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救助

 受付嬢さんはとりあえず仮設出張所になるテントを建てに外へ行った。

 ロクコへの命令権を解除し、ダンジョンに潜る準備をする。とはいっても当然形だけだ。

 なにせマップもあるし、そもそも俺がダンジョンマスターだもんな。


「で、救出するの? これ」

「するよ。じゃないとダンジョンに自由に出入りできなくなるし、まずは雑魚が来てくれた方がいいからな……」


 戦闘力が足りてないから、いきなり強いのが来たら全滅する。ボスゴーレム? 少しずつ作るよ、スーパー鎧ハニワ。


 尚、ウゾームゾーはまだ大丈夫そうなので、もうしばらくは探索はしてるフリして昼寝か、スーパー鎧ハニワの作成だな。


  *


 で、ウゾームゾーを閉じ込めてから10日目だ。そろそろ動かなくなってきたので出してやろう、弱ってるせいかちょっとだけ入手DPが下がってるし。


 俺はイチカを連れてダンジョンに向かう。

 お腹もすいてることだろうし、白パンをお土産に持って行ってやる。

 当然自分のダンジョンだ、何事もなくお試し部屋にたどり着く。


「……おーい、助けに来たぞー。ここにいるかー?」

「うっ……なんだ、……きゅ、救助……?! こ、ここだ、ここにいるぞ! 2人いる、まだ生きてる、助けてくれ!」


 針罠の向こうからムゾーの必死な声がする。

 まぁマップで居ることは分かってるんだけどね。モニターもできるからまだ生きてるのも知ってる。


「なぁイチカ……どうやって開けたらいいと思う?」

「…………折ったらええんちゃう?」


 うん、針でみっちりふさがってるけど、俺が来たとたんにスーっと開いた、なんてのはおかしいもんな。


「じゃあ魔法でぶっとばしてみるか。……よし、今からここを開けるぞー。入口から離れろー」

「わ、わかった、離れる、まってくれ…………はなれた、いいぞ!」


 部屋の中に向かって呼びかけ、マップを見てちゃんと2人が離れていることを確認した。それから、前にスクロールで覚えた【ファイアボール】を思い出す。

 ……詠唱は「炎よ、弾となりて敵を穿て」だ。…………かーらーのー、言語チート!


「炎よ、5発の連弾となりて敵を穿て――【ファイアーボール】」


 適当に5発とか言っちゃったけど、本当に5つの火の玉が現れて針罠に向かう。

 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン! と火の玉が連続で弾ける。……うん、この程度じゃ鉄の針は壊せないか。というか自分でやっておいてなんだけど行けるもんだ。これ魔力が許せば100発でも1000発でも行けるんじゃないかな。

 ……まだ撃てそうだ。次はもうちょっと変えてみよう。


「炎よ、燃え上がり、……えー……とりあえず爆発しろ、【ファイアーボール】」


 ふよん、と火の玉が現れ、ゆっくりと向かって行った。

 あっやば。かなり適当な詠唱だったせいか魔力がごっそり減った。減りすぎて寒気してきた。


「ご主人様、危ない気がするわ。すこし離れたほうがええんちゃう?」

「お、おう」


 イチカに引っ張られつつ少し離れ、火の玉が針罠に衝突するのを待つ。

 衝突した瞬間、ドゴォン! と、そこそこ大きな音と白い光が広がった。


 だが、針罠は健在だった。


 …………よ、よし、壊れてないな! さすが針罠、危ないとはなんだったのか……っていうか火の玉で鉄の塊をどうにかしようって方がおかしいんだよ実際。くそう、今のは行けたと思ったのに。


「……しかたない、直接針罠をいじって壊れやすくするか」


 最初からこうすればよかった。と、俺は針罠に【クリエイトゴーレム】を掛け、割れやすいヒビを作る。……自分のダンジョンの罠だからか、意図的に満たす前から俺の魔力が満ちている。すんなりと変形するな。

 ……けど、さっきの【ファイアボール】でもう疲れたな。あと盛大に吹き飛ばすのはイチカに任せてしまおう。


「イチカ、脆くしたから派手にやっちゃってくれ」

「ん、わかった。まかせときー」


 針罠の前に立ち、ゴーレム包丁を構えるイチカ。……尚、中心となるゴーレムを衝撃吸収用の水ゴーレムで覆い、さらに鉄で外装を覆って剣にする3層構造とすることで耐衝撃、耐魔法性能を向上させた(と思う)試作型ゴーレムブレードだ。成功したら第二世代と名付けよう。


「……スラッシュ!……もどき」


 イチカが【スラッシュ】を模した大振りながら素早い動きで針山に攻撃し、針を吹き飛ばした。

 折られて内側にブチ込まれた針がグワンガランと派手な音を立てる。

 ……ウゾームゾー、ぶつかって死んでないよな? 大丈夫だよな。


 スラッシュもどき。本来スキルによる補助がある【スラッシュ】だが、それをメイド服ゴーレムのアシストで再現したものだ。もっともこれはスキルではないので威力自体は格段に下がるとみていいだろう。……スクロール使わなくてもスキルは覚えられるらしいから、スラッシュもどき使ってるうちに本物の【スラッシュ】を覚えられないか、という実験も兼ねている。


