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命名式

(はい、というわけで書籍化します。 挨拶があっさりしすぎというツッコミを受けましたので念のため。 詳しくは活動報告の方で。基本続報待ちですが)

 新人3名、それぞれ受付が務まるようになってきた。

 そろそろ約束通り名前を付けてやろうと思う。


 俺は3人をダンジョンのボス部屋に呼んで、そこで命名することにした。

 いや、普通に宿屋で「あ、お前らの新しい名前これね」で済ませてもよかったんだけど、なんかモンスターとしてとても大事な事らしいからね。俺、そういうとこ空気読むダンジョンマスターだからね。


 演出って大事だよな。


 これで盛大に命名式を執り行えば、より一層の忠誠を誓ってくれるに違いない。

 というわけで、殺風景な石造りのボス部屋を少しだけ改装だ。


 まず玉座。滅多に座らないから座り心地より見た目重視で、重厚感ある石の玉座を作った。玉座まわりを2段くらい高くして、座りつつも侵入者を見下ろせるのがポイントだ。魔王が座ってても違和感ないな。素材が石で豪華じゃないから俺が座ってもあまり見劣りしないというのもポイントだ。


 次に、入口から玉座へまっすぐにのびる石絨毯。……まぁ、もともと床が石造りだから、多少それっぽく並べるだけだ。……うん、多めに見て模様が違う程度の差しか無いが、これはこれで神殿っぽくなってきた、かな? 全体的に灰色だけど。

 段差のところは階段にする。


 ここまできたら壁も整えて、柱を追加しておこう。実際不要なのでほんとただの飾りだけど。パルテノン神殿っぽい柱がまた……なんというかこう……それっぽい? それっぽい、と思う、多分。


 最後に、武器を構えたゴーレムの彫像を作って壁から生やす。一応この武器もゴーレムブレードで、実用可能な品だ。


 ふぅ……創作意欲が湧いてつい頑張ってしまった。


「ケーマが久しぶりに寝ないでなんかしてると思ったら……なんかすごいカッコいいわね!」

「ロクコにそう言われると自信が揺らぐなぁ」

「えっ、なんでよ?! そこは自信つけるところでしょうが」

「だってお前、ゴブリン大好きという変わった趣味があるだろ? だからカッコいいの基準がゴブリンという可能性が……」

「風評被害はなはだしいわね。私だって普通にドラゴンとかカッコいいと思うからね?」


 おお、ドラゴンか。確かにドラゴンはカッコいい。レッドドラゴンの実物を見たこともあるわけだし、今度ドラゴンゴーレム作ってみるのもいいかもしれないな。できれば火とか吐かせたいところだ。

 ……あー、でも本物に比べたら絶対弱いんだろうなー。今使えるので最高の素材って鉄どまりだし。そう考えるとやる気が削がれる。けどまぁ、将来もっといい素材が使えるようになった場合に備えて、練習として作るにはいいかもしれない。


 今のボス、アイアンハニワゴーレムもこの間完成したことだし……次のボスはアイアンドラゴンゴーレムだな。

「っと、それじゃそろそろ呼ぶか。者共ー、配置につけーい」

「ゴーレムたちの準備ができたらニクとイチカも呼ぶわねー」


 というわけで、ゴーレム達を整列させて、新人たちの命名式を行う運びとなった。


  *


 ダンジョン『欲望の洞窟』。


 入口の、罠とゴブリン、それと少しの宝箱がある地上第1層『エントランス』。

 ゴーレムが徘徊し、魔剣のお試し部屋もある地下第1層、第2層『立体迷宮エリア』。

 迷宮を抜けると、今度は上り坂だ。一度地上第2層まで上る。

 地上第2層『謎解きエリア』では、知恵と知識を試す。……いまだにこの先に到達した侵入者はいない。

 『謎解きエリア』を突破すると、地上第2層から地下第3層まで降りる『吹き抜け螺旋階段』がある。

 地下第3層はユニークゴーレム……初代ボスのノーマルハニワゴーレムとか、試作した変則ゴーレムが見回りをしている『ゴーレム倉庫エリア』だ。ここまでくると宝箱に魔剣ゴーレムブレードを入れてあったりもする。


 これらすべてを突破した先に、地下第4層……『ボス部屋エリア』がある。

 (尚、今後も地下5層から下を順次増やし、ツィーアの町方面へダンジョンを拡げる予定だ)


 今、この時において。『ボス部屋』は非常ににぎわっていた。

 ……といっても、鎧を着た武装ゴーレムが綺麗に整列している他は、ダンジョンマスターである俺と、ダンジョンコアのロクコ、そして奴隷のニクとイチカだけ――ああ、ペットの不死鳥ひよこ、フェニもいたな。


 ロクコが着ているのは、スラっとして身体の線が良く見える白いドレスだ。ハクさんのドレスをモデルに作ったヤツで、ロクコのお気に入りの一品。肩に乗せた白い不死鳥ひよこも結構マッチしている。

