」

「こ、これは失礼しました!」


 慌てて敬礼する。イメージより若い。准将が何歳でなれるかは知らないけど、それでも若いと感じる。


「君は、士官候補生かね?」

「はい! 戦術研究科5年のユゼフ・ワレサと申します、閣下!」

「シュミットだ。今回は宜しく頼む」

「は、はい!」


 やばい緊張する。カールスバートの時の第3師団の師団長より緊張してるわ。アイツの方が階級高いのに。

 シュミット准将は見た目は有能そうな男だ。一方第3師団長は見た目で死亡フラグ立ててた。今生きてるかは知らん。名前覚えてないし。


「で、何をしているのだ?」

「いえ、それはですね……」


 かくかくしかじか。

 俺が作戦会議の時に色々質問した事、そしてそれをなぜかルット中尉が大絶賛した。

 おいやめろ、なんか恥ずかしいから。いやホントやめてお願いします。


「なるほど、君のことは覚えておこう」


 そう言って、准将は去っていった。


「やったな」

「はぁ……」


 准将に名前を覚えられた。

 うん。これが大将ぐらい、せめて中将だったら嬉しいけど准将じゃなー……。




---




「何話してたの?」


 兵舎に向かう途中、サラが俺の所に来た。わざわざ待っていたらしい。嬉しいねぇ。


「何も話してないよ。『向こうがなんか勝手に口を開いてた』という表現が正しい」

「なによそれ」


 実際そうだから困る。中尉が呼びとめたと思ったら年下階級下の士官候補生を褒めちぎったあげく准将がなんか来た。そんだけだ。


「ルット中尉にあんたを見る目があるってことね」

「些か誇張されてる気がするんだけど」


 些かレべルを越えてる気もする。


「まぁ上の心配をしても仕方ないよ。俺たちは下っ端はやれと言われたことだけやってさっさと帰るだけさ」

「そうね。エミリアもそろそろ王宮が恋しくなるころでしょうし、さっさと帝国を潰しましょう」


 サラがやや尊大なこと言うと、その場は流れで解散となった。


 なに、クリスマスまでには終わるだろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なぜ訓練された市民は戦力にならないんですか? 訓練されてないど素人は戦力になるのに?
2020/04/26 12:41 退会済み
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