「た、助かった……おい、ウゾー、助かったぞ」

「ああ……」


 うん、ふらふらだがちゃんと自分の足で立ててるな。

 俺とイチカはお試し部屋に入る。で、こっそりと針罠の修復を開始する。


「お、おい! まて! 入ってくるな!」

「ん? どうした……おおっと」


 俺とイチカの後ろで針罠が復活し、獣の牙のごとく閉じ込める。

 絶望的な顔でそれを見るムゾー。


「あ、ああ……くそっ、どうして……」

「おいおい、ここは『安全地帯』だろ? 何そんなに慌ててるんだ?」

「あの罠は、魔剣つかっても壊せなかったんだよ。逆に剣がダメになっちまった……おそらく内側からの攻撃に、異様なまでの耐性があるんだろうと思うんだが……」


 その事情も裏事情も知ってるが、あくまで知らずに驚くフリをする。


「おいおい、まってくれ、それじゃあその魔剣はどうしたんだ?」

「……ウゾー」

「こいつだ。ヒビが入っちまった」


 俺はその魔剣を受け取り、調べる。……うん、見事に壊れてる。これはもうゴーレムじゃなくてただの「壊れた鉄の剣」だ。むしろこれでよく針罠の1つ目を壊せたもんだ。


「……これは使えそうにないな。仕方ない、俺の魔剣をつかうか……イチカ、持ってきたパンをくれてやれ」

「はーい、ご主人様……じゅる。どうぞ?」


 イチカはパンをとりだし、ちぎって一口分だけ差し出す。

 あとでたっぷり食べさせてあげるから、今はそれちゃんと全部あげなさい!


「……あ、ありがとう。そっか、今はイチカって言うのかー……お、おい、ウゾー。これ、白いぞ。宿で食ったあのパンだ!」

「…………天使か」


 イチカがパンを渡している間に俺は台座に近づき、まずは壊れた方のゴーレムブレードを差し込む。

 ……うん、やっぱり反応ないな。少なくとも今の設定のままじゃ台座がこれをゴーレムブレードと認識しないようだ。

 貴重なデータがとれたことに内心ほくそえみつつ、今度は持ってきたゴーレムブレードを台座に差し込む。すると、入口の針罠がジャコンッと音を立てて綺麗に引っ込んだ。


「……は? な、なにをしたんだ?」

「この部屋は、魔剣が台座に刺さってないと出られない仕掛けになっているみたいでな。……しかも、壊れた魔剣じゃダメだったから俺の持ってきた魔剣をつかった」

「魔剣?! そ、そうか、そういう仕掛けだったのかぁ……くそぉ」


 本気で落ち込むムゾー。一応折れた魔剣でも刺しなおせば開けてやるつもりだったんだけど、ここまできたらそういう事にしてしまおう。で、俺はさらに悪魔の一言を告げてやる。


「ちゃんと弁償しろよ? 魔剣1本分」


 ……そう、ここまでの演出はこの一言のための積み重ねなのだ。報酬は当人との交渉次第。それが救出依頼なのだから、より多くの金を引き出せるように「魔剣使わせたんだから弁償な」という作戦なのだ。

 どうだ、恐ろしかろう……! これからの借金生活に恐れおののくがいい!


「……ああ、すまないな、貴重な魔剣を使わせてしまって……」

「当然だ。魔剣を失ってまで助けてくれたこと、感謝する」


 あ、あれ? 思ってたよりすんなり合意したなおい。


「ま、魔剣だぞ? 結構高いぞ?」

「……少し時間はかかるかもしれんが必ず返す。ギルド経由で返済すればいいかな?」

「で、できれば新しい魔剣がほしいなー、なんて……」

「分かった。2年、いや、1年でどうにかする。……今回でだいぶ自信は無くしたが、これでもCランク冒険者だからな、なんとかする」


 なにこいつら素直すぎる。


「……ああ、救助料はどれくらい出せばいい? できれば依頼を受けるための支度が整えられるくらいの金くらいは残してほしいが」


 え、しかもまだ払ってくれるの? なにそれ美味しい。……けど、既に魔剣を要求している以上、あまり多く要求するのも酷だろう。よし、まずは吹っかけて、反応を見て下げて行こう。


「え、あ、うん、そうだなー、……き、金貨2枚、とか?」

「……ッ、そんな!」


 あ、ごめん、やっぱり1人金貨1枚は多すぎたよね? よし、こちらには値下げの用意があるぞ! だがなるべく多く引き出してやる、かかってこい!


「そんな少しでいいのか!? 助かるよ!」

「ああ、俺とムゾーで、合わせて金貨4枚か。ツィーアに戻ったらすぐに払う」


 …………ええー?



今後の展開について展望はありますが、まだ未定です。ちょっと考えたい…!

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