 ニクとイチカは、メイド服を着ている。普段使いのではなくほぼ新品のものだ。


 つまり、全員正装ということ。


 もちろん俺もそれらしい恰好をしている。

 赤いマントに銀色に輝く全身鎧。金貨を潰して作った(つた)のレリーフがワンポイントだ。……実は鉄鎧で、表面だけのメッキだけどな。あと、ぶっちゃけ重くて自力では動かせない。鎧ゴーレムだから動けるが、下手にコケたら大怪我必至だ。


 俺は玉座に腰を掛けている。

 すぐ傍にロクコが立ち、一段下がったところの通路を挟むようにニクとイチカが立つ。

 扉から玉座へ伸びる石の道を挟み、武装ゴーレムが規則正しく並び、剣を掲げて整列する。


 イメージは『王への謁見』。まぁダンジョンマスターってダンジョンの王みたいなもんだし間違っちゃいない。


 俺は新人3人を扉の前へ『配置』する。これで準備はすべて完了だ。

 あらかじめ命名式を行うことは伝えてあったが、ここまで入念に準備するとは言っていなかったからな。クックック、どんな顔をするか見物だぜ。


「入れ!」


 俺が声をかけると、ボス部屋の扉……これまた(つた)のレリーフが入った重厚な両開きの鉄扉なのだが、これをゴーレムが開ける。

 扉の前で待機していた3人娘は、こちらの様子を見て――一瞬だけ驚き、すぐにまじめな表情で入室した。……ほう、なかなかやるじゃないか。


「そこで止まって(ひざまず)け」


 吸血鬼のアルファを中心に、左右にシルキーのベータ、魔女見習いのガンマが並び、(ひざまず)く。


「これより、命名式を行う」


 俺は腹に力を入れて、なるべく力強い、偉そうな声を出す。楽しくなってきた。

 ちなみに、命名式なんて儀式は元々存在しないので、作法とかはない。『ノリでそれっぽく』だ。


「我が命をこなした貴様らに、かねての約束通り、名前を授ける」


 俺は全身鎧ゴーレムのアシストを受けつつゆっくりと立ち上がり、腰にさした剣を抜く。

 ポーションの瓶で作った、刀身が透明な剣。どこか青く光を反射するこの剣は、実に神秘的に見える。……攻撃力? 当たれば砕けるんじゃないかな、剣が。儀礼用だよ、儀礼用。


「アルファ、(おもて)を上げよ」

「ハッ!」


 俺が言う通り、顔を上げるアルファ。……えーっと、こいつの新しい名前は……


「汝には、レイ、という名を授ける」

「ハッ! ありがたき幸せ!」


 汝とか言っちゃったよ。ハハハ。まぁいいか、このノリで続けよう。

 名前の由来は、攻撃力が0だからである。覚えやすいね。

 ……うん、すごく喜んでくれてるけど、なんかその、ごめんね? こんな適当な命名で。

 それじゃ次だ。


「ベータ、(おもて)を上げよ」

「はい」


 こちらはアルファ……改め、レイより、動作がおっとりしている。いや、優雅というんだろうか。


「汝には、キヌエ、という名を授ける」

「謹んでお受けいたします」


 名前の由来はシルキー、シルク、絹、キヌエ……というわけだ。

 おキヌさんと悩んだけど、こっちで一般的な命名だとキヌエの方が近かったので、キヌエになった。……次のシルキーの時の名前はどうするか思いつかない件。

 次で最後だ。


「ガンマ、(おもて)を上げよ」

「はいー」


 ああ、うん。ベータ改めキヌエよりおっとり……これはのんびり、って言うんだろうな。間違いない。


「汝には、ネルネ、という名を授ける」

「ありがとうございます、師匠ー」


 名前の由来は魔女だからだ。

 ……え? 魔女でなんでネルネかって? えーとほら、鍋とかソレ的なモノをかきまぜて練ってるイメージあるじゃないか。色が変わるくらい練ってそうだよな? だよな? だろ。

 あとまだ師匠じゃないぞ。


 まぁ全員わりと適当なネーミングをしてみたが、異世界の由来なので俺が言わなきゃバレないだろう。

 むしろロクコみたく異世界由来ということで喜ぶかもしれないが。


 命名式は以上だ。あとは大声で締めの挨拶をするとゴーレムが拍手する流れになっている。

 さて、締めの言葉は大事だぞ、何て言おうか……


「あー、ねぇケーマ。これもう終わりでいいのよね。よしっ! レイ、キヌエ、ネルネ。今後ともダンジョンのために頑張りなさいよ!」


 その瞬間、 ガチガチガチガチガチ! とゴーレムの固い手による拍手が嵐のように響いた。

 ちくしょうロクコめ、美味しいところ持っていきやがったよコイツ。





(名前は募集した中から採用しました。)

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