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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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ダンジョンバトル、開戦

ダンジョンバトル、前篇です。
 というわけで、ダンジョンバトルが決まってから三日後、開戦当日だ。

「……な、なんとか間に合ったな……」
「いや、実際ちょっと出来てないとこあるんだけど……だからDPで一気に作れって……」
「それだと戦力が揃えられないからなぁ……」

 いろいろ仕込んだ。防衛だけでなく、攻撃についてもだ。
 とにかくひたすらに敵のダンジョンコアを目指す戦いになる……いやぁ、DPもがっつり使ったな。節約したけどなんだかんだで8万近くは使ってしまった。だが、必要な出費だった。
 100DPや200DPに苦労していた時期がもはや懐かしい……

「ていうかケーマ。……その枕、何?」
「え? コレ? 『天上枕(1万DP)』だけど?」

 尚、使った8万DPのうちの1万DPがこれである。
 いや、無駄遣いじゃないよ? 効率よく作業するためには効率よく休むことが肝心じゃん? 故にこの『天上枕』は必要な出費だった。

「……私にもなんか頂戴よ、まだDP残ってるんでしょ?」
「一応、当日臨機応変に対応するために残してるDPなんだが……1万DP相当のゴブリンでも呼ぶか?」
「なんでゴブリンなのよ?! それほど好きじゃないわよ!」
「ならバトルが終わったら1万DPはロクコの好きに使っていいよ。ガチャでもゴブリンでもドラゴンでもゴブリンでもゴブリンでも」

 ともあれ大改装を経て、岩肌や土がむき出しだった洞窟は大部分が整備され、もはや『ただの洞窟』とはいいがたい、立派なダンジョンになっていた。新しい名前が思いつかん……まぁそのうち勝手になんかつくだろ。

「ニクもお疲れ様」
「……はひ……」

 こちらもぐったりとしているところを撫でてやる。疲れてはいるようだが、犬しっぽがパタパタしていた。
 いろいろとがんばりすぎた気もする。俺もここ3日は何体ゴーレムを作ったか覚えていないほどだ。……変わり種じゃないゴーレムも作った。うん。ロクコが逆に「えっ、普通の作れたの?」とか失礼なことを言いおったわ。いや、労働力にしてたゴーレムだって普通のゴーレムだからな。石とか土とか混ざってたけど。分けるの面倒だったからそのまま使ってたけど。一応外面はクレイゴーレムになるようになってただろ?

  *

「準備はどう? クロウェ」
「万事滞りなく」

 帝都は『白の迷宮』の派生ダンジョン『白の試練』。帝都から少し離れた郊外に突然現れたダンジョンである。勿論、これは第89番ダンジョンコア……ハクが今回のダンジョンバトルのために用意したダンジョンだ。命名は勿論ハク自身。ダンジョンバトルが終わったら冒険者ギルドにその名前で登録しておこうと考えていた。

 実に5万DPもかけて作られたそのダンジョンは全5階層。ミノタウロスが徘徊し、床や壁から槍が飛び出したり、どこからともなく矢が射かけられるトラップが仕掛けられていた。さらにはリザードマンがそこらを歩いている。
 そして、モンスターの中には、ちらほらと1つだけでも1万DPくらいかかりそうな魔法の武器を持っている者も、何体か居た。……そう、複数だ。

「そういえばクロウェ。武器庫の在庫が減っている気がするのだけど?」
「おそらく先日第十七騎士団が持ち出したのではないでしょうか。厳罰モノですね」
「そう、なら仕方ないわね。あのミノタウロスの持っている斧とか見覚えがある気がするけど、きっと別モノでしょうし」
「あの程度、よくある斧ですから」
「……あらあら、リザードマンが入り込んでしまっているみたいねぇ」
「このあたりには元々リザードマンの巣がありましたからね」
「でも、原生生物が入り込んだところで私達には関係無いことよね?」
「勝手に入ってきてしまったものは仕方がありませんからね」

