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ダンジョンバトル対策会議


 そろそろダンジョンを作ろうと思う。

 帝都も一通り見て回った感じで、色々と参考にさせてもらえた。

 場所もここだというところを決めたし、あとはダンジョンを掘るだけだ。


 というわけで、今日はダンジョンの場所を決める会議だ。尚、ロクコは遊び疲れていたのか会議が始まって数秒で寝落ちている。幸せそうな寝顔だ、フリーダムな奴め。

 ハクさんもそれを許容してタオルケットをかけてるあたり、やっぱり甘やかしすぎなんじゃないかと思う。これ、一応ロクコのダンジョンの話なんですけどねぇ?


「で、ケーマさん。どこにダンジョンを作るのかしら?」

「ええ、ここにしようかと」


 俺は地図の一点を指さした。

 ……そこは、海だった。


「…………ケーマさん、ふざけてますか?」


 ぶわっと、笑顔で殺気が飛んできた。やっべちびる。


「いえ、本気、本気ですって! フザケテマセン!」

「説明してくださいな。今回、私達上位コアはお父様から『後輩にアドバイスを』という名目で作戦の説明を聞く権利と義務を頂いています」

「は、はいっ! 今回の作戦につきまして、説明させていただきます!」


 ハクさんが俺に敬語を使うときって怒りや思惑が漏れてるよな、意図してやってるんだろうけど超怖い。


 今回、俺が考えているギミック。それは、海底ダンジョンだ。

 海底にダンジョンを作ったとする。そこは当然海、息ができない。

 攻略不能? ちょっと水にあふれてるだけで誰でも入れるダンジョンさ。

 敵ダンジョンの攻略についても『火炎窟』でやってた水攻めミジンコ作戦……さすがにミジンコでは能動的な探索が難しいので、小魚で代用すればいい。相手のダンジョンに津波を起こして、イワシでも大量召喚してやろう。

 これは海ならではの手だ。これなら俺の手の内をバラすほどではない。数で探索するのはネズミでやってるから、ハクさんも知ってるしな。

 あとはサメでもつかって敵のダミーコアを破壊できれば万々歳だ。


 ……ま、無生物系という666番コアの方には効果が無いかもしれないが、少なくとも三竦み軍団には効果があるだろう。そうすれば、666番コアに集中して対策すればいいだけだ。


「と、いうわけでダンジョンバトルの相手を666番コアだけに絞り、戦おうかと」

「なるほど。理にはかなっていますね……で、ケーマさんは海底ダンジョンとやらをどうやって作る気ですか?」

「それはですね、こう、メニューでちょいちょいっと?」

「水中で、ただでさえ深い場所での作業……50万で足りるかしら?」


 今回50万もあるので、十分いけるだろうと踏んでいたのだが、ダメだったのだろうか。


「……それに、ニンゲンが生存可能なことが『通路』や『部屋』を作る最低条件ですから、水中には部屋を作れませんよ。作れたとしても、泡のドームのように空気がある状態になったかと思います。しかも、壁の維持でDPがかかるという非効率な代物でした」


 そうだったのか。というか、この言い方だと実際やったことあるんだな。

 ……泡のドームか。竜宮城って感じになりそうだな。


「おそらくダンジョンの壁としての形を維持するのに、崩れる、修復する、が非常に高速で繰り返される形になっているのでしょう。見た目は悪くなかったのですがね。というわけで、海底にダンジョンを作る案は許可できません」

「納得しました。では別の場所にしましょう」

 さすが大先輩、経験豊富な意見だった。……ああ。こういう情報交換の交流、アドバイスとか、まっとうに『父』とやらの思惑通りなんだろうなぁ。いや、不利益じゃないしいいんだけど。


「ではこちらにします」


 俺は、今度は海辺を指さした。


「ほう、ここですか。なぜです?」

「簡単なことです。水の中で作れないっていうなら、作ってから水に沈めればいいじゃないですか」


 作った後なら水を流し込めることくらいは、知っている。

 俺がそういうと、ハクさんは頭の痛そうな顔になった。


「……だから、どこからそういう発想が出てくるのか……」

「だめでしたか?」

「いえ、可能です。確かに可能です。しかし、自分で作ったダンジョンを自分で沈めるとか、前代未聞というか……住めなくなるではないですか?」


 ん? 何を言ってるのだろうこの人は。


「なぜ住むという発想になるんですか? ダンジョンは、敵を殺す場所でしょう? ましてや今回はダンジョンバトルのためだけのダンジョンですし。そもそも家なら『欲望の洞窟』がありますし」

