閑話:シャボン玉
(このあいだやった人気投票結果の上位者でSSを描きました。短い閑話です)
シャボン玉とロクコとニク。
その日、行商人からおもしろそうな物を仕入れたロクコは、それを見せびらかす相手を探していた。
そして裏庭で鍛錬しているニクを見つけた。
「ねぇニク、ちょっとこっち来なさい」
「なんでしょうロクコ様?」
ロクコはおもむろに小瓶と、細長い小筒を取り出した。
飲み物かと思ったが、そうではないらしい。
「スパナ商店とかいう変なもの売ってるトコから仕入れた、シャボン玉という遊び道具よ!」
「シャボン玉……」
「いい、こうやって遊ぶのよ」
ロクコは筒の先端を小瓶の中身の薬液に一度つけ、取り出し、薬液がついていない方からそっと吹いた。
すると、ぷくぅ、と泡が反対側に生まれ、ふよふよと揺れながら大きくなり――
そして破裂した。
「どうよ! 今のシャボン玉はなかなか大きかったでしょう」
「はい、虹色できれいでした」
「でもこれ結構難しいのよ。大きくするにはコツがいるの。ほら、やってみなさいニク」
そういってロクコはニクに小瓶と細筒を渡す。
ニクは先ほどのロクコの真似をして薬液をつけ、ふーっと吹いた。
すると、小さいシャボン玉がぽぽぽぽ、と生まれた。
「あっはっは、強く吹きすぎよニク。大きいのを作るにはもっと優しく吹くと良いわ」
「むぅ、難しいですね。でも小さいのもきれいですよ?」
「そうね、これはこれで綺麗だわ」
空中をふよんと漂うシャボン玉。ニクはそれをつん、とつつこうとした。
……が、ひょいと避けられる。
「む」
さらに2、3度つつくが、なかなか当たらない。まるで、意志でもあるかのようだ。
思わずムキになってゴーレムブレードを抜く。
ねらいを付けて振り抜くと、今度はきれいにとらえてシャボン玉をぱちんと割った。
ニクは満足げに「ほふ」と肩の力を抜いた。
「……よし」
「ほほう」
それを見ていたロクコが、細筒を構えた。そして、ニクに向かって小さなシャボン玉を吹き付けた。
「!」
ぱちん、ぱちん、と小さなシャボン玉を追いかけて切るニク。
本能のままに追いかけ、割っていく。
「おー、やるじゃないのニク。ほら、後ろにもあるわよ!」
「てやっ!」
ニクが追い回し、ぱちん、ぱちんとシャボン玉がはじける。
一通り目に付いたシャボン玉を潰して、ニクは満足げに「むふー」と息を吐く。
が、そこに新たにロクコがシャボン玉を吹き付けた。
「……!」
「さあ! 私のシャボン軍勢に勝てるかしら!?」
ニクの尻尾がぱたぱたと揺れる。
こうなってはもはや遊びではない。繰り返す、シャボン玉は遊びではない。
ロクコは薬液がなくなるまでシャボン玉をぷーぷー吹き続け、ニクは対抗してぱちんぱちん割り続けた。
……その結果、シャボン液でビチョビチョになったり口の中があわあわしたりすることになるのだが、それはそれで別の話。
(なぜ作者が3位だったのか……ソレガワカラナイ)