 ……明らかに、5万DPでは賄いきれない下準備には、こういった内容が隠されていた。
 もちろん『今回DPを使っていない』以上、ルール上では何の問題も無かった。とばっちりで余罪が増えた第十七騎士団については、……冥福を祈ろう。

 もはやこの『白の試練』は、出来立てのダンジョンだというのに初級冒険者では生還が困難、中級といわれるCランク冒険者パーティーでも踏破は困難といったところだ。
 入口に今か今かと開戦を待ちわびひしめくモンスター集団が居る事を考えればBランクでも難しいと言わざるを得ない。

 攻め手だけでもミノタウロス(3000DP)が15体、リザードマン(200DP)が50体、ゴブリン(20DP)が100体用意されている。
 どれもハクが好んで使う、DP効率の良いモンスターだ。
 せめてもの良心か、あるいは言い訳のためか。攻め手には魔法の武器は装備されていなかった。

「それじゃ、そろそろ始めましょうか。クロウェ、通信するわよ」
「はっ、かしこまりましたお嬢様」

 メニューを開き、『ただの洞窟』に向けて通信する。
 これもまた、普段から使うには色々と消費が激しい代物だった。

「695番ちゃん、聞こえる?」
『姉さま! はい、聞こえます! 今日は宜しくお願いしますっ』

 可愛らしい声がメニュー越しに伝わってくる。思わず笑みがこぼれてしまうハク。
 この子を、これから容赦なく攻め立てるのだと考えると……実にそそる。
 ただ、あまりやりすぎて嫌われないように気をつけねば。とハクは考えていた。

「ふふ、さっそくだけど準備は良いかしら?」
『いつでも!』

「では……いくわよ。ダンジョンバトル、開始ッ!」

 ハクの言葉を合図に、戦いの幕が切って落とされた。

  *

 開始と共にダンジョンの入り口にゲートが現れる。
 騎士団程度であれば通るのに十分なその広いゲートの向こう側には、『ただの洞窟』が用意したゴーレムがひしめき合っていた。

「なるほど、ゴーレム……先陣を切るには効率のいいモンスターを選んできたわね。クレイゴーレムなら、確かに数も揃えやすいわ」

 ゴーレムは、マナが充満しているダンジョンでは無補給でいくらでも動けるという特徴があり、維持費が優れている。が、攻撃と防御に優れるものの反応が鈍く、速度はない。

「リザードマンを突撃させなさい」
「リザードマン、突撃!」

 両軍、ゲートに殺到する。いきなりゴブリンを出してもゴーレムに磨り潰されるだけだと判断したハクは、リザードマンを先頭に突撃させる。 ゴブリンの出番は、ダンジョン攻略に入ってからの斥候だ。ここでぶつかって損耗する場面ではない。

 ゲートに飛び込み、ゴーレムに切りかかるリザードマン達。いくらかは殴られてそのまま地に伏せ踏み潰されるものの、大半はスピードで勝り、一方的ともいえる戦果を挙げた……が、いくらか取りこぼし、『白の試練』側へと侵入させてしまった。

「敵、侵入してきました!」

 マップで敵軍の報告をするラミア。これもハクの腹心の一人だ。 今日は、クロウェを含む5名の腹心がコアルームでハクの補佐についていた。先ほどリザードマンの突撃を指示したのは攻撃部隊担当のリビングアーマーだった。

 紹介が遅れたが、ダンジョンバトルにおける『白の試練』側の布陣は以下の通りだ。
 防衛を担当するラミアのアメリア、
 被害等の情報報告を担当するレイスのドルチェ、
 攻勢戦闘部隊を担当するリビングアーマーのサリー、
 攻勢斥候部隊を担当するワーキャットのミーシャ、
 そしてサキュバスのクロウェが全般的にハクの補佐を行い、
 ハクは、全体の判断と命令を下す統括となる。

