第三次ダンジョンバトル:戦い(2)
#Side龍王チーム
突然入り込んできた黒い鎧は、蛇と蛙を無双して潰していた。
「うあああああ! なんなのこの黒いのぉおおおお!! 666番、一体何を召喚んだのよぉ!」
「落ち着け、650番。水の中でも動けていたようだし、リビングアーマー系だろう。数で囲んで一斉に攻撃しろ!」
「こうですか第5番様ぁ?!」
しかし、蛇もカエルも地力が違い過ぎた。黒い鎧がひとたび剣を振るえば蛇は真っ二つに分割され、カエルの舌が何本も切り離され戦闘不能にされた。
単純に踏みつけられて、その全身鎧の重量でぐちゃっと圧死される個体すらいる。
5番コアの指示に習ってカエルで全方向から攻撃させ、ようやく数発打撃が当たる。かみつきも、足に蛇ががぶりと噛みつくことはできる。
が、その黒い鎧は何でできているのか、バイトスネークの牙もビッグフロッグの舌も、これっぽっちも効いているように見えない。
「ちっ、これではまるで神の尖兵だな。モンスターが足止めしかできておらんではないか」
「第5番様ぁ、水落ち着いたしぃ、こっちもモンスター動かすかぁ?」
「よし、それじゃあ652番は進攻してる蛇を動かせ。……水の中で活動できるモンスターを用意するか。おい! シースネークは出せるか?!」
「は、はいぃ! 私が出せますっ! 出しますぅっ!」
650番コアが海中を泳ぐ蛇を召喚した。陸上では生きられない水中専門タイプの蛇だが、今の状況ならもってこいだった。何匹かはそのまま魔王チームのダンジョンに押し込ませる。……と、そういえばシースネークは海水でなければ生きれなかったような気がしたが……気のせいか、と5番コアは深く考えるのをやめた。
「651番、お前も侵攻に回れ。652番は帝王チーム、651番は魔王チームを攻めろ。650番はそのまま防衛だ。……くそう、手が足りん。なんでお前ら手下が居ないんだ」
今、このダンジョンを動かしているのはコアの3名だけだった。
3チーム戦になるこの戦いにおいて、3名というのはかなりギリギリの数だ。で、本来なら手下を召喚して使うのだが――
「「「だ、だってまさか共食いするだなんて思わなかったじゃないですかぁ!」」」
「ケチるからだ馬鹿者! もっと知性の高い、理性あるモンスターを呼ぶべきだったのだ! ああもう、おかげでDPも手も足りぬわ!」
ーーそう、折角のDPを使って召喚したそれぞれのサポート用モンスターは、それぞれ蛇、カエル、ナメクジと、それぞれのモンスターを召喚したのだ。
「たぶん少し教育すればいけるだろう」と、あまり知性の高くないそいつらは、ちょっと目を離した隙に中途半端に共食いして死骸だけが残った。
さすがのこれには5番コアも頭を抱えた。
結局、コア3名もいれば何とかなるだろう、と楽観していた結果がこれである。
「よぉし、帝王チームの最初の部屋を制圧だぁ! 奥へ進むぅ!」
「ゲコォ、こっちの魔王チームは黒い鎧が邪魔でぇ……頼むぞ652番ー」
ナメクジの652番コアが操るバイトスネークたち。スケルトンをうっかり襲いそうになったが、こちらでは敵の敵同士で味方だ。仲良く奥へ進んでいく。
「よぉしよぉし、こっちだぁ、坂を上るぞぉー!」
と、坂を上っているその時、ドバッとねっとりした水が流れてきた。避ける隙も無く、蛇と骨はまとめて巻き込まれる。骨は押し流されたが、蛇は坂に張り付いていたからか流されずに済んだものもいた。
これで魔王チームに一歩リードだ、と進もうとする……が。
「うぐぇ! な、なんだこれぇ?! うぅわ、うわぁあぁ!」
「どうした652番。ちゃんと報告しろ!」
「蛇がぁ、ぜんぜん進めなぁいぃ! ヌルぅヌルぅするぅ!」
やたらとヌルヌルするその液体に包まれた蛇は、体をぐねぐねさせつつ、後ろ向きに坂を下っていく。
徐々に勢いを増して、びたぁん! と立ち上がりかけていたスケルトンに激突した。
「こ、これはぁぁ……どうすれぇばいいんだぁ……」
地面にねっとりと絡みついているヌルヌルする液体。蛇は必然的に体にそれをからめてしまう。勢いをつけても、坂の途中で失速して登れなくなってしまう。もしナメクジならどうだっただろう、と652番コアは嘆くが、あいにく居るのは蛇だけだった。
「あぁあぁ、骨ぇがぁ邪魔だぁ! うげぇ、踏みぃつけられたぁ!」
「逆に骨を足場にしてやれ、骨に絡みつくのだ、652番!」
「は、はいぃいぃ!」
5番コアに言われてバイトスネークをスケルトンに絡みつかせるものの、それが錘となってスケルトンはずるりとズッコケ、そのまま坂の下まで滑っていった。
「だめぇだぁ、足場ぁが滑るぅっ」
「あぁン?! 滑るですって? 替わりなさい652番! 蛇は元々水の上だろうが進めるのよ、足場がしっかりしないくらいで進めないワケないでしょヘタクソッ!」
「おあ、か、替わるっ 交替だぁ! ってうぁあ?! 黒い鎧がぁぁ」
交替した652番コアが無双している黒い鎧に大慌てするが、逆に650番コアは落ち着いていた。
「よぉし、いっくわよぉっ! そもそも、床がダメなら壁を進めばいいのよっ、これだけの岩壁なら余裕ッ!」
650番コアが蛇を操り、壁を上る。ヌルヌルした床を避けて、これなら突破できると思ったその時。
ドバッと通路を埋め尽くす水が、全てを洗い流した。
(書籍作業中なう。 〆切りは守らなければならない。本編も進めたい。 こんな気分の時に使える名言や格言を誰か教えてください )