「……ああ、そうですね、そうでした。ケーマさんはニンゲンですものね、ダンジョンは住むものとは考えませんか。……一応、勝ったらここはロクコちゃんの別荘になるんですよ? 水没した別荘とか、嫌じゃないですか」


 ちらりとロクコを見るハクさん。しかしロクコはこの会議が始まってから一言もしゃべっていない。それどころか椅子に座ったまま寝てるからな。

 だが水没した別荘が嫌だという反対意見もでないし、今はいいか。


「ハクさん。俺の故郷のとある有名な物語には、こんな言葉があります」

「異世界の名言ですか? なんでしょう」


 俺はコホン、と喉の調子を整える。


「勝てばよかろうなのだァァァッ!!」


 異世界人にこのネタは通じるはずはないが、ニュアンスだけはバッチリ通じてくれたはずだ。

 そして寝てたロクコがビクッと起きた。「ふぇ!? な、あ、ね、寝てにゃいわよ?!」とかいってるけどヨダレ凄いことになってるからなお前。


「えーっと。……要するに、勝つことがまず第一で、格好つけたり礼儀を重んじるのはそれ以降ということです。むしろどうでも良い、まず勝つことが一番です」

「……ケーマさんの考えがよく分かるフザけた名言ですね。確かに、ダンジョンバトルでは卑怯も何も無いですからその通りですが」

「え、何、どうなったの? ケーマ、教えなさいよ」

「今説明してたのにお前が寝てたんだろうが」


 一応改めてロクコにもダンジョンを水没させる策を聞かせた。


「ふぅん、良いんじゃないかしら」

「いいってロクコちゃん。別荘が水の中ですよ? 本当にいいんですか?」

「え? ダンジョンバトルが終わったら排水すればいいだけですよね? でしょ、ケーマ」


 おう、ロクコが正論を言った。それなら単純に別荘としても使いまわせるな。

 もしかして寝ながら考えてたのか? 誰に似たのやら。


「ま、ケーマは好きにやりなさい。後片付けは私がしてあげるから」

「うん、任せたぞパートナー」

「任されたわパートナー。ふふふん」


 いつの間にか頼もしいことを言うようになったじゃないか。

 ちなみに負けたらダンジョン没収なので後片付けは無い。ある意味、俺が勝つと信じての役割分担だよな。……だよな?


「……どうやら私には柔軟な発想が欠けてしまっているようですね、はぁ……」

「私、伊達にいつもケーマにつきあってませんから! むしろ慣れです、慣れ」

「ロクコちゃんの成長を喜ぶべきか、ケーマさんの思想に染まってるのを嘆くべきか……」


 ハクさんは、そんなどうでも良いことを割と真剣に悩んでいた。


 その後、具体的な水没方法や、ダンジョンモンスターの選定など、ハクさんと会議しつつダンジョン案を練り上げた。相手が対策していた場合の対処など、細かいところで気づかされることも多く、さすがはハクさんだと改めて感心させられた。

 これなら、俺の切り札である特殊ゴーレムを使わずとも十分勝てそうだ。そう思ったが、ハクさん曰く、「相手にも5番コア、6番コアがついていますからね」と釘を刺される。そうだ、あっちもベテランがついてるチームなんだった。これは気を抜けないぞ。


 実りある会議を終え、ダンジョンの建設は明日からとなった。


 え、ロクコ? 二度寝しやがったよコイツ。

 まぁいいさ、好き勝手やって、後片付け押し付けてやるからな……覚悟しとけ!



(2巻、7月発売予定らしいですね。オーバーラップ文庫のブログで見ました。書籍化作業もがんばるぞい)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[一言] これ、あれですよね? 夢の中で考えてるって言い訳を真に受けて実現してるっていう・・ 素直すぎて怖い
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