「侵入者数……およそ200?!」

 ドルチェの報告に、ざわり、と腹心たちが慄いた。

「嘘?! そんなに通してないよ! 肉眼でもそんな数は……ッ」
「違います! 敵は、ゴーレムではありません! ……ネズミです!」
「ネズミですって?!」

 思わずハクも驚き、声を上げる。
 どうやら、侵入したゴーレムは、木箱の中にネズミを詰めて背負っていたようだ。勿論、それぞれが敵性反応を示しているということは、わざわざ召喚して支配下に置かれたもの。ネズミといえどまぎれもない敵だし、もし一匹でもダンジョンコアに……『白の試練』側の場合はダミーコアであるが、触れられればその時点で負けだ。
 『ただの洞窟』側ゴーレムが背負っていた箱も、フタが開いてネズミがあふれ出す。

「早く駆除するんだ!」
「だめです、小さすぎてミノタウロスじゃ対処できません!」
「ゴブリンの半数をネズミ駆除にあてて! このままじゃヤバいッ」
「第一階層突破されました! 敵、第二階層へ侵攻!……て、敵、総数…およそ500!」
「トラップは?!」
「だめです、小さすぎて当たりません! 矢が当たってもこの数じゃ、湖にファイアボールです!」
「ダンジョン内リザードマンに通達して! ネズミ駆除! ネズミ駆除ー!」

 にわかにあわただしくなる腹心たち。
 ハクは、それを見て逆に冷静さを取り戻した。

「考えたわね、斥候にネズミを使うなんて……」
「ええ、これは……踏破されるのも時間の問題かもしれません。すみません、第一階層はストレートで階段まで到達されてしまいました」
「いいのよクロウェ。これは正直予想外だったわ、今度うちでも使わせてもらおうかしら。初見だとまず対応は難しいわね……っと、アメリア、第3層の通路にいくつか火炎罠を設置したわ、少しは時間が稼げるはずよ」
「あっ、ありがとうございます!」

 侵入者が侵略中でも階層が異なればトラップを設置できる。やや高い罠ではあるが、仕方がない。
 しかしハクは落ち着いていた。
 ネズミは確かに斥候として優秀だが、クリアはできない。
 なぜならコアルームの前にはボスルームを設置してあり、ボスであるレッドミノタウロスを倒さなければコアルームへたどり着くことはできないからだ。

「ゴーレムは一通り片付いたようですね。こちらも侵攻します」
「ええ。あちらがこちらのコアに着くより早く、695番ちゃんを見つけてあげなきゃ、ね」

  *

「おー、結構いったなぁ」

 俺は目の前でどんどん構築されていくマップをみて、感慨深く呟いた。

「ねえ、マップがすごい勢いで埋まっていくんだけど……これってそこまでこっちの手勢が入り込んでるってことなのよね? 89番姉さま相手に有利ってこと?」
「そういうことだな。だが、このまま勝てるとは思わない方がいいぞ」

 さすがにダンジョンバトルでは、敵ダンジョンのマップがポンっと出てきたりはしない。
 当然だ、たとえ迷路を作っても最初からマップが出ているのであれば迷わない。どこにダンジョンコアがあるかもわかってしまうとしたら、興醒めもいいところだろう。
 もっとも、防衛側は普段通り、敵の侵入がマップに表示されてどうなっているかが分かる。

「ご主人様、先発ゴーレム隊、50体。全滅しました」
「おう、予定通りだな」

 ちなみにゴーレム隊は殆どが【クリエイトゴーレム】によるクレイゴーレムだ。召喚したゴーレムは先頭の方に数体いたくらいで、あとは節約の賜物である。廃材利用ともいう。実にエコだ。なによりDP的にもお安いのがいい。怪しまれないように魔石使ったけど、それでも通常の10分の1だ。
 しかも壊れたボディはダンジョン内であれば回収して再利用できる。破壊されなかった魔石も同様だ。

「それじゃ次はニクの掘った落とし穴だ、どうなるかな?」

 俺はニクの頭を撫でつつ、戦況を見守っていた。


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