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大陸英雄戦記  作者: 悪一
エミリア
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ヴィストゥラ公爵の日常

 私が士官学校に入学してから1ヶ月経ちました。


 王宮で剣術や魔術、馬術と言った物は“王族の嗜み”として習ってきたので、他の生徒に後れを取ることはありませんでした。

 ただ体力がないので、すぐにバテてしまいます。


 そう言うこともあってか、私は放課後に友人たちと一緒に自主練・勉強をしています。

 苦手なところを補い合うこの居残り授業はやってみると意外に楽しいものですし、これを通してさらに親睦を深めることもできます。人によって教え方が違うのも面白いです。


 参加者のひとりはサラ・マリノフスカさん。

 騎士(カヴァレル)の娘で剣術・馬術の天才です。その見た目もあいまって騎兵が似合うでしょう。勉強は少し苦手のようです。

 彼女の教師ぶりはまさに鬼教官、と言った感じです。私に対しても容赦ありません。でもワレサさん相手には殴る蹴るは当たり前なのでまだ優しい方なのでしょう。


 そうそう、そのユゼフ・ワレサさんとも仲良くなりました。

 彼は農民の子供で私と同い年。……のはずなのに物事を深く考えて、かと思ったら突飛なことをする奇特な方です。

 サラさんと違って武術がダメで、勉強が得意。第一学年では「首より下は飾り」と呼ばれているそうです。


 そしてラスドワフ・ノヴァクさん、通称ラデックさん。私より6歳年上で端正な顔立ちをしています。名のある貴族の御子息と言われても信じてしまうかもしれませんが、彼は商家の子だそうです。

 武術も勉学も人並みにできるそうで、事実、上半期中間試験の結果は全ての科目で70点台だったそうです。

 得意科目も苦手科目もないため、ノヴァクさんは第二学年でどの兵科に行くべきか悩んでるみたいですね。商家の子息と言うのなら輜重兵科に行けば何かと役立つんじゃないでしょうか。


「エミリア様、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ。少し考え事をしていただけですので」


 彼女はマヤ。マヤ・ヴァルタ。私の護衛です。でもそれは世を忍ぶ仮の姿、本当は……内緒です。後日の楽しみとしておきましょう。

 彼女は護衛と言うだけあって武術が得意です。剣術ならサラさんと互角の勝負ができます。頭も良いです。この1ヶ月、彼女はワレサさんと何やら難しい話をしていました。まさに文武両道の人です。


 最後に、私が勉強会に参加します。5人で勉強です。


「あ、エミリア、あなたも何か私たちに教えてよ」


 この学校でこんなにも友好的に話しかけてくれるのはサラさんだけです。他の人にも敬語や様付けするのはやめてほしいと言ったのですが、なかなか従ってくれません。くすん。


「でも私、教えられることなんて……」


 サラさんやユゼフさんのように飛び抜けて得意なものがあるわけではありませんし。


「それではエミリア様、私たちに魔術理論のご教示をしてくださいませんか?」


 と言ったのはヴァルタさん。魔術理論ですか……確かにそれなりに得意ですが……。


「魔術を教えてくれる人はココにはいないですから、ちょうどいいと思いますよ」


 ワレサさんがマヤさんの意見を支持しました。で、でも私人に勉強教えたことなんて……。


「大丈夫ですよ。最初からうまく行くことなんてないのですから」


 うーん……。でも、私だけずっと教わる側なのも嫌ですね……。


「な、なら、私でよければ皆さんに魔術の授業を……」


 こうして私は魔術の先生になったのです。

 来年から、魔術研究科にでも行きましょうか……。

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